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コラム ―宇宙開発の現場から―

コラム―宇宙開発の現場から―
サチコの実験日記 Vol.6 振動試験の話
皆さんこんにちは。私はJAXAで「きぼう」日本実験棟を使った生命科学実験の担当をしている矢野幸子です。前回は細胞培養装置の人工重力発生装置についてお話ししました。今回は振動試験についてご紹介したいと思います。
宇宙に行くと生き物はどうなるか。私は、宇宙で生き物の様子を研究するための準備をしています。生き物といっても、細胞から植物、小型の動物まで研究対象は様々です。宇宙に生き物を連れていくためには、生き物をロケットに載せて運ばなければなりません。宇宙に物を運ぶためにいったいどのような工夫がされているのでしょうか。

■ 宇宙へのお引越しで荷物が壊れないように

宇宙へのロケットがどのように空に昇っていくか、知っていますか?
地球上にある物体には重力という力が働いています。正確には質量のある物体には重力という力が働いています。
その重力を振り切って、空へ飛んでいくために燃料をたくさん燃焼させ、それをものすごいスピードで噴出する反力を使って上へ上へと昇していきます。反力とは、風船が空気を噴出しながら飛んでいくのと同じ原理です。
アメリカのスペースシャトルや日本のH2ロケットでは液体水素と液体酸素を使っています。液体水素と液体酸素を混ぜて点火すると爆発するので大きな推進力、つまり上へ進む力、が得られます。また、固体燃料も使います。
ロケット打上げ時は燃焼ガスを高速で大量に噴射します。燃焼ガスが空気を切り裂くことにより大きな音が発生します。音とは空気の疎密波=圧力変動(密の部分は高圧、疎の部分は低圧)です。ロケットの外面パネルは音=空気の圧力変動を受け振動します。これがランダム振動の正体です。その振動はロケット内部にも伝達します。
簡単に言うと、ロケットで宇宙へ荷物を運ぶときには荷物にもぶるぶると震えるような力がかかります。宇宙に到達し、エンジンが切り離されれば重力からも振動からも解放されてそこは無重力の世界。でも宇宙に行くまでの間に大きな振動にさらされてしまうということです。
その振動によって実験に使う機械が壊れてしまっては、宇宙での実験ができません。ですから、宇宙実験のための装置も打ち上げの振動に耐えるような設計になっていなければなりません。そのために、宇宙に行くときの振動を模擬して実際に振動させてみて、壊れないかを確認しておくのです。これを振動試験といいます。
振動試験には、ぶるぶると上下に揺れる振動試験機を使います。そこに宇宙に持っていく装置や容器の中に入った生物試料を取りつけて、振動をかけます。その振動は、傍から見ていても「大丈夫かな」というくらい激しいものです。宇宙での実験を成功させるためには、宇宙に持っていく前から、その方法を模擬して、壊れないかどうかの確認のための試験が必要になるのです。振動試験はそのような試験の一つです。壊れそうなものはクッションに包んで、振動が直接機械に伝わらないように大事に持っていくことにします。よく食器や電化製品を運搬するときに使うエアークッション、エアーキャップ、バブルラップ(“プチプチ”という名前で売られているものもあります)ともいいますが、あのような梱包材つきの袋を、宇宙の世界でもよく使います。スポンジのような梱包材で包むこともあります。宇宙に行く器材なのに、意外と普通に身の回りにあるものを使って包んでいると思いませんか?無事に装置を宇宙に届けるために、梱包材の包み方つまり梱包設計がとても大切です。
この振動で生き物の状態が変わってしまわないかを確認しておくことも仕事の一つです。中には影響されるものもありますので、打ち上げ前の確認と対策が必要です。サンプルに合わせて、対策を考えるのも私の仕事です。大切に梱包されたサンプルが、宇宙科学の発展に役立つのです。 宇宙への実験装置の旅立ちは、宇宙への引っ越しみたいなものかもしれません。

(2011/10/25)
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