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大変お待たせいたしまして申し訳ありませんでした。打上げ前の回答に引き続き、帰還後の若田宇宙飛行士の回答をお届けします。 2000年10月の打上げ直前から募集締め切りまで皆様からお寄せいただいた質問の中から以下の13問について若田宇宙飛行士が回答いたしましたので、ご覧ください。 Q1:1度目と2度目の飛行でなにか違いはありますか。 愛知県 女性(28歳) 他
若田:今回の飛行では共通結合装置によるモジュールの取り付けなどNASAとしても初めての作業がありましたが、前回の宇宙飛行でのロボットアームの経験等も生かし、確実な組立作業をするためにじっくり準備・訓練ができ、軌道上でもその成果を充分出すことができました。 また、前回の飛行ではスペースシャトルの軌道が赤道面に対して軌道傾斜角度が約28.5度であったのでオーロラを見ることはできませんでしたが、今回は約52度でしたので南北とも高い緯度のところを通過でき、そのおかげで美しいオーロラを見ることができました。また、今回は着陸が延期されたために、前回の飛行では見ることができなかった鮮やかな日本列島の昼間の光景も眺めることができました。 Q2:宇宙にいると、ものの考え方や見方が地上とは違った事を発想するかと思いますが、睡眠中の夢なども地上で見る夢とは違った夢を見たりするものでしょうか? 大阪府 女性(30歳) 他
若田:飛行3日目の晩に、国際宇宙ステーションのユニティモジュールの中で寝てみた時に、今まで感じたことがないようなゆったりとしたすごく広い空間に自分がふわふわ浮かんでいるという印象があったためか、無限の宇宙空間の中で自分が漂っているような夢を見ました。 Q3:宇宙酔いはしませんか?宇宙酔いを防ぐ訓練をされていると思いますが、どんな訓練をするのですか? 兵庫県 男性(52歳) 他
若田:前回と同様に、宇宙酔いはしませんでした。ただし、宇宙酔いの発生は訓練などの対策によって防ぐことはできません。そのため、症状を抑えるために、飛行前に酔い止めの薬を服用したり、また軌道上で宇宙酔いになった場合はスペースシャトルに常備されている薬を服用したりします。
兵庫県 男性(13歳)
若田:出身地である埼玉県の草加煎餅を宇宙に持っていきました。前回もお煎餅を持っていったのですが、今回は直径10数センチの大きなお煎餅を10枚ぐらい持っていきました。私だけでなく、チャオ宇宙飛行士やワイゾフ宇宙飛行士らも喜んで食べていました。塩辛い香ばしい味付けが宇宙ではとてもおいしく感じられました。ふわふわ浮いた状態で食べると、お煎餅がぱりっと割れ、細かい破片が飛び散り、みんなで口を近くに持っていって食べるというほほえましい光景も何度かありました。
東京都 男性(16歳)他
若田:ロボットアームは、操縦室の後ろの「後部飛行デッキ」から、窓越しに、あるいは、外部に取り付けられたカメラからの映像等で位置を確認しながら操作します。左手でロボットアームの位置を変える並進用の操縦桿を、右手でロボットアームの姿勢を変える回転用操縦桿を操作して、6個の関節を持ったロボットアームを動かします。 今回の飛行ではロボットアームで取り付ける部分が直視やテレビカメラの映像でもよく見えない作業もあり、コンピュータ画像処理システムを使って位置を確認しなければならない場合もありました。バーチャルリアリティを使った訓練設備やコンピュータグラフィクスによる「動き」の模擬精度が非常に高いシミュレータ、実物大のロボットアーム訓練設備、無重量を模擬した環境で船外活動訓練をすることができる巨大なプールの中の施設にあるロボットアームシミュレータなどで、様々なトラブルも想定したロボットアームの訓練を充分行うことができたので、飛行中、操作に必要なカメラが使えない状況もありましたが、無事に全ての作業を完了することができました。 Q6:食べ物はどうやって飲み込んでいるんですか?胃の中で浮かないのですか。 奈良県 男性(18歳)他
若田:私達は、地上で逆立ちをした状態でも飲食ができます。食べ物は、口、食道などの蠕動(ぜんどう)で運ばれるからです。無重量環境下では、胃の中の食べ物だけでなく、胃そのものや消化液も一緒にふわふわ浮いていますが、軌道上で食べ物が胃の中でふわふわ浮いているという感覚はありませんでした。地上でも、横たわったときに、胃の中で食べ物がごろりと動いている感覚がないのと同じです。 Q7:遊園地の落下する乗り物(後楽園のタワーハッカーとか)の浮く感じが無重量だとしたら、それが何日も続くのは耐えられない気がしますが、慣れるものですか? 東京都 女性(27歳)
若田:スペースシャトルや宇宙ステーション内での無重量は、遊園地の落下する乗り物で体験する一瞬の感覚とは全く異なります。 ふわふわ浮く感覚を地球で模擬するとしたら、遊園地の落下中の乗り物というよりも、例えば、スキューバダイビングで浮力の調整を行って、浮きも沈みもしない状態(中性浮力)にしたときの感覚に近いです。また無重量の状態では体液が上半身側にシフトして、顔がむくんだ感じにもなりますが、すぐに慣れてしまいます。 Q8:夜昼の区別のない宇宙空間での睡眠方法はどう管理してるのですか? 睡眠時間はどれくらいですか? 他のスタッフの睡眠時間帯は一緒なんですか? 山形県 男性(16歳)
若田:地球を約90分で一周するため約45分毎に昼夜がやってきますが、地上での生活と同様に決まった時間に起きて作業を行い、決まった時間に就寝します。 睡眠時間は8時間程度で、今回のフライトでは睡眠時間帯はクルー全員同じでした。ミッションによっては2シフト制をとり、半分のクルーが作業しているときにもう半分のクルーが睡眠をとることもあります。 Q9:今回帰還が2日延びましたが、その間、何をして過ごされたのですか? 滋賀県 女性(18歳)
若田:帰還に向けた準備を行っていました。2日とも数時間の自由時間がとれたので、美しい地球を飽きることなく眺めていました。起きている時間帯に日本上空を通過するときはいつも夜でしたが、スペースシャトルの軌道は1日に数度ずつ西にずれていくため、フライトの最後の2日間は就寝時間近くに昼間の日本上空を通過する機会もありました。初めてみる鮮やかな昼間の日本の光景を見ながら童謡「ふるさと」を聞いたりして、生まれ育った町を思い出しとても懐かく感じました。 Q10:地球に帰ってきて、一番最初にしたいことは何ですか 北海道 男性(23歳)
若田:ゆっくりと熱いお風呂に入りたいと思いました。スペースシャトルには、お風呂が無くてボディシャンプーがしみこんだタオルで体を拭くだけなので、お風呂が恋しく感じました。 Q11:帰路のシャトルの中で、一番多く頭に浮かんだ事は何でしたか? 兵庫県 女性(15歳)
若田:特にこれが一番多かったというものはありませんでしたが、今回のミッションのこと、家族のこと、宇宙から見た美しい地球のこと、これまで行った訓練のこと、地上で支えてくれた人々のこと、これからのことなど、いろいろなことが次々と浮かんできました。
三重県 男性(24歳)
若田:ボーイング747を改造したスペースシャトル輸送機の背中にスペースシャトルを乗せてフロリダ州のケネディ宇宙センターまで輸送します。 Q13:将来の夢は何ですか。 東京都 男性(25歳) 他
若田:近い将来、国際宇宙ステーションに長期滞在して、いろいろな実験や観測、宇宙ステーション全体のシステム運用作業などに携わっていきたいという希望を持っており、日本の宇宙飛行士として国際宇宙ステーション計画の成功に貢献できるように頑張って行きたいと思います。そして、その先いつの日か月面基地建設に参加したいという夢を持っています。 最終更新日:2000年12月 20日
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