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ミール情報(9月9日)


※ 今回新たに追加・変更した情報をアンダーラインで示しています。

● 全体状況

  • 日本時間の9月8日(月)夕方に発生したミールのメインコンピュータの不具合は、日本時間9日(火)の午後に復旧し、ジャイロによる姿勢制御を開始した。
    故障原因については発表されていない。
  • 6月にプログレス輸送船との衝突事故により損傷を受けたスペクトルモジュールの修理作業に向けた船外作業は、日本時間の9月6日(土)午前11時07分から開始され、6時間後の午後5時07分に終了した。
    作業にはロシアのソロブヨフ飛行士と米国のフォール飛行士が参加し、スペクトルモジュールの損害状況の調査、太陽指向制御が不能となっているスペクトルモジュールの太陽電池パドルの受光面の角度調整等を行った。
    スペクトルモジュールの損害状況調査では、空気漏れの原因となるような穴は特定できなかったが、太陽電池パドルの受光面の角度調整は、損傷を免れた3枚のうち2枚の太陽電池パドルについて行われた。
  • 日本時間の8月22日(金)に実施されたミールの電力復旧のための船内修理作業は、ケーブルの接続端子を装備したハッチを介して、スペクトルモジュールの太陽電池からの電力ケーブルとの接続に成功した。しかし、太陽電池パドルを駆動するモータが故障していたため、太陽指向制御が行えず十分な電力は得られなかった。
  • ミールの飲み水が限界に近づいている。
    現在の状況では、9月〜10月には底をつくことになる。
    ロシアと米国は、9月のSTS−86と10月のプログレス輸送船に飲み水を搭載することを検討中。


● メインコンピュータの不具合

 故障していたミール宇宙ステーションのメインコンピュータは、日本時間の9日(火)午後、コンピュータのセントラルプロセッサユニットをスペア品と交換することにより復旧し、ジャイロによる姿勢制御が開始された。
 故障は日本時間の8日(月)夕方発生し、姿勢制御システムが不能となった。クルーは太陽電池パドルの太陽指向が維持できなくなる可能性があったため、節電のため生命維持システムを除く全てのシステムを停止させた。
 ロシア航空宇宙局の発表では、ミールはシステム停止後も姿勢が安定し、太陽電池パドルが太陽指向を維持したため、バッテリの消耗はほとんど無かった模様。


● スペクトルモジュールの船外修理作業

 ロシア航空宇宙局はプログレスとの衝突により損傷したスペクトルモジュールの修理作業を、以下のスケジュールで行う予定。

  1. クバント1にドッキングしていたソユーズTM26を、ミールのコアモジュールのドッキングポートへ移動する際に、スペクトルモジュールの側を通り、ソユーズTM26からスペクトルモジュールの損害状況をビデオ等で調査した。撮影されたスペクトルモジュールの写真から、幾つか穴のようなものが見られた。
  2. 日本時間9月6日(土)午前11時07分より、ロシアのソロブヨフ飛行士と米国のフォール飛行士が船外に出て、6時間に及ぶ船外作業を行った。
[今回の船外作業で実施された主な作業]
  1. 6月のプログレス輸送船との衝突事故により損傷したスペクトルモジュールの損害状況の調査を行った。
    ソロブヨフ飛行士により太陽電池パドルの付け根部分に亀裂が確認された。ロシア航空宇宙局はこの亀裂からスペクトルモジュールの空気が漏れた可能性があるとしている。
    その他に、空気漏れの原因となるような穴や亀裂は発見できなかった。
  2. スペクトルモジュールの損傷を免れた3枚の太陽電池のうち2枚について受光面を太陽方向へ向けた。(太陽電池パドルを駆動するモータが故障しているため、現在太陽指向制御が不能となっている。)
  3. 今後のスペクトルモジュールの修理作業のために、スペクトルモジュールに作業支援用の手摺りを取り付けた。
  4. 今年の4月に米国リネンガー飛行士の船外作業により、クバント2の外壁に取り付けられていた放射線計測装置を回収した。
  1. 9月打上げ予定のSTS−86アトランティスのデイヴィッド・ウルフ飛行士の到着後、スペクトルモジュールの穴をふさぐ作業を行う。

※ウォルフ飛行士は昨年8月よりロシアでトレーニングを行っており、来年1月のミール滞在ミッションとしては最後になるシャトル/ミールミッションに参加する予定であった。
 当初、フォール飛行士と入れ替わりでミールへ滞在する予定であったローレンス飛行士は、ミールが衝突事故を起こしたことにより修理作業が優先されたためウォルフ飛行士と交代となった。(ローレンス飛行士は船外活動の訓練を受けていないこと、ロシア製の宇宙服が彼女に大き過ぎることが理由となった。)
 現在ウォルフ飛行士は、ロシア宇宙飛行士訓練センターでの訓練を終了し、米国のジョンソンスペースセンターで打上げ前の最終訓練を行っている。
 STS−86アトランティスは、9月25日(火)頃の打上げ予定になっている。


● 8月22日(金)に実施された船内修理作業

[目的]
ミールの電力回復のため。
6月のプログレス輸送船との衝突により損傷を受けたスペクトルモジュールを閉鎖する際に、止むを得ず切り離された電力ケーブルを、ミールのコアモジュールへ繋ぎ直す。
これにより、ミールの電力は通常の90%程度まで回復する見込。

[作業経過]
  • 8月22日(金)午後6時(日本時間)予定通り作業を開始しようとしたところ、トランスファーノード(各モジュールの連結部分)のハッチのひとつから空気が漏れているのが発見された。
    処置のため作業開始時刻を遅らせた。
  • 午後6時59分(日本時間)トランスファノードを減圧中にロシアのビノグラドフ飛行士の宇宙服のグローブから僅かな空気漏れが発見された。
    ノードを加圧し、スペアのグローブとの交換を行った。
  • 午後7時55分(日本時間)地上管制局より作業開始の指令が出された。
  • 午後8時10分(日本時間)予定より約2時間遅れで作業が開始された。
    スペクトルモジュールの内部に入ったビノグラドフの報告では、モジュール内には予測されていた危険な浮遊物はなく、唯一白っぽいクリスタルのような物が浮遊しているのが確認された。これについて米国フォール飛行士は、おそらく自分の使用していたシャンプーであろうとしている。(スペクトルモジュールには、フォール飛行士のプライベート用品を収納する所や作業場があった。)
    また、真空状態のスペクトルモジュール内で稼働している機器(ファン、ポンプ)が発見された。
  • 午後9時45分(日本時間)ビノグラドフ飛行士は、11本のケーブル全てを繋ぎ終えた。作業は順調に進み、時々飛行士の笑い声が聞こえるほどであった。
    また、モジュール内を見渡したが、壁に亀裂等を発見することは出来なかった。
  • 午後11時30分(日本時間)作業開始から約3時間半で、今回予定していた修理作業は全て終了した。

[電力回復状況]
 米国時間8月25日(月)スペクトルモジュールからクバント2とクリスタルモジュールに電力が供給されていることが確認されたが、太陽電池パドルを駆動するモータの故障が発覚した。このため太陽指向制御が行えず、十分な電力を得られていない。
 8月29日(金)現在で、クバント2へ47アンペア、クリスタルモジュールに100アンペア供給され、クリスタルモジュールの空気清浄機やヒータが復旧したが、全てのシステムを稼働させるには電力が不足している。


● 酸素供給

  • 8月25日(月)に相次いで故障したミールの酸素発生装置のメインシステムとバックアップシステムは25日夜には両システムとも復旧し、現在は正常に稼働している。
     メインシステムは、5月にシャトルにより運ばれてきた装置で、6月にクーリングシステムのレギュレータバルブの不具合によりオーバーヒートを起こし、クルーにより修理作業が行われていた。
    バックアップシステムは化学物質を発火させることにより酸素を発生させる装置で、2月の小火の原因にもなっている。
    今回の不具合では、化学物質に点火するための点火装置が故障した模様。
    ミールには予備の点火装置が装備してあり、点火装置を交換しシステムを復旧させた。


● クルーの飲み水について

 ミールでは、クルーの飲み水を空気中の水蒸気や廃液をリサイクルすることで賄っているが、4月に発生したクーリングシステムの不具合の際に、船内の空気中にクーリング装置の不凍液が散らばったため、空気中から水をリサイクルする装置が汚染された危険性があり、同装置の使用を控えていた。
 この状態が続くと9月の終わりには飲み水が底をつくことになる。
 ロシア航空宇宙局は、先日帰還したロシア人飛行士に船内の空気中からリサイクルした水をサンプルとして持ち帰らせた。今後汚染されているかどうかの検査を行う予定。
 また、ロシア航空宇宙局とNASAは、9月に打上げが予定されているSTS−86アトランティスと10月に打上げが予定されているプログレス輸送船にミールのクルーの飲み水を搭載することを検討している。

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