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コラム ―宇宙開発の現場から―

コラム―宇宙開発の現場から―
【紀さんの宇宙あれこれ】 Vol.12 スペースシップ2-民間有人宇宙弾道飛行間近!-(その1)
 前回、米国で開発中のサブオービタル(弾道)飛行のスペースシップ2(SpaceShip Two:SS2)についてお話すると予定していましたが、偶然にも去る4月15日にNHKのサイエンスZERO「誰もが行ける!夢の宇宙旅行計画」で紹介されていました。ご覧になった方もいるかもしれませんが、ここでは別な切り口でご紹介します。
 当然ながらSS2は唐突に開発されたのではなく、それなりの歴史があります。SS2をきちんと評価するために今回はその流れを振り返り、SS2そのものは次回にしたいと思います。
格納庫から出たSS2と母機ホワイトナイト2(提供:ヴァージン・ギャラクティック)
格納庫から出たSS2と母機ホワイトナイト2
(提供:ヴァージン・ギャラクティック)
 先ずSS2を語るには次の2人の人物を抜きにできないと思います。それはバート・ルターンとリチャード・ブランソンです。この二人の出会いがなければサブオービタル飛行はこのように進んでこなかったでしょう。また二人の結びつきを強めSS2の開発に進んだきっかけになったXプライズ財団のアンサリXプライズについても触れたいと思います。

SS2の模型を持つルターンとブランソン(提供:ヴァージン・ギャラクティック)
SS2の模型を持つルターンとブランソン(提供:ヴァージン・ギャラクティック)
 バート・ルターンは1943年生まれ、米国カリフォルニア育ち。若い頃は兄と模型飛行機作りに熱中し、小型軽飛行機のキットの販売を始めて、これが発展してスケールド・コンポジッツ社の前身の航空機製作会社をカリフォルニア州のモハーべ空港敷地内(スペースシャトルの緊急着陸地になるエドワーズ空軍基地の近く、10数社のベンチャー企業が、宇宙開発でしのぎを削っている。)に創設しました。弟のバート・ルターンが設計・開発を行い、兄は試作機のパイロットとして役割分担を兄弟でしています。
バート・ルターン(提供:スケールド・コンポジッツ)
バート・ルターン
(提供:スケールド・コンポジッツ)
 スケールド・コンポジッツ社は名前の通りコンポジット(複合材料)を使った多くユニークなデザインの航空機の設計、開発を行なっています。ルターンが設計した初の無着陸・無給油で1986年世界一周を9日と3分で達成したプロペラ機の航空機「 ボイジャー」や、2005年67時間1分で単独、無着陸での世界一周飛行と2006年歴史上最も長い飛行距離(41,467 km)を達成した単発ジェット機モデル「311 ヴァージン・アトランティック グローバルフライヤー」 等多くの斬新な航空機の設計を行なっています。
前述の二つの世界一周した機体を見ているとその延長上にSS1やSS2の形が浮かんでくるような気がしませんか。前回お話したストラトロンチの超ジャンボ級の機体もバート・ルターンの設計でスケールド・コンポジッツ社の開発です。

飛行中ボイジャー、2つの垂直尾翼のついた双ブームを持ち、プロペラとエンジンを主胴体の前後に配置した特徴的な機体。全長:9.9m 全幅:33.8m(提供:スケールド・コンポジッツ)
飛行中ボイジャー、2つの垂直尾翼のついた双ブームを持ち、プロペラとエンジンを主胴体の前後に配置した特徴的な機体。全長:9.9m 全幅:33.8m
(提供:スケールド・コンポジッツ)
飛行準備中の単発ジェット機モデル311 ヴァージン・アトランティック グローバルフライヤー、全長: 13.44m、全幅: 34.75m(提供:ヴァージン・アトランティック航空)
飛行準備中の単発ジェット機モデル311 ヴァージン・アトランティック グローバルフライヤー、全長: 13.44m、全幅: 34.75m
(提供:ヴァージン・アトランティック航空)
飛行中のSS1とホワイトナイト1(提供:スケールド・コンポジッツ)
飛行中のSS1とホワイトナイト1
(提供:スケールド・コンポジッツ)
離後の自立飛行のSS1、ハイブリッドロケットエンジンのノズルが黒く見える(提供:スケールド・コンポジッツ)
離後の自立飛行のSS1、ハイブリッドロケットエンジンのノズルが黒く見える
(提供:スケールド・コンポジッツ)
 一方、リチャード・ブランソンは1950年英国ロンドン近郊サリー生まれ、小さい頃から空を飛ぶのにあこがれていました。自書によると「機械に弱く、勉強は苦手で右と左を間違えることも珍しくなかった。しかしモノ作りは好きで、いろんな道具がどんな仕組みでどのように動くか、興味があり、別な仕組みはないか考えるのが好きだった。(その結果)飛行の新技術や新材料、常識を覆すアイデアには常に目を配っていた」とあります。
リチャード・ブランソン(提供:ヴァージン・ギャラクティック)
リチャード・ブランソン
(提供:ヴァージン・ギャラクティック)
 バージングループの創設者であるブランソンは、実業家としては、ジャーナリストを皮切りに出版、レコード販売で財を成し、1984年に「ヴァージンアトランティック航空」を設立、2004年には「ヴァージン・ギャラクティック」を立ち上げました。SS1のサブオービタル飛行によりアンサリXプライズに勝ち賞金1000万ドルを獲得したスケールド・コンポジッツ社から技術提供を受け、ヴァージン・スペースシップ(VSS)エンタープライズ(スペースシップ2の1号機)を開発しており、アメリカのニューメキシコ州に「スペースポート・アメリカ」、スウェーデンの北部に「スペースポート・スウェーデン」を建設しています。
 また、ブランソンは飛びたいとの興味の一環から熱気球にも関心があり、1987年熱気球による初の大西洋横断を九死に一生を得るような状況に遭遇しながら成功しました。1991年には日本の都城からスタートしカナダまで、今回も命を危険にさらしながら初の太平洋横断に成功しています。異色の経営者の一面がうかがえます。

 さて、Xプライズ財団は、ピーター・ディアマンディス会長(MITの大学院の時、国際宇宙大学(ISU)を学生仲間と始めました)によって設立され、1996年Xプライズコンペティション(Xプライズ)を発表しました。その動機は、1927年チャールズ・リンドバーグが大西洋横断に成功したのは、ニューヨークからパリまで無着陸横断飛行を達成した飛行士に25,000ドルを与えるというオルティーグ賞があったことにヒントを得たことでした。
 その時点では賞金の用意はなかったとのことでしたが、彼は真剣な努力を続け、新しいものを作り出していけば、みんなが競って参加し世間の注目が集まれば資金提供者が現れると確信していたそうです。現実に2004年5月イラン系アメリカ人の資産家のアンサリ家からXプライズ基金に資金提供の申し出があり、それ以降その名を冠してアンサリ・Xプライズとなったわけです。
 特にアニューシャ・アンサリ夫人は、自らソユーズ宇宙船で初の女性宇宙旅行者にもなったほど宇宙好きです。

宇宙服のアニューシャ・アンサリ (提供ロイター/Sergei Remezov)
宇宙服のアニューシャ・アンサリ
(提供ロイター/Sergei Remezov)
飛行が成功して喜ぶSS1上のパイロット(提供スケールド・コンポジッツ)
飛行が成功して喜ぶSS1上のパイロット
(提供スケールド・コンポジッツ)
 アンサリ・Xプライズは、2週間以内に同じ機体で3人(2人はダミーウエイトでも可)を載せて2回、100km以上の宇宙へ行って戻ってくるという条件でした。そして2004年10月4日にカリフォルニア州モハーベ空港上空でペースシップワンが2回目の飛行を達成し賞金を獲得しました。
 Xプライズ財団はグーグルがスポンサーになって、民間による最初の月面無人探査を競う「グーグル・ルナー・Xプライズ」や他にもコンテストを積極的にやっています。

 最後に打上げのお知らせです。以前N0.7で紹介したファルコン9の3号機でドラゴン宇宙船が5月22日に打上げられISS(国際宇宙ステーション)へ初の民間開発の宇宙船としてドッキングを目指します。
 注目していて下さい。
 次回はこのSS2本体についてお話したいと思います。(続く)
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