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日本人宇宙飛行士はじめて
スペースシャトルで宇宙へ

日本の宇宙実験を自ら行った「ふわっと'92」第1次材料実験(FMPT:First Material Processing Test)
 1992年9月12日は日本の有人宇宙計画にとって記念すべき日となりました。この日、毛利衛宇宙飛行士が日本人としてはじめてスペースシャトルで宇宙に飛び立ちました。

無重量状態のシャトル内での毛利宇宙飛行士とクルーたち。

錦鯉を・gった宇宙酔いの実験。

毛利宇宙飛行士は地上の子供たちに向けて宇宙授業も行った。


 毛利宇宙飛行士の飛行が実現するまでには長い道のりがありました。1970 年代の後半、スペースシャトルの開発が進むなかで、日本でも有人宇宙実験の可能性が議論されるようになりました。79 年、将来の「ふわっと’92 」となる第1 次材料実験(FMPT )が決定され、85 年には日本人宇宙飛行士として毛利衛、向井(当時は内藤)千秋、土井隆雄の3 人が選抜されました。FMPT の飛行は最初88 年1 月に予定されていましたが、チャレンジャー号の事故などで4 年以上も遅れてしまったのです。

 毛利宇宙飛行士にとって7 年間待った「ふわっと’92 」は、多くの成果を上げました。微小重力環境を利用して新材料を作ったり、コイの宇宙酔いを調べるなど、材料系22 、ライフサイエンス系12 の実験が順調に行われ、興味深い結果が得られました。「ふわっと’92 」は日本にとって最初の本格的な宇宙実験であり、実験テーマの選定、搭載実験機器の開発・製作、宇宙飛行士の選抜・訓練、シャトル上での実際の実験まで、多くが日本にとってははじめての経験でした。「ふわっと’92 」の成功によって、日本の宇宙実験は大きな飛躍を果たすことができました。

 軌道上での毛利宇宙飛行士のスケジュールは非常にきつく、次々と実験を行わなくてはなりませんでした。しかし毛利宇宙飛行士は実験を行うだけでなく、シャトル上から地上の子供たちに「宇宙授業」も行い、リンゴや紙飛行機などを使って宇宙がどのようなところなのかを熱心に子供たちに語りかけました。また、宇宙から見る地球の素晴らしい姿や無重量という興味深い環境について、多くのメッセージを送ってきました。「無重量環境もなれれば快適です」「あと10 年、20 年するともっと簡単に宇宙旅行ができるようになります」「地球の大気と水を守ることが我々の課題です」。毛利宇宙飛行士の「宇宙授業」や宇宙からのレポートによって、多くの日本人にとって宇宙がより身近なものに感じられるようになりました。

「ふわっと'92 」

「ふわっと’92 」の搭乗クルー。

地上より毛利PS を支援する向井、土井PS 。
(FMPTミッション当時)
 「ふわっと’92 」は、宇宙開発事業団がNASAのスペースシャトルを利用して実施した日米共同実験プロジェクトです(NASA ミッション名「SL- J 」)。「ふわっと」の愛称は公募され、全国2100 名の応募のなかから90 年2 月に選定されました。この愛称は無重量状態を感覚的に表現したものです。「ふわっと’92 」では、スペースシャトル「エンデバー」に搭載されたスペースラブ(宇宙実験室)の中で、シャトルの地球周回軌道投入後8 日間にわたって、第1 次材料実験(FMPT )が実施されました。地上では実施が困難な材料実験22テーマとライフサイエンス実験12 テーマが行われました。実験の運用は、NASDA が、米国アラバマ州にあるNASA マーシャル宇宙飛行センター(MSFC )から、NASA の支援を得て実施し、米国側実験7 テーマと日米共同実験2 テーマも同時に行われました。

 微小重力科学分野の主な成果としては、従来の凝固理論を大幅に修正した凝固の研究があげられます。鋳造においては、中心部には等方的な結晶粒が存在しますがこれは中心部において新たな核発生を伴うためであると考えられてきました。実験結果は、中心部における新たな核発生ではなく、地上での対流により坩堝表面で生じた核が中心部に運ばれるために中心部で等方的な結晶粒が生じることを示しており、従来の凝固理論の修正を行うことができました。

 ライフサイエンスの分野では、微生物、動物培養細胞、植物、人間を含む動物などを対象に重力や宇宙放射線の影響が調べられ、その結果、宇宙環境は一般的に生物の成育に致命的とはならないものの、無視できない様々な影響を与えることが明らかになり、今後の研究の必要性が認識されました。


フライトデータ
ミッション期間1992 年9 月12 日23:23 ~9月20 日21:53 (日本時間)
計7 日22 時間30 分(当初予定7 日間を1 日延長)
シャトル飛行番号STS- 47
シャトルオービターエンデバー号(OV- 105 /2回目の飛行)
軌道高度・傾斜角約300km (円軌道)・57 度
搭乗員
  • ロバート・L ・ギブソン(コマンダー(船長)/NASA )
  • カーティス・L ・ブラウン(パイロット/NASA )
  • マーク・C ・リー(ミッションスペシャリスト(MS:搭乗運用技術者)兼ペイロード・コマンダー/NASA )
  • ジェローム・アプト(MS /NASA )
  • N ・ジャン・デイビス(MS /NASA )
  • メイ・C ・ジェミソン
    (SMS:Science MissionSpecialist /NASA )
  • 毛利衛(ペイロードスペシャリスト*(PS:搭乗科学技術者) /NASDA )
* 現在はMS


日本の実験テーマと代表研究者
※M は材料実験、L はライフサイエンスの略、
  • 新材料創製実験
    M- 1狭バンドギャップ三元混晶半導体鉛錫テルル単結晶の無重力下における結晶成長
    山田智秋(日本電信電話(株)
    M- 2無重力下における帯溶融法によるPbSnTe 大形単結晶の試作
    岩井荘八(理化学研究所)
    M- 3浮遊帯域溶融法による化合物半導体結晶の作製
    中谷 功(金属材料技術研究所)
    M- 4新超電導合金の溶製
    戸叶一正(金属材料技術研究・梶j
    M- 5粒子分散型合金の作製
    村松祐治(金属材料技術研究所)
    M- 6高剛性・超低密度炭素繊維/アルミ合金複合材料の製造研究
    鈴木朝夫(東京工業大学)
    M- 7無重力下におけるSiAsTe アモルファス半導体の製造
    浜川圭弘(大阪大学)
    M- 8非可視域用光学材料の研究
    早川惇二(工業技術院)
    M- 9無重力下におけるサマルスカイトの合成
    竹川俊二(無機材質研究所)
    M-10無重力環境下における有機金属結晶の成長
    安西弘行(工業技術院)
    M-11無重力環境下における化合物半導体結晶の作成(InGaAs の研究)
    龍見雅美(住友電気工業(株))


  • 地上の既存生産技術の改善及び向上
    M- 5複合脱酸した鋼塊中の脱酸生成物の生成機構
    福澤章(金属材料技術研究所)
    M- 8ガラスの高温挙動
    曽我直弘(京都大学)
    M- 9シリコン球結晶の成長とその表面酸化
    西永頌(東京大学)
    M-12液相焼結機構の研究
    小原嗣朗(東京理科大)
    M-14無重力下における気相金属凝結機構の研究
    和田伸彦(名古屋大学)


  • 将来の宇宙製造基盤技術の確立
    M- 7二種の溶融金属の相互拡散及び凝固生成す・骰㈲焉A
    化合物の組織と構造
    檀武弘(金属材料技術研究所)
    M-10非混合合金系の凝固・成長に関する研究
    神尾彰彦(東京工業大学)
    M-15音波浮遊装置内での液滴の挙動と音波干渉履歴の研究
    山中龍夫(航空宇宙技術研究所)
    M-16温度勾配及び超音波定常波のある場における泡の挙動の解明
    東久雄(航空宇宙技術研究所)
    M-18無重力下での材料製造過程におけるマランゴニ対流の研究
    塩冶震太郎(石川島播磨重工業(株))
    M-19無重力条件下における共晶系合金の凝固に関する研究
    大野篤美(千葉工業大学)


  • 生体材料の分離及び調整技術の向上
    L- 3生体成分の無重力下での電気泳動法による分離条件の確認
    黒田正男(大阪大学)
    L- 5無重力を利用した酵素の結晶成長
    森田雄平(京都大学)
    L- 6哺乳類培養細胞の超微構造と機能に及ぼす無重力の影響に関する研究
    佐藤温重(東京医科歯科大学)
    L-8フリーフロー電気泳動による細胞の分離
    山口登喜夫(東京医科歯科大学)


  • 宇宙環境への適応技術の確立
    L- 1搭乗者の内分泌系の反応及び代謝変化
    妹尾久雄(名古屋大学)
    L- 2無重力順応過程における視一前庭性姿勢・運動制御の研究
    森滋夫(名古屋大学)
    L- 4宇宙空間における視覚安定性の研究
    古賀一男(名古屋大学)
    L- 7骨と軟骨の発生と成長に及ぼす無重力の影響に関する研究
    須田立雄(昭和大学)
    L- 9HZE 及び宇宙放射線の遺伝的影響
    池永満生(京都大学)
    L-10無重力環境での知覚一動作機能の研究「手動制御特性の研究」
    多田章(航空宇宙技術研究所)
    L-11宇宙放射線の生物への影響の検討と宇宙飛行士の放射線防御対策の研究
    長岡俊治(宇宙開発事業団)
    L-12アカパンカビを用いた概日性リズムの研究


最終更新日:2000年 6月22日

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