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宇宙実験調査団のピカルが宇宙放射線実験を大調査!

実験提案者の馬嶋先生に
Neuro Rad実験のキホンについて聞きました。

ピカル:

馬嶋先生、こんにちは。 今日は、Neuro Rad実験の取材にきました。 この実験ではヒトの神経細胞を使うと聞いたんですが、そもそも神経細胞ってなんですか?

馬嶋先生:

こんにちは、ピカル君。 その質問に答える前に、まずヒトの体のなりたちから説明してゆきましょうか。 ヒトの体は、細胞と呼ばれる、目に見えないほど小さな単位が集まって作られています。 同じような形、同じような働きをもった細胞が集まって組織を作り、その組織が集まって器官(心臓、肺、肝臓など)を作っています。 組織や器官が集まったものがヒトの体なのです。 神経とは、「見たり」、「聞いたり」、「触ったり」、「においを嗅いだり」、「味わったり」したことを脳や脊髄に伝えるとともに、「考えたり」、「記憶したり」します。 そして、脳や脊髄でその情報を処理して、体の各部分の筋肉などに、このように動きなさいといった指令を伝えたりもします。 神経細胞とは、その神経の組織を作っている細胞のことなんです。


図1 神経細胞

ピカル:

へえ〜、神経細胞ってものすごく重要な役割を果たしているんですね。 僕が鉛筆を持ったり、走ったりできるのも、神経細胞が働いてくれるおかげなのか。 ところで、馬嶋先生はどうして神経細胞を宇宙に持っていこうと思ったんですか?

馬嶋先生:

ピカル君も、宇宙実験についてよく勉強しているから知っていると思いますが、宇宙空間では宇宙放射線と呼ばれる強烈な放射線が飛び交っています。 宇宙で浴びる放射線量を、地上で浴びるそれとくらべると、なんと約100倍! 大変な量なんです。 神経細胞は、いわば体の司令塔のようなたいへん重要な役割を果たしているため、まずはこの細胞を宇宙に持ってゆき、ダメージの度合いをしっかり確認しておきたいんです。

ピカル:

なるほど、そういう狙いがあったんですね。 納得しました。 ところで、ちょっと心配になったんですけど、細胞って放射線に当たると死んじゃうんですか?

馬嶋先生:

放射線を浴びることを被ばくというんだけど、細胞が死んでしまうかどうかは、この放射線の被ばく量によります。 細胞の中には細胞核があって、ここには親から子へ遺伝する大事な遺伝情報、DNAというものが入っています。 細胞に放射線を当てると、このDNAが傷つきます。 多少の傷であれば、細胞は傷ついたDNAを修復してしまうんですが、何らかの理由で正しく修復が行われないと、元の細胞とは違った特徴を持つ細胞になってそれが遺伝したり(突然変異)、がん細胞ができてしまうこともあります。 一方、大量の放射線に当たって大きな傷がついた時などは、修復が間に合わずに死んでしまいます。 ちなみに、放射線治療というのは、こうした放射線の働きを逆手にとって、がん細胞を殺してやっつけてしまおうというものです。

ピカル:

なるほど、放射線は害にもなるけど、役にも立つというわけですね。

馬嶋先生:

そうそう。 ピカルくんも、今日鹿児島に来るときに羽田空港で荷物チェックを受けたでしょう。 あれにも弱い放射線が使われているんですよ。 放射線は目に見えないし、味も匂いもないので、日常生活でその存在を意識することはありませんが、僕らは、宇宙や大地、空気、食べ物などを通して、知らず知らずのうちに放射線を浴びているんです。 日常生活で浴びる放射線は、ヒトに害をおよぼすような量ではないので、むやみにこわがる必要はありませんよ。

ピカル:

それを聞いて安心しました。 それで、神経細胞に宇宙放射線があたったことの影響は、遺伝子に傷がついているかどうかや、どのくらいの細胞が死んだかで調べるんですか?

馬嶋先生:

そうですね。 まず放射線がどんな遺伝子に影響を及ぼしているかを網羅的に調べます。 それから、細胞死に関しては、ミトコンドリアによるアポトーシス制御に着目します。

ピカル:

馬嶋先生、ミトコンドリアとかアポトーシスとか、さっぱり意味がわからないんですけど・・・。

馬嶋先生:

ごめん、ごめん。 ミトコンドリアというのは、細胞の中にある小器官と呼ばれるもののひとつです。 酸素を利用して、生き物が生きていくのに必要なエネルギーを作っている大事な器官なんですよ。


図2 細胞の模式図

ピカル:

そうなんですか。 酸素は、生き物が窒息しないように、呼吸のためだけに使ってると思ってました。 細胞の中でも酸素を使ってたんですね。

馬嶋先生:

ええ、呼吸(外呼吸)によって体外から取り入れた酸素は、肺の血管から出発して全身の細胞に届けられるんです。 細胞の中では、ミトコンドリアが酸素の到着を待ち構えていて、酸素とブドウ糖を使ってエネルギーを作ります。 細胞の中でミトコンドリアが酸素を使ってエネルギーを作るプロセスも、実は「呼吸(内呼吸)」と呼ぶんですよ。 このミトコンドリアが、エネルギー生産の他にも、傷ついた細胞をわざと死なせる「アポトーシス」と呼ばれる現象にも深く関わっていることが明らかになってきたんです。

ピカル:

ミトコンドリアは働き者なんですね。 アポトーシスという現象は、何かの理由で傷ついた細胞の除去に使われているわけですね。

馬嶋先生:

そうなんです。 生き物が自分の体を健康に保つために、積極的に使う仕組みです。 除去しておけば、腫瘍などになりにくいんです。 実は、傷ついた細胞の除去以外でもアポトーシスはみられますが、それについてはこちらを読んでおいてくださいね。

ピカル:

先生、もしかすると、放射線で傷ついた細胞もアポトーシスで除去されるわけでしょうか?

馬嶋先生:

ええ、放射線の量によっては、そうなるのではないかと思っています。 今回の実験では、宇宙で神経細胞に放射線が当たったときに、地上と同じようなメカニズムでミトコンドリアが関与してアポトーシスが起こるのかどうか、そのあたりを詳しく調べたいと思っているんです。

ピカル:

なるほど、よくわかりました! 体の司令塔である神経細胞に、放射線が当たるとどうなるか、それを遺伝子のレベルで詳しく調べるのと同時に、細胞のレベルでも注目して、アポトーシスが起こるかどうか、地上と同じ仕組みで起こるかどうかを調べるわけですね。

馬嶋先生:

さすがピカルくん、すばらしい理解力ですね。 宇宙飛行士の放射線防護や健康管理のためにも、放射線による影響を詳しく調べることは重要ですから、宇宙実験を楽しみにしています。

ピカル:

ぼくも楽しみです! 今日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

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