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これまでに得られた成果

高品質タンパク質結晶生成実験

最終更新日:2019年4月 1日

多くのタンパク質で地上より高品質の結晶生成に成功、薬剤候補化合物との結合状態解明も多数

ロシアのサービスモジュールの利用から、2018年までに30回の宇宙実験が実施されました。長年にわたる経験・技術検討や、地上での試料性状確認・改善、結晶化溶液の最適化などにより、地上よりも高品質な結晶が多数得られています(表1に抜粋)。JAXAとの共同研究開始時には構造が解けていなかったもののうち11種類について構造解明できた実績があります。また、タンパク質と化合物との結合状態が初めて分かったものは20種類以上あります。きぼう運用開始後の16回分の実験結果を図1に示します。また、図に載っていない成果として、宇宙実験により初めてデータ収集をしたサンプルが12種類あります。主な成果をご紹介します。

図1 きぼう運用開始後、計16回の宇宙実験結果(2009年7月~2018年10月)

①デュシェンヌ型筋ジストロフィーの進行に関与するタンパク質

裏出良博(筑波大学 教授)、有竹浩介(第一薬科大学 教授)

筋ジストロフィーは筋萎縮と筋力低下が進行していく遺伝性筋疾患で、未だ根本的な治療方法が確立していない難病です。宇宙実験で得られた結晶から、この病気に関連するタンパク質と、薬の開発に重要な化合物との結合状態を詳細に確認できました(下図)。研究チームでは、宇宙実験の結果を用いて、製薬企業との協力により筋ジストロフィーに有効な薬物候補化合物を開発し、有効性や毒性の評価を実施しています。

図2 筋ジストロフィーの進行に関与するタンパク質の結晶
(出典:筑波大学/第一薬科大学/丸和栄養食品/JAXA)

②リウマチや心臓肥大、肝細胞がんなどに関与するタンパク質

木下誉富(大阪府立大学 教授)

キナーゼは、細胞内の情報伝達を担う重要なタンパク質(リン酸化酵素)で、細胞の増殖や分化、細胞死などを通じて複雑な生体機能を制御しています。「きぼう」における宇宙実験によって高品質結晶化に成功した「MAP2K7」は、ストレス応答や炎症反応を制御するキナーゼで、リウマチや心臓肥大、肝細胞がんなどの治療薬の標的分子となっています。これまでに地上実験から得られた結晶では最高分解能が2.1Åでしたが、4℃の宇宙実験によって1.3Åで構造を決定することに成功し、医薬品の開発に向けた重要な知見が得られました。
Biochem. Biophys. Res. Commun. 493 (2017) 313-317.

新しい医薬品のデザインにつながる宇宙実験成果を紹介 ~細胞内の情報伝達を担うタンパク質"キナーゼ"の構造を解明~

図3 MAP2K7の結晶と立体構造(出典:大阪府立大学/JAXA)

③多剤耐性菌・歯周病菌の生育に重要なペプチド分解酵素

阪本泰光(岩手医科大学 准教授)

様々な抗生物質が効かない多剤耐性菌は、院内感染症の原因のひとつであり、その治療は困難です。多剤耐性菌に対しては、これまでの抗生物質とは異なるメカニズムの薬が必要となります。宇宙実験により多剤耐性菌・歯周病菌に対する新たな抗菌薬のターゲットとなる可能性のある酵素の立体構造を決定し、この酵素の触媒メカニズムの理解に大きく貢献しました。現在、今回の成果を基に多剤耐性菌等の病原性細菌に効果のある新規抗菌薬の開発を進めています。

[プレスリリース]国際宇宙ステーションでのタンパク質結晶生成実験結果から、タンパク質やペプチドを栄養源とする歯周病原因菌の生育に重要なペプチド分解酵素DPP11の立体構造および基質認識機構を解明 ~新たな歯周病治療薬の開発に期待~
[プレスリリース]国際宇宙ステーションでのタンパク質結晶生成実験結果から、世界で初めて、多剤耐性菌・歯周病菌の生育に重要なファミリーS46ペプチダーゼに属する酵素の立体構造および基質認識機構を解明 ~新たな抗菌薬開発に期待~

図4 多剤耐性菌・歯周病菌の生育に重要なペプチド分解酵素の結晶と立体構造
(出典:岩手医科大学)

宇宙実験による結晶品質向上事例

表1
研究代表者所属 研究代表者 タンパク質名略称 宇宙実験前
最高分解能
(Å)
宇宙実験
最高分解能
(Å)
岩手医科大学 阪本 泰光 准教授 DPP11-N 3.50 1.49
岩手医科大学 阪本 泰光 准教授 DAP BII-1 3.40 1.87
岩手医科大学 阪本 泰光 准教授 DPP11-HDS 1.56 1.48
大阪大学 中川 敦史 教授 H-protein 0.88 0.79
大阪大学 野尻 正樹 講師 IsoNHase 1.10 0.80
大阪府立大学 木下 誉富 教授 MAP2K7 2.10 1.30
香川大学 吉田 裕美 准教授 L-RhI 1.97 1.35
香川大学 吉田 裕美 准教授 L-RI 1.93 1.60
京都大学 裏出 令子 教授 ER-60 2.20 1.40
京都大学 三木 邦夫 教授 V1Hb 5.60 4.10
京都府立大学 織田 昌幸 教授 Grb2 SH2 1.35 1.00
京都府立大学 渡部 邦彦 教授 AM-1 peptidase 1.80 1.38
熊本大学 山縣 ゆり子 教授 hMTH1 1.80 0.97
熊本大学 山縣 ゆり子 教授 MutT 1.49 1.25
静岡県立大学 橋本 博 教授 XEG 1.90 1.60
中央大学 小松 晃之 教授 Hb-chemical 1.75 1.46
中央大学 小松 晃之 教授 BHb 1.75 1.34
中央大学 小松 晃之 教授 rFSA 8.20 3.40
筑波大学 裏出 良博 教授 TcOYE-1 1.70 1.10
筑波大学 裏出 良博 教授 L-PGDS 1.30 1.00
筑波大学 裏出 良博 教授 H-PGDS 1.80 1.00
東京大学 五十嵐 圭日子 准教授 PcCel6A 1.11 0.85
東京大学 五十嵐 圭日子 准教授 PcCel45A 0.90 0.68
東北大学 小川 智久 准教授 PPL3 1.80 1.40
東北大学 小川 智久 准教授 PPL3A 1.80 1.40
東北大学 小川 智久 准教授 PPL3B 1.80 1.20
東北大学 小川 智久 准教授 PPL3C 1.80 1.70
長崎大学 北 潔 教授 ATC 1.60 1.40
長崎大学 北 潔 教授 TAO 3.40 2.65
兵庫医療大学 中野 博明 准教授 Pz peptidase A 2.00 1.48
兵庫県立大学 樋口 芳樹 教授 NYLCM1 2.00 1.03
兵庫県立大学 樋口 芳樹 教授 GLN 1.60 1.00
福井県立大学 木元 久 教授 ChiW-CD 2.90 2.10
名城大学 志水 元亨 助教 AoMan 134A 2.30 1.48
理化学研究所 菅原 道泰 特別研究員 xylanase 0.97 0.91
量子科学技術研究開発機構 平野 優 主幹研究員 b5R-red 1.68 1.40
JAXA 木平 清人 研究開発員 GFP 2.80 2.00
JIRCAS 韮澤 悟 主任研究員 PAE 3.50 2.06
民間利用 非公開 非公開 1.20 0.93
民間利用 非公開 非公開 2.70 2.10
民間利用 非公開 非公開 3.00 2.60
民間利用 非公開 非公開 3.50 2.40
民間利用 非公開 非公開 3.20 2.60

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