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スペシャルインタビュー vol.1


幼い頃、オタマジャクシの変態に興味を抱き発生生物学の道に進んだ。 以来、研究し続けてきたカエルの細胞を、今、宇宙へ打ち上げる。

実験について簡単に説明して頂けますか。

「カエルの腎臓と肝臓の細胞を宇宙で培養して、細胞がどんなかたちを作るか、遺伝子レベルでどう変化するかを調べたいと思っています」

先生は長いことカエルを研究対象になさっているとうかがいましたが。

「カエルというのは、研究対象として非常に面白い生き物なんです。 水中から陸上に上がる過程で、腎臓のはたらきをつかさどる細胞とか、色々なものが変化しました。 カエルの細胞を調べれば、今までよくわからなかった進化の過程、言い換えれば、生物が水中から陸上に上がる際にどんな進化を遂げたかがわかるんです」

今回の宇宙実験では、「アフリカツメガエル」を使うそうですね。

「アフリカツメガエルというのは世界的なモデル生物の一つなんです。 我々が使う『A6』という腎臓細胞や『A8』という肝臓細胞は、長い間、継代培養(注1)をしていて、すでに細胞株(注2)として確立しています。 カエルを使うメリットはほかにもあって、たとえば、ヒト細胞の培養には温度とCO2濃度のコントロールが必要ですが、カエルの細胞は一般的に飼育がしやすく、CO2の濃度管理の必要がないうえ、国際宇宙ステーションの室温に近い20℃程度で培養できるんです」

先生はそもそもなぜカエルに興味を持たれたのですか。

「小さい頃から、カエルの卵が親になっていく仕組みに興味があったんです。 春になると卵が生まれて、オタマジャクシからカエルになる。 一日一日、ドラマティックに外見が変わっていくわけです。 それはもう見事で、幼心に自然の神秘とか奥深さに強くひきつけられました。 僕にとってカエルは、小さい頃から慣れ親しんできた身近な存在なんです」

先生にとって、宇宙でカエルの実験をするということは、一つのゴールとも言えそうですね。

「ゴールというより、スタートラインかもしれません。 ご存知のように、生命科学は近年、急速な発達を遂げました。 一昔前なら考えられなかったことですが、分子レベルで生命現象を理解できる時代になったんです。 解析や培養の技術はもとより、細胞を宇宙に持って行くための技術など、色々なものが開発されて、今ようやく、最先端の研究を宇宙で行うことができるようになった、そんなふうに思います」


注1:細胞を培養するとき、その一部を新しい培地に植え継ぐこと。
注2:長期間にわたって体外で維持され、一定の安定した性質をもつに至った細胞のこと。



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