ボルネオ(カリマンタン)島は、ブルネイ王国、インドネシア共和国、マレーシアの3つの国家がそれぞれに領有部を持つ世界で3番目に大きな島だ。その面積は日本の国土のほぼ2倍もある。
2年ほど前の話になってしまうが、マレーシア領のコタキナバルで「第2回マレーシア微小重力科学ワークショップ」が開催され、この熱帯の島を訪問する機会を得た。
写真1 コタキナバルの場所 |
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写真2 シュコア宇宙飛行士と線量計PADLES |
マレーシア政府はマレーシア人宇宙飛行士を育成し国際宇宙ステーション(ISS)へ派遣するAngkasawanプログラムを実施し、2007年の10月にシェイク・ムザ・シュコア氏がロシアとの協力によりISSに搭乗して10日間の宇宙飛行を実施した。このとき日本は宇宙飛行士用個人線量計“Crew PADLES”を提供して飛行中の被曝量計測を行うなど協力を行った。このような縁があり、ロシア及び日本のそれぞれから微小重力を利用した科学についての講演招待を受けたのである。
写真3 ワークショップ会場 |
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写真4 ワークショップの開催されたホール |
ワークショップはサバ州コタキナバルのマレーシア国立サバ大学(UMS)で開催され、研究者・同大学学生を中心に150名ほどの参加者があり、Angkasawanプログラムでバックアップクルーを務めた、ファイズ・カリード氏も参加した。マレーシアの研究者からは、ISSで実施した微生物培養、タンパク結晶、骨芽細胞などの解析結果が報告されたが、華やかな色合いのヒジャブをまとった若手の女性研究者も多く、発展中の国の熱気を感じるワークショップであった。Angkasa(アンガサ)とはマレー語で宇宙を意味し、そのままマレーシアの宇宙機関(ANGKASA)の名前にもなっている。
写真5 高品質蛋白質結晶成長装置 |
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写真6 ファイズ飛行士と筆者 |
JAXAとANGKASAは蛋白質結晶実験の協定を結んでおり、マレーシア研究者の実験試料の結晶化実験をISSで行っている。これまでに5回の実験が行われた。(2012年9月現在)無重力下で高品質の結晶化を行い蛋白質構造解析に役立てるこの実験は、無重力利用の中でも期待が高い分野のひとつである。
写真7 コタキナバル市街中心を丘の上から |
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写真8 ホテルからUMS(丘陵斜面)を望む |
コタキナバルのコタというのは城塞という意味で転じて町という意味もあるとのこと。コタキナバルで「火の都」という意味合いになるそうだ。市街地はビーチに隣接するリゾート地域であり、東部マレーシアを中心とし、近隣の観光地へのアクセスの中心となっているため、早朝、深夜まで飛行機の発着枠がある。町がコンパクトな割に車両数が多く、通勤時間帯は幹線道路は常に渋滞している。郊外は住居(アパート)や道路、施設等の新規建設が広範囲に行われている。市内の移動は基本的に自動車を前提とした町の設計で、バス、タクシーもあるが、徒歩での通行者は全く見かけない。なお、隣接する丘陵地区ではヒルクライムを楽しむサイクリストも見かけられた。
住民はマレー系のほか、華人も多く、多文化、多言語環境である。道路標識はマレー語および一部英語の併記、会話はマレー語、中国語(マンダリン系)英語、看板表記などは英語及び中国語が中心だが、ビジターは英語のみでも不自由はない。
写真9 濁り酒がウェルカムドリンクのカフェ |
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写真10 伝統の吹き矢に挑戦 |
有名なオランウータンは、自動車で奥地まで移動しないと見られないとのことだったが、「モンソピアド文化村」と言う、300年前の生活を再現した施設が、市街地から近くにある。ここでは舞踊ショーなどが楽しめる。吹き矢に挑戦させてくれたが、ビギナーズラックか、風船の的をうまく射抜くことができた。
写真11 ワンボルネオモール中心部 |
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写真12 ウルトラマンは世界のヒーロー |
滞在中は大学近くのホテルに宿泊したが、ワンボルネオと言う出来たばかりのモールと併設されており、便利である。部屋の大きさが日本の普通のシティホテルと変わらない(狭い)のが意外だった。TV放送は英語(BBCなど)、中国(上海系の放送)のほか韓国KBS、日本NHKが視聴できマレー語の字幕が出る。この言語の順で観光客が来るとのことである。
片言の日本語が話せる人もいるが、町では日本人には全く出会わなかった。運転手さんの話では、日本からの客は9割方スキューバダイビングが目的なので、ここ、コタキナバルに観光目的で滞在する日本人は少ないのだとのこと。
さまざまな言語、文化、民族が共存するマレーシア、ボルネオで、同じように多国籍で成り立っている国際宇宙ステーションをめぐる話が出来たのは貴重な機会であった。
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