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土井宇宙飛行士へのインタビューとQ&A
平成9年11月29日 平成9年10月6日 平成9年8月1日

日時:平成9年10月6日
場所:ヒューストンのNASDA駐在員事務所にて

1)打上げまで1ケ月と少しになりましたが、準備は整いましたか?
 訓練が最高潮に達したところで、毎日忙しい生活を送っています。
 EVA(Extravehicular Activity:船外活動、通称「宇宙遊泳」)の訓練*は一回約6時間行いますが、それを今までに9回行いました。まだ4回残っています。そのくらい訓練を行うことによって、EVAの細かな技術を身に付けることができます。EVAの技術は奥が深く、やればやるだけ新しい発見がありますしうまくなって行きます。
 EVAの訓練は非常に集中して行うため、6時間がおわると非常に疲れます。集中する度合いも訓練を積む度に深まっていきます。それに応じて自分の技術も向上して行きますし、スコット宇宙飛行士と一緒に訓練を行なうのですが、周りの状況がどうなっているのか判断できる把握能力も高まって行きます。

* EVA訓練は、NASAのNBL(Neutral Buoyancy Laboratory:無重量環境訓練設備)と呼ばれる巨大なプールに、実物大のシャトルのペイロードベイ(貨物室)の模型を沈め、その中に宇宙服を着て潜り、実際のタイムラインに沿った形で作業を行う訓練です。

2)今残っている訓練はEVA関連だけですか?
 まだまだ、ほかにもたくさん残っています。今EVAが一番大変といえば大変な訓練ですが、その次にくるのがJoint Integrated Simulation(統合訓練)といって、私たちが宇宙に行って仕事をする時の一日のスライスをとってきて、地上のミッションコントロールセンター(MCC: Mission Control Center)の人たちや、私たちのトレーナーとかを含めまして全体でミッションそのままのリハーサルを行ないます。
 これが週に1回か2回行います。今週も1回あり、これはスパルタン衛星の回収部分をリハーサルするのですが、朝から12時間行います。

3)宇宙ステーション計画において、今回のEVAはどのような役割をはたすのですか?
 今回船外活動で行う大きな仕事の一つは、宇宙ステーション船外活動用クレーンの検証です。
 このクレーンは垂直に立てると支柱の長さが1.8mくらいあり、横にブームという腕を伸ばすと約5.3mになります。このクレーンで、宇宙ステーションの建設のときに宇宙飛行士が運べないような大きなものを運ぶことができます。今回のEVAでその実用性を確め、私がそのクレーンを操作します。

4)これから打上げまでのスケジュールの中で、一番ハードなところはなんですか。
 まだまだ、これから船外活動の訓練が続きます。あと4回、NBLで訓練を行ないます。あと、Final Countdown,という打上げリハーサルを11月の初に行ないます。その時はコロンビアが発射台に立ち、その中に実際に入り、実際に着るオレンジ色の打上げ用のスーツを着て座席が上を向いているところに座り、訓練を行ないます。この訓練が終われば山をこえます。

5)これらの訓練はきついですか。
 きついです。体力的にも、精神的にも厳しい訓練です。それを乗り越えることによって本番に耐える力が出て来るのだと思います。11月の初めには、一番忙しいこれらのトレーニングが終わりますので、その頃には、さあ行くぞという感じになっていると思います。
 クルーがみんな一丸となって励まし合いながら訓練を行なっていますし、特にその仲間たちの雰囲気がとてもいいですから、厳しいながらも楽しくやっています。

6)これからもたくさんの訓練がありますが、今、宇宙に行けといわれたら対応できますか。
 今宇宙でやるべきことをマスターしていますが、最後の細かなところを調整しています。今から宇宙へ行けといわれてもきちんと仕事ができると思います。また、あと一ケ月厳しい訓練を乗り越えることによって、さらに技術力が高まり、万全の準備で望むことができるようになります。

7)ミール(ロシアの宇宙船)でのEVAの様子をみましたが、動きがゆっくりでしたが。
 慣れている地球上の環境とは違いますので、まず自分のからだにその環境を覚え込ませるために、ゆっくり体を動かします。あと体が非常に不安定になります。ちょっと壁を押しただけでも自分の体が回転し初めます。そういうところを注意して考えながら、一番効率のよい動き方で、すごくゆっくり動かなければならないと思います。

8)EVAで行なう動きの中で一番難しい作業は?
 宇宙空間で移動するときは足を使うことができず、ハンドレールをつかみながらゆっくりと移動していくのですが、宇宙空間で両手をはなしてしまうと浮いてってしまう可能性もあるので、たえず何かをつかんでいなければなりません。しかし強くつかんでしまうと手首からねじりの力が働いて体が動いてしまい、足が上の方に動いたり下の方に動いたりしてしまうので、強くつかむことができません。ですからどうするかというとハンドレールをつかむとき、指先でさわる感じでつかみ、移動していきます。これが宇宙空間で移動する時の基本的な動作です。

9)宇宙空間での体のコントロールの仕方は訓練の間にマスターできるのですか。
 地上の訓練ではできません。ひとつの場所から別の場所に動いていく時の水中でうでの使い方、動き方は訓練できますが、水の中では水の抵抗があり体は安定しています。体の状態は無重量のために不安定になり、自分の重心から離れたところで押すと体が回転しはじめます。回転するような不安定というのは、地上では経験しない事なので、体の安定性のコントロールの仕方は宇宙に行ってから学ばなければならない事です。

10)宇宙に初めて足を踏み出すというのはどういう感じがするのでしょうね。
 本当に楽しみにしています。ハッチから船外に出る時は、足の先から出たり色々な出方がありますが、私の場合は頭から出ようと思っています。ペイロードベイがちょうど地球の方向を向いているので、最初に見えるのはたぶん地球の姿だと思います。その瞬間を非常に楽しみにしています。

11)天文がご趣味ですが、宇宙でどのような天体を見たいのですか。
 地球をじっくり思う存分眺めてみたいです。それから私たちの銀河の眺め、天の川ですが、日本やヒューストンでは北半分しか見えないので、それが南の方までのびていている姿を見たいです。

12)すきな星や星座はありますか。
 冬のオリオン座、夏の琴座とか、天の川、球状星団が好きです。今回望遠鏡を持っていくことが出来ないので、細かなところまで見ることは出来ませんが、双眼鏡がシャトルに装備されているので、それを使って星座や星雲を眺めて見たいです。

13)若田宇宙飛行士は宇宙で書道をしましたが、宇宙で何かやってみたいことはありますか。
 スケッチ、絵を描こうと思っています。クレヨンとスケッチブックを持っていって、地球の姿やシャトルの姿を描こうと思います。

14)クレヨンですか?
 水彩絵の具や油絵具は液体状の物なので、スペースシャトルの中で使うことができません。クレヨンで24色ある物を持っていって、まず絵を書けるかどうかその辺から始めて、自分で思った宇宙の印象を絵として描いて見ようと思います。私自身芸術家ではありませんが、絵を描くことが好きです。

15)今まで宇宙で絵を描いた人はいましたか。
 いたかも知れません。宇宙開発事業団として初めての試みで、将来宇宙ステーションでは、理科学的な仕事だけでなく、芸術や文化的な仕事がきっとできるようになると思います。芸術的な活動ができるかどうか、実際に絵を描くことが可能かどうかということを確かめる1つの実験にもなっています。

16)宇宙に持って行く私物はもう決まりましたか。
 NASAの方にもう提出しました。自分にとって大切な品物です。例えば、私は星を見るのが好きなので、高校時代に初めて大きな望遠鏡で火星とか球状星団とか見たのですが、その時に使った接眼鏡を持っていきます。あとは友達のための品物を持っていきます。

17)実際にその接眼鏡をつないで観測するのですか。
 シャトルに私物を持っていくことはできますが、封をされてしまうので開くことはできません。

18)サッカーの旗を持って行くと聞きましたが。
 小さい頃からサッカーが好きで、サッカー協会の方からペナントを持って行くことになってます。サッカーボールについてはまだ交渉中です。宇宙に持っていければ素晴らしいと思います。

19)土井さんにとっての宇宙とは?
 神秘に満ちた未開の地で、将来の人類の活躍の場だと思います。


Last Updated : 1997.11.6


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