宇宙服アセンブリ
宇宙服アセンブリは、搭乗員の胴体、四肢、頭部を包み込む人間の形をした圧力容器で構成されています。また、サイズは各パーツ毎にとりそろえられているので、その組合せによりほとんどの人のサイズに合うようになっています。
船外活動ユニット(EMU)は、この宇宙服アセンブリに、生命維持装置を装着したものの総称で、一般に宇宙服というとこの船外活動ユニット(EMU)を指します。EMUは約120kgあります。
宇宙服アセンブリは冷却下着の3層及び気密を保つ2層と宇宙環境からの保護を目的とした9層の全部で14層の生地で構成されています。
気密層(4,5層目)は、内圧による酸素の漏れと服の膨らみを防ぐためポリウレタンでコートしたナイロンによるブラッダー(気密維持層)、そして気密性を完全にするためとブラッダーの摩擦防止のため、このナイロンブラッダーの上をダクロン製のカバーレストレイント(拘束層)が被っています。
保護層(6~14層目)は断熱とある程度の耐宇宙線機能を有する多重層より構成されています。一番内側はネオプレン®ゴムでコーティングしたナイロン層であり、そのすぐ上は7層のアルミ蒸着マイラー®から構成されます。
最外層は断熱効果と微小隕石対策のためゴアテックス®とノーメックス®の混紡、その裏地はケブラー®から構成されています。
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宇宙服を構成する14層 |
宇宙服を構成する外被材の基本構成 |
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上部胴体(Hard Upper Torso: HUT)/腕部
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腕部 |
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(c) Hamilton Standard |
宇宙服アセンブリの上半身にあたる上部胴体は、グラスファイバー製で、この上から全体を保護服で覆うことにより厳しい外部環境に耐えることができるようになっています。
この胴の部分に両腕、背中に主生命維持システム(PLSS)、胸の部分に表示制御モジュール(DCM)を取り付け、着用時にヘルメット、下部胴体(LTA)、グローブ、ミニワークステーションなどを取り付けて使用します。
下部胴体(Lower Torso Assembly: LTA)
宇宙服アセンブリの下半分で、腰部、大腿部、膝部、ブーツなどから構成されます。
この下部胴体の最上部の腰部リングが、宇宙服を装着するときの接合部となります。
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(c) Hamilton Standard |
ヘルメット
ヘルメットは一番内側に与圧を維持するための耐圧性の透明なプラスチック(ポリカーボネード)製の容器があり、その上に後頭部のカバーや太陽からの強烈な日差しを緩和するために金でコーティングしたバイザーや可動式の3枚(正面,両脇)の日除けが装備されています。照明用ライトやTVカメラは,このヘルメットの上に取り付けられます。
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ヘルメットの外観 |
グローブ
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グローブの外観 |
(c) Hamilton Standard |
グローブは、手を保護するとともに指先を動かして、ある程度の細かい作業ができるように作られています。 指先は力を感じやすいようにシリコンゴムでできています。
1997年2月のスペースシャトルミッションSTS-82から使用されるようになった新しい宇宙服は、ISS用に改良されたものであり、構造物から離れた場所の低温環境にも耐えられるように指先にヒーターが入っています。
通信用ヘッドセット(Comm Cap)
マイクロフォン、イヤフォン、電子回路などを組み込んだ柔らかい布製の帽子で頭にかぶって使用します。
マイクロホンとイヤフォンは、2個ずつあり、同時に故障しないよう別系統となっています。この帽子はNASAでは、スヌーピーキャップと通称されています。
冷却下着
冷却下着は素肌に着用するスパンデックス製のメッシュ状のワンピース・スーツで、次のものから構成されます。
細いパイプの中を流れる冷却水で余分な体温を取り去るとともに、宇宙服の末端から換気ガスを生命維持装置に還流させるパイプを支えています。 また、心電計信号調整器や放射線被曝量を管理するための線量計を収めるポケットが取り付けられています。
集尿具
船外活動中はトイレに行けないため、使い捨ての大人用紙おむつ(Maximum Absorption Garment: MAG)を冷却下着の下に着用します。
飲料水バッグ(Drink Bag)
21液料オンス(約621cc)の飲料水を入れるバッグであり、宇宙服胴体内側のヘルメットのネックリングのすぐ下側に取り付けます。
心電計キット(Biomed kit)
EVA中のクルーの心電図データを地上でモニターするために、クルーにとりつける電極、コード、信号調整器その他の小物から構成されています。
EMUライト/EMU TVカメラ
EMUライトはヘルメットにとりつけて使用し、内蔵バッテリで4灯のランプを点灯できます。照射角度の調整が可能であり、バッテリは軌道上で交換可能です。
EMU TVカメラはヘルメットに取り付けて使用するTVカメラで、関係者は船外活動実施者の視野と同じような映像を見ることができます。
映像は無線でスペースシャトルやスペースシャトルもしくはISS経由で地上に送られます。初期段階のスペースシャトルミッションの船外活動で試行的に使用された後、使われなくなっていましたがISS組み立て開始後に改良されたタイプが再び使われるようになりました。
トラブル発生時には、船内のクルーや地上の専門家がこのカメラからの映像を見ることにより、状況を素早く把握することができます。
また、船外活動クルーが見ているのと同じ映像を見ながら直接作業指示が出せるため、予定外の作業の追加や作業状況の確認が行えるなど、運用性は大きく改善されました。
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EMUライトとTVカメラ |
最終更新日:2013年11月20日
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