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宇宙医学

精神心理支援

最終更新日:2016年6月15日

JAXAでは、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する日本人宇宙飛行士の精神心理支援として、異なる文化の宇宙飛行士たちと共同生活したり、閉鎖された空間内で効率良く働けるような精神心理的健康状態を保つための適応訓練の研究、その適応の評価方法に関する研究に取り組んでいます。

ISSでの共同生活

STS-127クルーと第20次長期滞在クルーの食事風景

STS-127クルーと第20次長期滞在クルーの食事風景(米国、ロシア、カナダ、欧州、日本の宇宙飛行士が集結)

ISSでは、各国からの宇宙飛行士が約半年間にわたり共同生活しています。
宇宙飛行士は、厳しい選抜試験を通過し、ミッションに向けて訓練を積んだ精鋭の集まりですが、生まれ育った場所や文化の異なる者同士が、閉鎖環境において長期間共に生活するわけですから、精神心理面への負担は無いとは言えません。

緊急時の対応訓練を行う古川宇宙飛行士ら第28次/第29次長期滞在クルー

緊急時の対応訓練を行う古川宇宙飛行士ら第28次/第29次長期滞在クルー

そもそも宇宙飛行士は、精神的ストレスでパニックにならないような人や、リーダーシップを発揮できる人が選抜されます。しかし、軌道上でのミッションの達成にはチーム力が不可欠であり、そこで要求されるリーダーシップは一様ではありません。
例えば、とても優秀なAという人とBという人がいたとしても優秀なチームになるとは限らず、お互いに足を引っ張ってしまうこともあります。ですから、リーダーシップだけでなくフォロワーシップや、また、どうすればストレスを解消できるかについてより良く理解してもらうことによって、素晴らしいチームを作ることができます。
精神心理的に理想的なチームを組むことは簡単なことではありませんが、ミッションの成功のためには、重要な要素のひとつです。

ISSでのストレス

長期間宇宙で暮らす宇宙飛行士のストレスとして、次の3つが挙げられます。

  • 地上と隔絶した環境で過ごす孤独感
  • 異なる文化の人々と毎日顔を突き合わせて暮らす対人関係上のストレス
  • 危険な環境で過ごす緊張感

これらのストレスは、宇宙飛行士の精神作業能力(判断力、集中力など)、感情(不安、抑鬱など)、精神機能(神経疲労、不眠など)、動機付け(動機付け、モラルなど)、社会性(引きこもり、敵意など)に大きく影響するものです。
宇宙滞在におけるストレス要因としてまず思い浮かぶのは、閉鎖環境での共同生活による心理的ストレスですが、ストレス要因はそれだけではありません。

例えば、ISSのシステムや装置類に不具合が生じてトラブルシュートが必要になった場合などは、宇宙飛行士の作業は大変忙しくなります。地上においては簡単に修理できるものでも、修理工具などが限られている宇宙では、宇宙飛行士の大きな肉体的精神的負担となることもあります。
また、ロボットアーム運用は、正確な操作が要求されるものですが、複数のロボットアームを使用してひとつの作業を行う場合などは、ロボットアームを操作する人、ロボットアームの動きを目で確認する人など、宇宙飛行士同士の連携を要します。

ISSのロボットアーム(SSRMS)から「きぼう」ロボットアーム(JEMRMS)へHTVの曝露パレットを受け渡す様子

ISSのロボットアーム(SSRMS)から「きぼう」ロボットアーム(JEMRMS)へHTVの曝露パレットを受け渡す様子

SSRMSからHTVの曝露パレットを受け取るため、JEMRMSを操作する第20次長期滞在クルー

SSRMSからHTVの曝露パレットを受け取るため、JEMRMSを操作する第20次長期滞在クルー

米露の有人宇宙船や、日米露の補給船がISSにドッキングする時には、睡眠時間をずらして調整する必要もあります。
また、半年も宇宙に滞在していると、時に単調さや、慣れ、何もすることがない時間が宇宙飛行士の大きな精神的ストレスとなることもあると言います。

ISSに滞在する日本人宇宙飛行士の精神心理支援(リラクゼーションなど)

JAXAは、軌道上で任務に就く日本人宇宙飛行士のストレスを緩和し、個人の趣味などの嗜好を満たすことを目的として、以下を実施しています。

    ①テレビ電話による面談
    ②スケジュール分析、調整による疲労の軽減
    ③コミュニケーション手段の提供
    ④情報の提供
    ⑤物品の提供

①テレビ電話による面談

宇宙飛行士の心理状況は、作業能率や睡眠へも影響し、ミッション成功への大きな鍵ともなります。
ISSでは、精神心理対策の一環として、宇宙飛行士とのプライベートな心理面談を行い、また定期的に家族とテレビ電話をする時間を設けることで、宇宙飛行士の支援を行っています

  • 家族・友人と行うもの(Private Family Conference: PFC)
       毎週に15分程度実施
  • 精神心理担当者と行うもの(Private Psychological Conference: PPC)
       2週間に1回、15分程度実施

②スケジュール分析、調整による疲労の軽減

軌道上の宇宙飛行士は、週5日働いています。1日6.5時間の業務に、2.5時間ほどの運動時間を加えた約9時間がISSにおける標準の作業時間です。
基本的には土日は休日とされていますが、土曜日は清掃やその他の雑務もあります。また、ミッション運用におけるイベント時(船外活動、有人宇宙船や補給船などのドッキング時など)には、睡眠時間のシフトが必要となることもあります。
軌道上の宇宙飛行士のスケジュール作成の際には、宇宙飛行士に無理がないように、以下の分析や調整が行われます。

  • 作業時間は適正か?
  • 作業と休息のバランスは取れているか?
  • 休日はきちんと取れているか?
  • 睡眠時間のシフトに無理がないか?
  • 睡眠はきちんと取れているか?

③コミュニケーション手段の提供

アマチュア無線を行う若田宇宙飛行士

アマチュア無線を行う若田宇宙飛行士

閉鎖隔離環境による孤独感を解消するために以下のコミュニケーション手段が提供されています。

  • 日本語メール、インターネット環境の提供
  • インターネット電話
  • アマチュア無線
  • テレビ電話

④情報の提供

同じく隔離感の緩和を目的として、以下の情報提供を行っています。

  • 家族からの写真・ビデオメッセージ
  • ニュース等のアップリンク

⑤物品の提供

クルーの個室

クルーの個室

個人の嗜好の満足感の有無によるストレスの低減のために、以下の物品提供を行っています。個人の嗜好品も提供されます。

  • 個人用精神心理物品の提供・追加
      ソユーズ宇宙船で飛行の場合1.5Kg程度(スペースシャトル時代は5kg
  • ジェネリックライブラリーの提供・更新
      宇宙飛行士が共用できるビデオや本、CDなどを提供します。
  • 宇宙日本食の提供
      食べなれた食事を提供します。

飛行後の日本人宇宙飛行士の精神心理ケア

長期の宇宙飛行から帰ってきた宇宙飛行士は、それぞれ飛行前の状態へと復帰しなければなりません。
しかし、宇宙から帰還した宇宙飛行士は、燃え尽き症候群や、地球を離れたことによる価値観や人生観の変化、有名になったことによる社会的役割の突然の変化、帰還後の報告会やセレモニー参加による多忙など、さまざまな精神心理的な負荷・重圧に耐えなければなりません。

そのため飛行後の精神心理ケアも重要となります。JAXAの担当者は飛行後にも定期的に面談を行うとともに、以降のミッションをより快適にするために宇宙飛行士やその家族から聞き取りを行ってプログラムに反映します。

若田宇宙飛行士ミッション報告会の様子

若田宇宙飛行士ミッション報告会の様子(出典:JAXA)

(特に断りの無い限り、画像は出典:JAXA/NASA)

 
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