スペースシャトルでのラット実験サンプルシェア研究テーマ選定結果 |
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ラット臓器における宇宙環境曝露後のp53調節遺伝子群の遺伝子発現
提案者:大西 武雄
所属機関:奈良県立医科大学 生物学教室
研究目的
癌関連遺伝子産物p53はDNA損傷を受けた細胞の遺伝的安定性を司ると考えられており、宇宙空間においてp53が調節する遺伝子群の遺伝子発現を網羅的に解析することを目的とします。
研究方法・内容
これまで我々は宇宙飛行したラットの筋肉や皮膚に癌抑制遺伝子p53の遺伝子産物が蓄積していることを見い出しています。ヒトが長期間滞在する宇宙ステーションには、地上では経験のない微小重力環境や人体に大きな影響を与える高エネルギー粒子線が低線量ながら届き、遺伝的安定性に及ぼす影響が懸念されています。そこで、我々はp53が調節する遺伝子群の発現解析を提案しました。最近我々は、様々な環境因子がWAF1やBax遺伝子などを含むp53を中心としたシグナルトランスダクション経路を誘導することを見いだしています。もし、WAF1が宇宙環境で誘導されれば、細胞増殖が停止し、その間にDNA損傷を修復することができます。また、Baxが誘導されれば損傷をもった細胞にapoptosisという死を引き起こすことであろうと思われます。このように、p53が調節する遺伝子群の発現は遺伝的安定性に重要なはたらきを担います。そこで、免疫組織染色、cDNAマイクロアレイ法などにより、宇宙空間における遺伝子発現を網羅的に解析することによって、人類は宇宙環境にどこまで適応できるかを予測したいと考えています。
期待される成果
宇宙実験におけるp53を中心としたシグナルトランスダクション経路の有効な知見を提供すると考えられます。
最終更新日:2002年 2月 14日
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