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宇宙医学

生理的対策

最終更新日:2015年3月10日

JAXAでは、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する日本人宇宙飛行士の「生理的な対策」の開発のため、薬剤を用いた骨量減少・尿路結石の予防や、微小重力環境における効果的な運動器具・トレーニング法の研究を含む、以下の課題に取り組んでいます。

「生理的な対策」に関する最重要課題

医学的リスク 研究課題 研究テーマ/プロジェクト
骨量減少
(飛行時/帰還時/帰還後)
薬剤を用いた対策法の研究/
帰還後の骨量回復支援策
ビスフォスフォネート剤を用いた骨量減少・尿路結石予防対策に関する研究
骨量減少メカニズムの解明/
筋骨格系委縮の基礎的メカニズム・
重力感知機構の解明
飛行中の尿路結石のリスク 薬剤投与法の研究
筋機能の低下 軌道上の新たな運動器具の研究
効果的なトレーニング法の研究
軌道上の姿勢制御構築過程の研究
帰還後の効果的なリハビリ法
最適な運動プログラムに関する研究
軌道上のエクササイズ装置を使用した運動プログラム
筋委縮・再生のメカニズムの解明
宇宙環境が生体に及ぼす長期的影響
(継世代影響を含む)
軌道滞在中および帰還後の宇宙飛行士の健康管理のため、従来の短期の滞在では顕在化しなかった長期滞在による生体への影響について、継代的なものや既知でないものも含め、主としてライフサイクルの短いモデル生物を用いた調査 長期宇宙飛行時における心臓自律神経活動に関する研究(Biological Rhythms)

長期宇宙滞在宇宙飛行士の毛髪分析による医学生物学的影響に関する研究(Hair)
飛行中の代謝変化・栄養アンバランス 宇宙日本食の提供

骨量減少/飛行中の尿路結石のリスク

ビスフォスフォネート剤を用いた骨量減少・尿路結石予防対策に関する研究

人間は、体を支える軽くて丈夫な骨を発達させ、骨にカルシウムを蓄えて、血中カルシウム濃度を一定に保つ機能を維持しています。
しかし、重力のない宇宙では、骨への負荷が少なくなるため、骨からカルシウムは溶出し、骨量減少や尿路結石の危険は高まり、骨折したり激痛が発生したりする可能性が増えます。

ISS滞在中の宇宙飛行士の日課には、1日約2時間の運動プログラムが組み込まれて、骨量と骨を支える筋肉の維持を図っています。しかし、骨量減少や尿路結石の予防として運動だけでは十分な効果は得られていません。

ビスフォスフォネート剤を用いた骨量減少・尿路結石予防対策に関する研究は、NASAとの共同研究です。この研究は、骨粗鬆症の治療薬として用いられているビスフォスフォネート製剤を使って、長期宇宙滞在中の骨量減少と尿路結石のリスクを軽減することができるのではないかという発想からスタートしました。

骨量減少・尿路結石予防対策実験の事前訓練を行う野口宇宙飛行士

骨量減少・尿路結石予防対策実験の事前訓練を行う野口宇宙飛行士 (出典:JAXA)

実験では、ビスフォスフォネート製剤+運動の組み合わせと、運動のみの場合とを比較して、骨量減少と腎結石形成の予防効果を検証します。
この実験には、日本の若田宇宙飛行士が約4ヶ月半のISS長期滞在ミッション(2009年3月~7月)中に、野口宇宙飛行士が約5ヶ月半のISS長期滞在ミッション(2009年12月~2010年6月)中に参加しました。

将来的には、骨量減少予防の食事療法が開発されるかも知れません。宇宙医学研究により骨量減少の研究がさらに進み、地上で年々増加している骨粗鬆症の予防対策にも貢献することが期待されます

日本はビスフォスフォネート製剤の骨吸収抑制効果に早くから着目し、これを宇宙滞在中の骨量減少/尿結石対策に用いることができるのではないかという仮説のもと研究開発を行ってきました。2001年から2002年にかけて、欧州宇宙機関(ESA)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)及びJAXAとの共同研究で、フランスのトゥールーズにあるフランス宇宙医学・生理学研究所(MEDES)の施設で実施した90日間の長期ベッドレスト実験で、ビスフォスフォネートにより仮説通り骨量減少の予防と尿路結石発症のリスクを低減させるという結果が示され、この成果をもとに宇宙実験を提案して採択されました。

筋機能の低下

軌道上の運動器具を使用した運動プログラム

微小重力環境では身体が宙に浮かぶため、壁を押した反動を利用して簡単に宇宙船の中を移動することができます。すると、筋肉を使う必要が少なくなるため、自然と筋肉は衰えていきます。この傾向は、地球の重力環境で体を支えていた下肢の筋肉に顕著に現れます。
下肢の筋力が著しく低下した状態で地球に帰還すると、重力に逆らって立ちあがり、歩くことができなくなってしまいます。また、宇宙に長期間滞在すると骨ももろくなってしまうので、転倒などよる骨折を起こしやすくなってしまうことも問題となります。

筋肉が痩せること、すなわち筋肉が萎縮することを予防するためには、継続的な運動が必要です。
軌道上における宇宙飛行士の運動は、筋や骨、さらには心臓や肺の機能が衰えることを防ぐ目的で実施されています。

軌道上での運動は、微小重力環境である国際宇宙ステーションの中でも地上と同様の運動ができるように工夫されたトレッドミル(T2、TVIS)、自転車エルゴメータ(CEVIS)、改良型筋力トレーニング装置(ARED)などの運動器具を用いて行なわれます。
滞在の時期や、個々の宇宙飛行士の体調、体力などに応じて、個別に処方されたプログラムが実施されます。

宇宙環境が生体に及ぼす長期的影響

長期宇宙飛行時における心臓自律神経活動に関する研究(Biological Rhythms)

私たちの通常の生活では、日中に起きて活動し夜に眠るという一日の生活リズムが一般的です。
夜勤や交代勤務を行っている人には、不眠や睡眠不足からくる疲労で体調を崩す人もいます。これは昼夜逆転した生活によって生体リズムが変調するために起こることが予想されます。

では、軌道上での生活はどうでしょうか。ISSは90分で地球を1周しますので、1日に16回昼と夜が訪れます。ISSでの日照リズムは、地上の24時間の昼夜の日照リズムとは全く異なるので、生体リズムが変調する危険があります。

宇宙飛行士の生体リズムの変調は、集中力や作業効率の低下、精神ストレスや事故発生リスクの増大などの問題を引き起こす可能性があり、宇宙医学研究での最重要課題のひとつに挙げられています。しかし、宇宙長期間滞在中の宇宙飛行士の生体リズムについての情報は、これまでほとんど得られていません。

デジタルホルター心電計

デジタルホルター心電計

長期宇宙飛行時における心臓自律神経活動に関する研究(Biological Rhythms)は、小型の生体情報記録装置「デジタルホルター心電計」を使って、宇宙長期滞在中の宇宙飛行士の24時間心電波形記録を行って、心臓自律神経活動を解析します。このデータから、宇宙滞在中の生体リズム(交感神経と副交感神経のリズム)の変化と睡眠中の心臓の休息度を評価することができます。

心血管機能および自律機能をモニタすることは、長期宇宙滞在中の宇宙飛行士の健康管理/医療技術を改善する上で大変重要です。この技術は、宇宙飛行士の動悸や不整脈などの循環機能を監視するための軌道上遠隔医療技術に役立ちます。

長期宇宙滞在宇宙飛行士の毛髪分析による医学生物学的影響に関する研究(Hair)

毛髪は身体の一部であり、人間が外部の環境に適応するための生体反応を知る良い材料となります。

ストレスなどの様々な外部要因に対して敏感に応答する毛根から抽出される分子を分析することで、生体への影響を遺伝子・タンパク質のレベルで解析することができます。
また、毛幹部には体内に存在する微量元素の変化が毛髪の成長に伴って記録されていくため、特定位置の含有元素を解析することにより、過去のある時期における生体の状態をさかのぼって知ることができると考えられます。

毛髪のサンプル回収キット

毛髪のサンプル回収キット(出典:JAXA)

宇宙環境には、身体的・心理的なストレスを引き起こす要因が数多くありますが、それの影響を客観的に判断する指標や判定手法は、まだ確立されていません。
長期宇宙滞在宇宙飛行士の毛髪分析による医学生物学的影響に関する研究(Hair)では、宇宙環境(微小重力環境、宇宙放射線、精神的ストレス等)による影響を毛髪の分析によって評価し、長期宇宙滞在ミッションにおける健康管理のためのツールとして“毛髪による健康管理手法”を確立することを目指しています。

飛行中の代謝変化・栄養アンバランス

宇宙という過酷な環境で重要ミッションを行う宇宙飛行士にとって、「食事」は、肉体的・精神的な健康を維持するために大変重要です。宇宙滞在中の食事の摂取量や栄養バランスが適切でないと、宇宙飛行士の健康状態を危険な状態にしてしまい、ミッションの遂行の妨げとなる恐れがあります。

このため、宇宙滞在中の宇宙飛行士の食事計画は、ミッション成功の鍵ともいえます。しかし、宇宙飛行士の食事メニューを作成し、宇宙滞在中の栄養面のアドバイスを行うためには、宇宙滞在中の宇宙飛行士がどのくらいのエネルギーを消費するか、実際にどのくらいのエネルギーが摂取できているか、栄養状態はどうかなど、正確な情報を把握しておかなければなりません。

過去の短期および長期宇宙滞在データから、宇宙滞在中の宇宙飛行士のエネルギー摂取量は、ISS栄養摂取基準よりも30~40%ほど低く、一方、エネルギー消費量は地上と同じか上回ることが示されています。

また、微小重力環境で栄養状態と生理機能が、どのように変化するかも知っておかなければなりません。たとえば、放射線や酸化ストレスの度合いが増すと、抗酸化力(活性酸素を抑制する力)の低下や 遺伝子損傷を発症する原因となります。

ISSでの食事メニューは、宇宙飛行士がミッション前に宇宙食の試食セッションに参加して評価を行い、その結果も含めて、宇宙飛行中に必要な栄養摂取量を満たすメニューが計画されます。宇宙滞在中、宇宙飛行士は、1週間に1回程度、食事摂取についてのアンケート(FFQ)に回答します。

これは、宇宙飛行士がどのくらいのエネルギーや、タンパク質・水・ナトリウム・カルシウム・鉄分などの栄養を摂取できているか、ビタミン剤を使用する必要があるかなどを調べるためのものです。また、宇宙飛行士の食事メニューへの感想も記入してもらうようになっています。アンケートの回答は、地上の担当フライトサージャンに報告されます。

ISS船内で食事をする若田宇宙飛行士ら第20次長期滞在クルー

ISS船内で食事をする若田宇宙飛行士ら第20次長期滞在クルー

ISS船内で食事をする野口宇宙飛行士

ISS船内で食事をする野口宇宙飛行士

なおISSでは、標準食、ボーナス食の2種類の宇宙食が提供されており、ロシアのソユーズ宇宙船、プログレス補給船、日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)、米国民間企業のドラゴン補給船、シグナス補給船で運ばれます。

 標準食:アメリカおよびロシアの認証済み宇宙食のことです。アメリカとロシアが半分ずつ用意し、原則16日1セットです。

 ボーナス食:宇宙飛行士の希望に基づいて、ISSに搭載するための検査に合格した市販の食品を搭載できるものです。宇宙飛行士の嗜好品のため公表されません。

   なお、現時点で標準食を製造供給しているのは米国とロシアのみで、ISSの宇宙食は米国製とロシア製が半分ずつです。

   現在の宇宙食は、以下のような種類に分類されています。

  • フリーズドライ食品:スペースシャトルやISSには、調理用装置があり、水かお湯を注入して、戻して食べます。飲料はすべてこのタイプで、宇宙で加水しストローで飲みます。
  • 温度安定化食品:レトルト食品や缶詰などで、そのままか、オーブンで加温して食べます。
  • 自然形態食品:主にお菓子類で、調理せずそのまま食べます。
  • 中間水分食品:主にドライフルーツなどで、調理せずそのまま食べます。
  • 放射線殺菌食品:主として肉類です。米国が提供しています。
  • 生鮮食品:パン類や果物、新鮮野菜などです。
  • 調味料:塩・コショウは液状にして小さい容器に入っています。

長期宇宙保管後の宇宙食の栄養素の変化(Space Food Nutrient)

J-SBROでは、宇宙での微小重力環境で長期間保管した宇宙日本食※を地上に持ち帰り、宇宙放射線などの影響によって、宇宙食中の栄養素が変化しているかどうかを解析する研究も行っています。

宇宙日本食

宇宙日本食とは、JAXAがISSに滞在する宇宙飛行士に供給する宇宙食のことで、JAXAが認証しています。
現在JAXAが認証している宇宙日本食には29食品あり、分類としては前述のボーナス食に該当します。

宇宙日本食は、一般的な日本の家庭の食卓に上がるメニューを宇宙食用にしたもので、日本の伝統的な和食に限定しません。
NASAのISS滞在用の宇宙食は、欧米人嗜好のメニューになっています。

宇宙日本食は、ISSに長期滞在する日本人宇宙飛行士の栄養維持・栄養管理をはじめ、精神的ストレスの低減、能力の向上を図るという観点で開発されることになりました。

宇宙日本食・しょうゆラーメン

宇宙日本食・しょうゆラーメン(出典:JAXA)

宇宙日本食・粉末緑茶

宇宙日本食・粉末緑茶(出典:JAXA)

(特に断りの無い限り、画像は出典:JAXA/NASA)

 
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