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宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター
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宇宙医学

有人宇宙技術部門宇宙飛行士運用技術ユニット
宇宙飛行士健康管理グループ
研究開発員

金子 祐樹



生理的対策担当(J-ASCR)

神山 慶人

日本でのリハビリを実現するにあたり、苦労した点はありますか?

メディシンボールを用いた運動を行う大西宇宙飛行士(出典:JAXA)

金子研究開発員:施設・設備の準備が大変でした。バランスを回復することを目的としたファンクショナル・トレーニングでは天井の高さを含め広いスペースが必要になること、床がフラットであることなど考慮する点がいくつかあり、場所の選定は大変でした。
また運動する時には足への負担も考える必要があるため、床材の選定にもこだわりました。硬さの違う材質のものを交互に組み込むことで、足に対するインパクトや衝撃を吸収し、怪我をしにくいような、最適な硬さのマットを開発しました。

神山トレーナー:リハビリを実現するにあたって一時帰国する際に審査会があり、総合的に判断して帰れるか否かという結果を出す必要がありました。人間の体の機能なので、例えば1箇所が劣っていても、別の箇所が優れているから問題ないというように補完もできるのですが、判断基準としてそういったところを理解してもらうことが大変でした。

ファンクショナル・トレーニング(バランスを回復することを目的としたトレーニング)用のリハビリ設備を新設しましたが、工夫した点は何ですか?

神山トレーナー:床材、天井の高さ、面積がある程度NASAと同等になるようにし、リハビリの途中で環境が大きく変わらないよう、NASAの施設を基に選定しました。

ファンクショナル・トレーニングで使用している運動器具(メディシンボールやバランスボールなど)は、NASAでも使用しているものですか?一般的に使用されているものですか?

バランスボードとメディシンボールを用いた運動を行う大西宇宙飛行士(出典:JAXA)

神山トレーナー:一般的なリハビリにも、メディシンボールやバランスボールなどは使用されており、なおかつNASAでも使用されています。


今後取り入れたい運動器具はありますか?

神山トレーナー:プールとジャグジーは取り入れたいです。ジャグジーは、終わった後に使うと筋肉がほぐれるということもありますが、精神的な面が大きいと思っています。
運動器具としては、NASAがリハビリのために開発したAlterG(アルターG)という、空気圧を利用して体を浮かせた状態でランニングできるトレッドミルがあります。メリットは、ランニングする時に衝撃がないため腰や足首の関節への負担が減らせるということ、機器に体の一部を固定し吊り上げられた状態でランニングするため転倒の恐れがないことが挙げられます。欧州宇宙機関(ESA)は直接自国へ帰国するダイレクトリターンを行っており、AlterGを導入しています。

リハビリのメニューはどのような構成になっていますか?

リハビリの基本的な構成

神山トレーナー:基本的な構成としては、ウォーミングアップ(有酸素運動、動的ストレッチ、歩行訓練)、メインの運動、体幹運動、静的ストレッチの流れとなっていて、メインの運動は1日交替で行います。
なぜ1日交替で行うかというと、ある程度負荷が高い筋トレを毎日行うと逆に筋力低下が起きてしまうからです。回復しないうちに筋肉を使うと、疲労がたまり筋力低下が起きてしまうので、それを防ぐために1日交替で行います。
また、帰還後は地上での再適用があるのでいろいろな刺激が必要になります。筋トレだけでなく、ボールを使ったり、ラダーでステップを踏んだりと、色々な刺激を与えることにより、日常生活に戻り、飛行前の感覚を取り戻していくことができます。

JAXA独自のリハビリメニューはありますか?

神山トレーナー:基本的にはNASAで行っている運動を一部アレンジして行っています。NASAの方が経験豊富なので、知識やノウハウを吸収することが一番経験則に基づいているので、取り入れつつ、宇宙飛行士の個人特性に合わせてメニューを組み立てています。また、NASAとJAXAの施設面で異なる箇所については、工夫して自分たちでアレンジして行っています。

リハビリメニューを組み立てる上で、気を付けた点、苦労した点は何ですか?

インタビューに答える神山トレーナー(出典:JAXA)

神山トレーナー:気を付けた点は、宇宙飛行士の体調です。その日のコンディショニングが一番重要になってくるので、ウォーミングアップの動きを見ながら判断し、実際に種目を行ってもらった上で、その日の運動を決めることもありました。ある程度運動のイメージはあり、ボールの投げ方にしても3~4種類くらい候補があるのですが、最初の種目を実際に行ってもらった様子を見てどの運動を行うか決めていました。
苦労した点は、帰還後には様々な医学検査があり、計測機器を装着したまま運動することや運動制約が出てくる検査があるところです。

今後加えていく必要があると考えている運動はありますか?

神山トレーナー:柔軟性を向上させるストレッチは重要だと思っていますが、軌道上ではなかなか時間が取れないということや体を固定するのに工夫がいることなど施設的な問題もあると思います。
軌道上では姿勢を維持するための抗重力筋を使わないので、腰や背中の筋肉を使わなくなり、長座体前屈など飛行前より柔軟性が衰えて地上に帰還します。柔軟性を保つことにより、腰痛の軽減や期間を短くすることができるかもしれないと推測されるため、今後検討できればと思っています。
また、運動時間が長いので、それを何とか減らせないかというのも難しい大きな課題だと思います。

軌道上では遅筋が衰えるということですが、どういうことか教えてください。

ダンベルで筋力トレーニングを行う大西宇宙飛行士(出典:JAXA)

神山トレーナー:軌道上では姿勢を維持するための抗重力筋を使わないので、動作がゆっくりした時に使われる遅筋が速筋化してしまうと言われており、例えば、マラソンのために使うような筋肉(遅筋)が、100m走に使うような筋肉(速筋)になるような、遅筋線維の速筋線維化が起こると言われています。
軌道上では姿勢を維持しないので抗重力筋を使いませんが、地上では立っている姿勢を維持するだけでも、足首や太もも、お尻、腰、背中の筋肉などを絶えず使用しているので、そういった筋肉は遅筋になります。軌道上では遅筋が必要なく、運動の時しか筋肉を使わないので体は不要なものだと判断し、パッっと瞬間的に動かすだけの速筋線維化が起こるということです。

今後、リハビリ施設をこうしたいなど、実際使用されての改善点はありますか?

インタビューに答える金子研究開発員(出典:JAXA)

金子研究開発員:直接日本へ帰国するダイレクトリターンを行うなら、今の施設をフル活用してジムとして使用可能です。
今の宇宙飛行士のジムには必要な器具は揃えてありますが、設置見直しや機器を増やしていきたいという思いもありますので、もっと広い施設を作って使えたらなと思います。

神山トレーナー:安全管理上、宇宙飛行士の利便性を考慮し、専用の建物一棟で運動できる施設とした方がいいと思っています。
やはり専用の建物の中で、プールもあり、ファンクショナル・トレーニングのできるような天井の高いスペースもあり、運動機器がありという状態が理想的だと思います。

 
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