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シンポジウム・ワークショップ

国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」利用成果シンポジウム

アポトーシスの"司令塔"、ミトコンドリアは宇宙でどう働くか?

最終更新日:2011年9月28日

馬嶋 秀行(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 教授)


 我々は、地球上でも宇宙線を浴びています。しかし、空気層(大気)があるおかげで100分の1に減らされています。つまり、空気層を抜けて400km上空にある国際宇宙ステーション(ISS)では、地上の100倍以上の宇宙線があたることになるのです。宇宙線は、重粒子線、陽子線(約90%)、電子線などで構成されています。エネルギーが高いのでISSの壁も突き抜けてしまいます。さらに、突き抜けたあと原子が分解(フラグメンテーション)されます。その結果、中性子が放出され、中性子線にも被曝することになるのです。

 人間の身体は、60兆ある細胞によってできています。その細胞のそれぞれにミトコンドリアがあります。細胞の中で、エネルギーを作ることがミトコンドリアの役目です。しかし、それだけでなく、最近の研究で、ミトコンドリアが細胞の死を決定することがわかってきました。私の13年前の研究ですが、ミトコンドリアから活性酸素が産生され、それが、細胞の死と関係があることをつきとめ世界で初めて発表を行ないました。地球の歴史は、約46億年あります。約10億年してから生命体が出現してきました。さらに、その遥かあと、今から約10億年前にミトコンドリアが確立されたということになっています。ミトコンドリアは比較的新しい細胞内構造体です。ミトコンドリアの中にもDNAがあります。これは、他の生命体が入り込んだのではないか、という証拠にもなっています。ミトコンドリアは、細胞核を取り巻いて分布しています。そこで、ATP(アデノシン三リン酸/生体のエネルギー)ができると同時に、活性酸素も出てきます。この活性酸素が、老化、発癌、神経障害、糖尿病、不妊、リウマチなど、いままでわからなかった病気原因と関係があることがわかりつつあります。

 細胞は外部からの要因により破壊されるばかりではなく修復する能力も備えています。修復できない場合は死んでしまうか、癌の遺伝子に関わるものだと癌化することもあります。細胞の中で発生する活性酸素は、そのほとんどがミトコンドリアから出てくることが分かりました。また、ミトコンドリアの部分に脂質の過酸化が起こります。さらに、放射線照射を行うとミトコンドリアから活性酸素がより多く出てくることも突き止めました。

 我々の実験では、ヒト神経細胞に目標を定めました。ヒト神経細胞を実際に宇宙に打ち上げまして、ISSで14日間、および28日間、宇宙空間で培養させて、地上に戻し研究を重ねています。我々の宇宙実験の結果から、ミトコンドリア活性酸素を消去する酵素(MnSOD)の活性が大きくなっていること、細胞の増殖速度が早くなること、活性酸素がたくさん出てくること、などが分かりました。つまり、宇宙空間では、酸化ストレスが大きく負荷され、細胞が活性化されることが世界で初めて明らかになったのです。

 現在、ミトコンドリア関連遺伝子、酸化ストレス関連遺伝子、アポトーシス関連遺伝子の発現変化を解析中です。これらから、宇宙ではどのような遺伝子が関連して、自らの細胞を酸化ストレスに大きく負荷することが明らかになるでしょう。こうして、宇宙で細胞はいかにして生存するかが明らかになる予定です。

講演一覧

研究発表講演
  1. "がん化を防ぐ遺伝子「p53」の宇宙での働きを探る"
    大西 武雄(奈良県立医科大学 医学部 特任教授)
  2. "アポトーシスの"司令塔"、ミトコンドリアは宇宙でどう働くか?"
    馬嶋 秀行(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 教授)
  3. "カイコの卵は宇宙放射線の番人になるか?"
    古澤 壽治(京都工芸繊維大学 名誉教授)
特別講演
 
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