STS-95 向井宇宙飛行士再び宇宙へ　「ジョン・グレン」

ジョン・グレン宇宙飛行士（John Herschel Glenn, Jr.）

写真提供：NASA　

フレンドシップ7の
ミッションパッチ

　ジョン･グレン宇宙飛行士は、1959年4月にマーキュリー計画の７人の宇宙飛行士の一人に選ばれ、1962年2月、アメリカ人として初めて地球周回軌道を飛行しました。（*1）今回のSTS-95ミッション搭乗時、グレン宇宙飛行士は77歳であり、史上最高齢の宇宙飛行士（*2）となります。

　（*1）世界初の軌道周回飛行は1961年4月12日に打ち上げられたソ連のユーリー・ガガーリンです。　またアメリカ人初の宇宙飛行士は、弾道飛行を行ったアラン・B・シェパードです。
　（*2）これまでの最高齢の宇宙飛行士は、1996年12月のSTS-80で飛行したストーリー・マスグレイブ（Story Musgrave）の61歳です。

　ジョン・グレン氏は1921年７月18日（大正10年に相当）オハイオ州ケンブリッジで生まれました。現在2人の子供と、2人の孫がいます。1943年に結婚し同年海兵隊として出兵、太平洋戦争と朝鮮戦争の2回の戦争中に戦闘機のパイロットとして合計149回出撃し、この間11回被弾したという歴戦の勇者です。朝鮮戦争後、テストパイロットの学校に入学し、卒業後1956年から59年まで海軍の戦闘機設計局に勤務しました。この間1957年にはテストパイロットとして超音速で、アメリカ大陸横断飛行記録（ロサンゼルス、ニューヨーク間を3時間23分）を樹立しました。

　1959年4月にマーキュリー計画の7人の宇宙飛行士の1人に選ばれました。1961年5月のアラン・シェパード、1962年7月のバージル・グリソムの宇宙飛行につづいて、1962年2月20日に宇宙飛行を行いました。当初、1961年12月20日に打上げが予定されていましたが、天候不良により11回も延期されました。
　先行の2人が弾道飛行でわずか15分あまりで帰還したのに対し、ジョン・グレン宇宙飛行士の宇宙飛行は4時間48分におよび地球を3周しました。

　この飛行の2周目の途中、地上で受信したテレメトリはマーキュリー宇宙船の耐熱シールドが外れている（着水時の衝撃緩衝用のエアバッグが開いている）ことを示しました。その剥がれを少しでもくい止めるために、分離する予定だった逆噴射ロケット部を付けたままで大気圏に再突入することになりました。
　耐熱シールドが外れかけた宇宙船は再突入時の熱で分解して燃え尽きる可能性もあったのですが、結局安全に降下することができました。

　回収後の検査では、誤動作によって船内のランプの表示やテレメトリデータが異常を示していたことが判明しました。これは、ジョン・グレン宇宙飛行士と地上の全ての関係者が体験した、手に汗握るエピソードです。

マーキュリー計画以降の経過は概略次の表のとおりです。

1959年4月	マーキュリー計画の7人の宇宙飛行士の１人に選ばれる。
1962年2月	マーキュリー宇宙船（フレンドシップ7）に搭乗しアメリカ人として初めての軌道周回飛行に成功。
1964年秋～1974年秋	ロイヤル・クラウン・コーラ社の重役として招かれる。（1969年からは同社の社長となる。）
1974年11月	オハイオ州選出の民主党上院議員として当選。（現在まで4期連続当選）
1998年1月	STS-95のペイロードスペシャリストとして飛行割当を受け現在に至る。

　宇宙の無重力状態で宇宙飛行士に生じる骨や筋肉の衰え、バランス感覚の喪失、睡眠障害などの生理現象は、地上での老化現象に極めてよく似ていると言われています。今回、グレン宇宙飛行士の飛行中に取得される生理データを解析することで、高齢者の宇宙飛行及び宇宙での長期滞在などの可能性を探ることが可能になると考えられるとともに、地上における老化現象の解明にも役立つことが期待されています。

　ジョン・グレン氏が、1962年にアメリカ人初の地球周回飛行をおこなった時の、STS-95クルーの年齢は次のとおりです。

カーチス・ブラウン　船長	5歳
スチーブン・リンゼイ　パイロット	2歳
スチーブン・ロビンソン	7歳
スコット・パラジンスキー	6ヶ月
ペドロ・デューク	生まれる1年前
向井　千秋	10歳