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宇宙実験サクッと解説:Microbe編


宇宙実験調査団のピカルが微生物実験を大調査!

実験提案者の槇村先生&那須先生とも
仲良しの物知りハカセに聞きました。

ハカセ

ピカル

ピカル:

こんにちは、ハカセ。 今日はMicrobe実験の勉強に来ました。 まず、この実験でどんなことを調べるのか教えてください。

ハカセ:

宇宙ステーションの内部には、地上と同じようにさまざまな微生物が住んでいることがわかっておるのじゃが、「きぼう」のような新品のモジュールにどんな微生物たちが、どのように住みはじめるのかはわかっておらん。 微生物が微小重力にどう適応するのか、微生物同士でどのような影響をおよぼしあっているのか、また宇宙飛行士や機械を微生物から守るためにはどうすればよいのかを調べるのじゃ。

ピカル:

宇宙ステーションは、テレビで見るとピカピカできれいに見えますけど。 そもそも過酷な環境の宇宙でバイキンがすめるのですか?

ハカセ:

「バイキン」とは、もともとわしらの身の回りに生える「カビ」のことをさしていたのじゃが、今ではヒトにとって不都合な微生物の総称となっておる。 宇宙ステーションの外は生き物にとって相当過酷じゃが、中は宇宙飛行士が安全かつ快適に住める環境となっておるのは知っているじゃろう。 ヒトにとって快適な環境は、ヒトが暮らす環境にすむ微生物たちにとっても当然快適なはずじゃ。

ピカル:

宇宙に行くとバイキンが突然変異して、次々にヒトに襲いかかるなんてことはないのですか?

ハカセ:

ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。 それはキミ、ちとSF映画の観すぎじゃな。 宇宙ステーションなどの微小重力の環境では、微生物も少し性質が変わるらしいことはわかっておるが、ふつうに身の回りにいる微生物があぶないものに変身することはないようじゃ。 しかし、微小重力環境では、カビの胞子や細菌が空中を浮遊するなど、地上と比べてヒトと微生物との接し方に違いが生じるはずじゃから、宇宙ステーション内の微生物が、特殊な感染やアレルギーの原因となる可能性はあるじゃろうな。



図1 ISSの内部パネルに発生した汚染
提供: NASA (http://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/experiments/SWAB1.jpg


ピカル:

なるほど。 注意深くモニターしていく必要があるってことですね。 ところでハカセ、微生物って小さな虫みたいなものですか。

ハカセ:

「微生物」とは、ほとんど目で見えない大きさの生物の総称じゃ。 分類学的には、大腸菌や納豆菌などの細菌(バクテリア)、カビやキノコ、パン酵母などの真菌、アメーバやゾウリムシなどの原生動物、水槽の中に生える「も」などの藻類にはじまって、小さな動物の仲間までが含まれておる。

ピカル:

へえ〜、知りませんでした。 そういえば、宇宙ステーションにはお風呂やシャワーも無いって聞きましたけど、ということは、そこらじゅうバイキンだらけなんですか。

ハカセ:

もともと、ヒトの体はバイキンだらけじゃ。 適切なバイキン、いや、正確には常在菌がヒトの健康を守っているのを忘れてはいかん。 キミが健康でいられるのは、体中の善玉菌が悪玉菌を退治してくれているからなのじゃ。

ピカル:

それじゃあ、インフルエンザウイルスとか水虫菌は?

ハカセ:

それはどちらも常在菌ではないのう。 そもそもインフルエンザウイルスは菌ではない。 それはさておき、インフルエンザウイルスのような、感染力が強く症状も重いものが宇宙ステーションに持ち込まれることはないじゃろう。 じゃが、水虫菌はヒトに大変よくなじんだカビの仲間じゃから、自分が水虫と気づかなかった宇宙飛行士が持ち込んだ可能性はあるじゃろう。 しかし、微小重力の宇宙ステーションのなかで、ヒトの足から離れた水虫菌はどうなるんじゃろうな? 地上ならゴミやほこりは床に落ちるから他のヒトの足の裏にくっついて感染することもあるのじゃが、重力がないだけに空気中にただようことになるじゃろう。 虫歯菌など、ほかの微生物も同じじゃ。

ピカル:

虫歯菌が、顔の周りを飛んでいるのを想像すると怖いですね。

ハカセ:

虫歯菌は、普通に口の中にいるのじゃから、よほど大量に顔の周りにいない限り問題はなかろう。 そもそも、口のなかにも、食べ物のなかにも微生物はおるぞ。

ピカル:

食べ物のなかの微生物って、ヨーグルトとか納豆菌のことですか。

ハカセ:

もちろん、ヨーグルトも納豆も微生物を利用してつくっておるから、そのなかに微生物は含まれておる。 じゃが、普通に食べている食べ物も無菌ではないのじゃ。 感染や中毒を起こさない程度の菌は普通含まれておるし、その程度のものはまったく問題ない。 そうでなければ、ヒトは今まで生き延びてこられなかったじゃろう。



図2 飲食物中の細菌の例

細菌のほとんどは無害。 上図はナチュラルミネラルウォーター中の細菌の蛍光顕微鏡写真。
(詳しくは那須先生のインタビューページへ)

ピカル:

あんまり神経質になるのもよくないってことですね。 ところでハカセ、どうやって目に見えない微生物をみつけるのですか。

ハカセ:

微生物をみつけるにはいくつかの方法があるのじゃ。 たとえば、宇宙ステーションの中でもヒトが良く触るところなど、調べたいところからサンプルをとったとしよう。 一般的には、その微生物が生える培地を使って培養するのじゃが、培養できない菌の場合は、染色して顕微鏡で見つける方法や、微生物の成分を分析して見つける方法も使われるのう。 じゃが、今では微生物の遺伝子を調べれば比較的簡単にどんな微生物がどの位いるのかわかるから、遺伝子解析法がよく使われておるな。



図3 真菌の例(左から光学顕微鏡画像、実体顕微鏡画像、マクロ画像)

1行目:アスペルギルス・フミガタス
2行目:アスペルギルス・ニガー
3行目:アスペルギルス・フラバス

ピカル:

どうして、人間がよく触るところを調べるのですか。

ハカセ:

さっきも言ったようにヒトの体はもともとバイキンだらけであって、宇宙ステーションの中の微生物も宇宙飛行士が持ち込んだものと考えられておる。 微生物の「発生源」であるヒトが良く触れるところを、ほとんど触れないところと併せて調べることで、環境中の微生物のあり方がわかるのじゃ。

ピカル:

人間のからだの中にも外側にも微生物がいっぱいいるとしたら、次は人間も調べないといけませんね。

ハカセ:

そのとおりじゃ。 次は環境の微生物とヒトの微生物との関係を調べる実験(Myco)が行われる予定じゃ。

ピカル:

微生物って僕たちの生活に身近なものだとわかって、なんだか親近感がわいてきました。 どんな結果がでてくるのか、今からとっても楽しみです。
ハカセ、今日はどうもありがとうございました。 次回もまたよろしくお願いします。


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