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最終更新日:2014年12月18日

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以前の研究との関係を引用論文とともに紹介します。本文ではCERISE実験を紹介しましたが、これまでに線虫を用いた宇宙実験は複数実施されています。

これまでの宇宙実験では、宇宙放射線による遺伝子の変異や損傷を調べた実験は多くなされています。これらの結果をみると、ある種ランダムな変異は観察されましたが、その変異が何らかの選択的な方向性を持って、宇宙環境下で適応する上で優位に働くような「選択圧」、つまり宇宙での変化の方向性があるような進化的な研究は未だなされていません。JAXAと富山大学が共同で行ったシロイヌナズナを用いた世代交代の宇宙実験も、近年、成功裏に終わりましたが、種から発芽させて次の種を収穫することはできましたが、ランダムに生じる変異やエピジェネティックスを含めた変化の解析は今後に期待され、より長期間の世代交代を行った場合、微小重力に対する生物の適応応答の選択圧が働く可能性は今後の大きな課題といえます。

JAXAと代表研究者らの研究チームはこれまでに国際線虫宇宙実験(International C. elegans Space Experiment 1: ICE-First 2004)に参加し、モデル生物の1つである線虫を用いて、「宇宙環境下でも地上と同様にDNA損傷時のアポトーシス(プログラムされた細胞死)が実行できること」を世界に先駆けて検証しました(Higashitani et al. Apoptosis 10: 949-954. 2005)。また、「微小重力の宇宙環境下で線虫の筋タンパク関連遺伝子群の遺伝子発現低下、ならびに最終的なタンパク質の発現低下が生じること」を明らかにしました。その結果から、線虫を用いる実験系は、微小重力下で宇宙飛行士に生じる筋萎縮の発生を解明するための1つのモデル系になる可能性があることなどを報告してきました(Higashibata et al. J Exp Biol. 209: 3209-3218. 2006)。これらのICE-First実験は、約10日間の宇宙フライトであり、1〜2世代程度の世代交代がなされていました。つまり、線虫を用いることによって、宇宙環境下ではあまり変化しない現象「生殖細胞系におけるアポトーシス活性」や、わずかな期間でも大きく変化する現象「筋タンパク質の遺伝子発現量・タンパク質発現量」など、顕著な違いを捉えることができたのです。さらに、ICE-Firstに続き、JAXAと代表研究者らの研究チームは、宇宙環境ストレスによる分子シグナル伝達経路の解明とRNAi法の宇宙における検証を目的としたライフサイエンス国際公募選定テーマ「線虫Cエレガンスの宇宙環境におけるRNA干渉とタンパク質リン酸化」(C. elegans RNA Interference Space Experiment: CERISE)の実験を2009年に実施し、宇宙の微小重力環境でもRNAiが有効に機能すること、ならびに「筋タンパク質の遺伝子発現量・タンパク質発現量」が低下する再現性を確認しました。

2014年12月以降に実施する宇宙実験「Epigenetics」はこれまでの線虫を用いた実験を発展させ、世代交代数を増やし、線虫の変異体も使うことが大きな特徴です。

Written By Sachiko Yano


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