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第4回ライフサイエンス国際公募選定 フライト実験候補テーマ
代表研究者:ピァーソン・ジェームズ・トード(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
研究目的
鳥類卵は、卵殻孔を介した受動拡散により摂取する酸素以外は、成長に必要なものをすべて具備している。絨毛尿膜(CAM)は胚成長早期には卵殻内面を覆い、ガス交換の場を提供する。有効な酸素供給がCAMと胚の成長を促進させるが、他方、転卵もこれらの成長には不可欠な因子であり、その機序として、重力がCAMの血流分布に影響を与え血管新生を促進することが考えられる.しかし、この問題を重力のある地上実験のみで解明することは困難である。本研究の目的は、重力と転卵の相互作用がCAMの新生血管の形成と成長を刺激する重要な因子と考え(図参照)、CAMの発達が最も活発になる10日齢の鶏卵を用い、CAM辺縁への血流集積がシェアストレスを増し血管新生を促進させるか否かを検証することである。
研究方法・内容
有性鶏卵(0日齢)を@無処置群、A卵殻の一部に蝋を塗布した酸素摂取障害群、B卵殻の一部を削り、孔を作成した酸素摂取亢進群に分け、10日間恒温槽内に留置する.この際、各群において、i)卵を1Gで規則的に転卵させたもの(実験1)、及びii)無転卵のまま、1Gまたはスペースシャトルの微小重力下でインキュベートしたもの(実験2)を作成する。鶏卵回収後、CAMにおける血流・酸素飽和度の画像解析や血管の形態像、成長因子受容体の免疫組織学的分布などの組織学的検索を行う。
期待される成果
以上の実験により、鶏卵CAMの成長過程で血管新生がどのような局所機構で進み、それが胚形成にどのように関わるかが明らかにされるであろう。もし、血管内シェアーストレスの増大が血管成長因子の生成を促進させるとするならば、1G下で転卵した絨毛尿膜では、微小重力下と比較し、血管成長因子の受容体密度が高くなることが予想される。