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トピックス

「宇宙環境でのタンパク質結晶生成」に関するミニシンポジウム

最終更新日:2007年4月17日
写真:より大きな写真へ

宇宙環境を利用したタンパク質結晶生成実験に関わるこれまでの取組みと成果を紹介し、今後の宇宙実験の方向性に関する研究者の方々の意見等の集約を目的として、「第7回日本蛋白質科学会年会」の1セッションを利用し、ミニシンポジウムを開催いたします。

このシンポジウムで寄せられた意見は、「きぼう」日本実験棟における宇宙実験計画に役立てることとしています。

日時 平成19年5月26日(土)
11時35分~13時25分 
会場 仙台国際センター 2F 萩(B会場、350席)

住所:宮城県県仙台市青葉区青葉山無番地

電話:022-265-2211(代)
開催 「第7回日本蛋白質科学会年会」の1セッション
参加費 シンポジウムへの参加は無料。ただし、学会への参加登録として7,000円が必要です。詳細は「第7回日本蛋白質科学会年会」ホームページをご覧ください。
内容 講演要旨

プログラム

司会・座長 (独)宇宙航空研究開発機構 主幹開発員 小林智之
11:35~11:40 「国際宇宙ステーションでのタンパク質結晶生成実験の現状と今後」

(独)宇宙航空研究開発機構 主任開発員 佐藤勝
11:40~12:00 高品質結晶を利用したサブオングストロームレベルのタンパク質構造・機能解析とその応用」

大阪大学 教授 中川敦史
12:00~12:30 「微小重力下でのタンパク質結晶化実験」

(財)大阪バイオサイエンス研究所 研究部長 裏出良博
12:30~13:00 「創薬に貢献するタンパク質構造機能解析の現況と展望:宇宙実験への期待」

持田製薬(株) 主事 西島和三
13:00~13:25 「宇宙実験はタンパク質構造解析にどのように役立つか」

(有)コンフォーカルサイエンス 取締役 田仲広明

講演要旨

「国際宇宙ステーションでのタンパク質結晶生成実験の現状と今後」
(独)宇宙航空研究開発機構 主任開発員 佐藤勝

良質なタンパク質結晶を得る手段として、対流や沈降のない宇宙の微小重力環境を利用した結晶生成が知られており、1983年のLittkeらによる実験以降、欧米を中心に精力的に行われてきた。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、2002年から2006年にかけて国際宇宙ステーショ(ISS)での6回の宇宙実験により、「高品質タンパク質結晶生成プロジェクト」を実施してきた。このプロジェクトは、宇宙環境を利用したタンパク質結晶生成技術の開発や定期的な宇宙実験を効率的に実施するためのプロセス・実施体制を整備し、微小重力環境の効果を検証すること目的に、国のタンパク3000プロジェクト(理化学研究所、大学拠点)や農業生物資源研究所、蛋白質構造解析コンソーシアムとの連携により、宇宙実験を行ってきた。

この結果、宇宙実験の実施に向けて開発した、タンパク質試料の評価技術、結晶化条件のシミュレーション技術や微小重力効果を得るための結晶化条件の設定手法を適用し、宇宙実験で得られる結晶の約60%で回折データの質が向上することを確認できた。また、アルファアミラーゼやリゾチームでは、宇宙実験により1Å以下の最高レベルの回折データを取得し、精密な立体構造の解析に成功している。

JAXAでは、2008年からの「きぼう」の本格的な利用に向け、タンパク質結晶生成のための宇宙実験を継続して進めると共に、インパクトのある成果の創出に向けた連携を図って行く予定である。

「高品質結晶を利用したサブオングストロームレベルのタンパク質構造・機能解析とその応用」

大阪大学 教授 中川敦史

近年の分子生物学の進歩は著しく、細菌からヒトまで様々な種のゲノム情報が次々と明らかになってきている。一方、生命現象の大部分は遺伝子の転写産物であるタンパク質が担っているが、タンパク質はそれ自身が決まった立体構造を取ることによって始めて機能するため、立体構造の解明の重要性がますます高まってきている。このため、従来からの構造生物学研究に加えて、タンパク3000プロジェクトなどタンパク質の立体構造を網羅的に解析する構造ゲノム/プロテオミクス研究も世界中で進められており、PDBへの登録数も毎年指数関数的に増えている。

しかし、多くの構造生物学的研究において、高分解能のデータを用いた原子レベルでの構造に基づいて原子間相互作用を十分に解析・議論した例はあまり多くない。これは、高分解能の回折強度データを与える結晶を得ることが容易ではないためである。しかし、タンパク質が生体内で働く時には、水和水や水素原子などが重要な役割を果たしており、それらの構造も含めて、詳細な原子間相互作用を理解するためには、X線構造解析による座標データに関して言えば、サブオングストロームレベルの精度が必要である。

我々は、JAXAのISS応用利用研究拠点推進制度の研究拠点の1つとして、大学・民間・JAXAとの共同で、高分解能の構造解析法の開発と、高分解能の構造に基づいた新しい構造生物学の展開を視野に、研究を進めている。

「微小重力下でのタンパク質結晶化実験」

(財)大阪バイオサイエンス研究所 研究部長 裏出良博

我々は、アレルギーや組織炎症に関係する造血器型プロスタグランジン(PG)D合成酵素、睡眠調節に関与するリポカリン型PGD合成酵素、アフリカ睡眠病を起こす寄生性原虫Trypanosoma bruceiの持つPGF合成酵素、リーシュマニア症を起こす寄生性原虫Leishmania majorのPGF合成酵素などの酵素と、それらの阻害剤との複合体の結晶構造座標を高分解能で決定することを目指して、ロシアのプログレスロケットによる輸送手段とISSを用いた結晶化実験を継続してきた。これらの実験を通して得られたノウハウは、我が国の将来の宇宙実験に大きく貢献する。

地球の周回軌道上のISSに設置される「きぼう」は、タンパク質の結晶化に及ぼす重力の影響を検証できる期待の施設である。長期間の無重力を補償できる実験装置はISS以外に無い。大型放射光施設を用いた高分解能のX線結晶構造解析との併用により、微小重力環境がタンパク質の結晶化に及ぼす効果を科学的に検証できる。

現在までに得られた結晶化実験の結果を紹介し、将来の宇宙実験への期待を述べる。

「創薬に貢献するタンパク質構造機能解析の現況と展望:宇宙実験への期待」

持田製薬(株) 主事 西島和三

蛋白質構造解析コンソーシアム(蛋白コンソ:日本製薬工業協会加盟20社)では、新体制の第二期(2007年4月~)としてSPring-8の創薬産業ビームラインを利用してタンパク質の構造を解析しつつある。第一期 (2001年~2006年)の特徴は、共同利用施設として各社が創薬産業ビームラインを有効活用した実績と共に蛋白コンソとして多くの産学官連携を実施したことである。連携の結果として、タンパク3000プロジェクトおよび宇宙環境利用プログラム等の進展に伴う研究成果、特に基盤技術を蛋白コンソ加盟企業が体験できたことは大変有益であった。例えば、高品質な結晶生成を目指したISSの利用は、単独企業では成し得なかった実績であり、その後の産官連携、個別共同研究への道筋にもなったことは事実である。さらに、第二期ではSPring-8施設側との連携を強化して、ビームラインの効率運用と有効活用を実施している。

一方、2007年度以降の文部科学省ターゲットタンパク質研究プログラムでは、重要であるが解析困難なタンパク質群の構造・機能解析が優先課題となっている。そこで蓄積された疾患関連タンパク質群に関する情報は将来の新薬創製に有用であろう。また、超分子複合体X線結晶構造解析、マイクロビーム、微小結晶ハンドリング等の放射光X線複合技術の解析基盤技術開発が計画されている。微小でも高品質な結晶が要求されることは確実である。製薬産業界としては構造機能解析に関わる大型先端研究施設等がより高度に整備されつつ、さらに自由に利用可能な環境へと推移することを願っている。これまでの産業界との連携経験を活かしつつ、ISSがその一役を担うことを期待している。

「宇宙実験はタンパク質構造解析にどのように役立つか」

(有)コンフォーカルサイエンス 取締役 田仲広明

近年、超高分解能(≦0.8Å)回折データから得られるタンパク質の構造解析が進展し、それまでわからなかったタンパク質分子とリガンドの詳細な原子間相互作用等を明らかにすることができることがわかって来た※1。しかし現在のところ、分子量が比較的小さいタンパク質分子が、たまたま対称性の低い晶系の結晶を生成したときに、超高分解能回折データが得られている場合が多い※2。JAXAが2002年から2006年にかけて実施した高品質タンパク質結晶生成プロジェクトでは、 ISS内で高品質結晶を生成する試みがなされてきた。

その結果、地上ですでに1Å程度の高分解能結晶が得られており、さらに宇宙実験向けに結晶化条件を最適化できた試料であれば、偶然をあてにしなくとも、超高分解能結晶の生成を期待できることがわかってきた。今後この分野において宇宙実験のタンパク質構造解析への貢献が期待される。

※1: T. Petrova and A. Podjarny, Rep. Prog. Phys. (2004). 67, 1565-1605.

※2: J. Hakanpaa et al., Acta Cryst. (2006). D62, 356-367.

 
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