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「きぼう」での実験

宇宙における総合商社として超小型衛星放出事業に取り組む

最終更新日:2019年2月20日

Space BD株式会社
永崎 将利(ながさき まさとし)代表取締役社長


超小型衛星放出事業に取り組む永崎社長(出典:JAXA)


宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「きぼう利用戦略」(2017年8月第2版制定)に基づき、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の利用事業の一部自立化を目指している。2018年2月にはその第一弾として超小型衛星放出事業の事業者を公募した。その事業者として選定された企業の一つが、当時設立後1年にも満たなかったベンチャー企業、Space BD株式会社だ。同社の永崎将利代表取締役社長に、Space BD社設立の経緯や現在の状況、今後の可能性などを聞いた。

チャレンジする人が尊敬される世の中にしたい

Q 御社は2018年5月に国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟での超小型衛星放出事業者に選定されたわけですが、ご自身はもともと、宇宙との関わりをお持ちだったのでしょうか。

永崎 まったく関わりはありませんでした。高校時代、進路を決める時に自分のやりたいことがわからず、選択肢は広いほうがいいと考えて文系を選び、結果として教育学部に進学しました。充実した学生生活でしたが、教師になりたいという強い動機があったわけではなく、仕事に対するビジョンが描けないのが悩みでした。そこで総合商社なら幅広くいろんな選択をしながら働けるのではないかと考え、三井物産に入りました。

入社後は、あまり人気があるとはいえない部署への異動を希望したりもしました。「人が行きたがらないところへ行かなきゃ」という使命感のようなものを感じたりして(笑)。

夢中で働いて好成績をあげることができ、「一生懸命にやれば道は開ける」という自信を持つことができました。その一方で、入社時点では有能だと評価されていたのに伸び悩む人たちのことも目の当たりにして、人の優秀さとは何だろうかと考えさせられました。

独立を決意して退職した後も、自分がやりたいことは何か、という疑問を持ち続けていましたが、答えが出ません。模索するうちに、人の優秀さについて考えた経験から教育事業に力を入れるようになりました。

Q 一口に教育といっても、受験教育もあれば、ビジネスマン向けの人材育成もあります。どのような教育事業に取り組まれたのですか。

永崎 企業向けの研修まで幅広く手がけていましたが、小中学生向けに将来のリーダーを育成する「起業家育成プロジェクト」はユニークな事業であったと思います。やりたいことを探し続けても見つからなかったため、自身の問題意識に従って事業を展開していました。ありがたいことに共感して支えとなってくださる方々も現れました。

しかし、例えば小中学生にしてみれば、「チャレンジ」「夢」といっても必ずしも周囲の大人に理解があるとは限らず、目先の受験勉強のほうが大切だったりするわけですね。子どもたちにとって板挟みの過酷な状況といえます。もっと社会に働きかけるアプローチも必要と痛感したのです。

そこで、私自身が、難題に果敢に挑戦している姿をもって社会や次世代の人たちに作用していこう、チャレンジする人がかっこいいと尊敬される世の中にしよう、と考えるようになりました。

未知数の宇宙開発事業。答えがないのがチャンス

Q その難題というのが宇宙開発だったのですね。

永崎 宇宙というのは多くの人の憧れであり、「チャレンジ」「夢」の象徴ですよね。でも未知のことばかりで、ビジネス、産業としてはまだこれからの分野です。難題への挑戦を考えた時に真っ先に思い浮かんだのが宇宙開発でした。

ただ、それまで宇宙開発に関わったことはありません。情報収集を目的に参加したあるシンポジウムで、アメリカ政府の宇宙開発政策に助言するほどの研究者2名と話ができました。お二人に超小型衛星についての見解をうかがったところ、一人は伸びると予測し、もう一人は慎重な意見で、見解が反対でした。

Q それではリスクが大きすぎる、とはお考えにならなかったのですか。

「宇宙商社」Space BDが取り組む超小型衛星放出事業
(出典:JAXA)

永崎 識者がこぞって太鼓判を押すような分野はある程度、ビジネスの見通しが立っていて、後から参入しても存在感を発揮することは難しい。でも答えがないのはチャンスだ、と考えました。日本の関係者へのヒアリングも重ね、2017年9月に「宇宙商社」Space BDを設立しました(写真)。

顧客が衛星開発に集中できるよう煩雑な事務を代行

永崎 翌年4月には、JAXAの有償利用の枠組みを活用して、東京大学が開発した超小型衛星の打ち上げを受託することができました。有人のISSに超小型衛星を持ち込むわけですから、事故はもちろん、ささいなトラブルも許されません。安全面をはじめ厳密な審査がありますし、大きさの制約も厳格です。さらにロケットの打ち上げに合わせてスケジュール管理もきちんとしなければなりません。そこで東京大学には衛星開発に注力してもらえるよう、事務手続きなどその他の部分を任せていただくことになりました。

Q そうした実績もあり、JAXAの「きぼう」からの超小型衛星放出事業者の公募に名乗りをあげられたのですね。2018年5月に選定された時はどのようにお感じになりましたか。

選定時の喜びを語る永崎社長
(出典:JAXA)

永崎 率直に嬉しかったですね。JAXAからすれば、設立して1年にもならないベンチャー企業を選ぶのは冒険だったと思います。新しいことをやっていこうというJAXAの意気込みが感じられ、皆さんの気持ちに応えたいと考えています。

選定いただいてからは海外でも商談が格段にやりやすくなり、JAXAに対する信頼の大きさを感じます。任せて良かったと思われるように、「きぼう」の商業活用をやりつくすつもりです。

Q 超小型衛星の放出事業者として、日々、どのようなことに取り組んでいらっしゃいますか。

超小型衛星の放出事業を紹介する永崎社長(出典:JAXA)

永崎 従来、超小型衛星は、大型衛星を打ち上げる際に、ロケット内の空いた空間への相乗りによって打ち上げられていました。「きぼう」からの放出も盛んに行われるようになっていますが、「きぼう」から放出できることを知らない方や、米国しかできないと思っている方もいらっしゃいます。そこで世界各地で開催される宇宙開発関連の展示会に出掛けたり、超小型衛星に関心のありそうな各国の研究機関や企業を行脚したりして事業を紹介しています(写真)。

ワンストップで衛星事業をサポートする「宇宙商社」

Q 御社は「ユーザーフレンドリーなサービスの構築」を打ち出していらっしゃいます。具体的には、どのようなサービスを目指していらっしゃいますか。

永崎 超小型衛星を打ち上げるには様々な手続き、審査が必要です。例えば安全性の審査もその一つなのですが、申請書類を書くのも煩雑な作業です。そこで、データをいただければこちらで申請書類を作成するようにしています。一つ一つがオーダーメードですから、一緒に汗をかきながら必要な手続きを可能な限り代行し、お客様には衛星開発に集中していただきたいと考えています。

「宇宙商社」という言葉には、「Space BDに行けばワンストップで何でもできる」という体制づくりにかける思いを込めています。

Q 御社のサービスを利用すれば、研究機関や宇宙ビジネスを展開しようとする企業だけでなく、新たなユーザーが現れそうですね。

永崎 これまでは、高尚な目的がないのに衛星開発してはいけないというような、心理的なハードルがあったように思います。そこで私たちはリーマンサットプロジェクト(東京)やドリームサテライトプロジェクト(関西)の方々と共に「市民衛星」という考えを打ち出しました。これは、宇宙開発に関わりのなかった一般市民でも、自分たちでお金を集めて衛星開発し、「きぼう」からの放出にチャレンジする方々によるプロジェクトで、そのアプローチを広く認知してもらおうとの提唱です。市民衛星の考え方が広まって、衛星開発のハードルがぐっと下がれば、エンターテインメント業界からの参入など、これまでになかった人工衛星の打ち上げが進み、宇宙が身近なものになると期待しています。

運用を終えた人工衛星が宇宙のゴミ、スペースデブリになってしまうことを心配する人もいるかもしれませんが、「きぼう」からの放出の場合、衛星は高度400キロメートル程の低軌道から地球に向けて放出され、1年から1年半程度で大気圏に突入して燃え尽きるので、スペースデブリになる心配はありません。

超小型衛星から人材開発まで、多様な宇宙ビジネスに取り組む

Q 「きぼう」からの放出の場合、衛星が放出される軌道や高度(約400km)が限定されるといったデメリットもあります。顧客のニーズによっては、「きぼう」からの放出以外のオプションも求められるのではないでしょうか。

永崎 放出事業者として認定いただいたのですから、「きぼう」からの衛星放出の普及に全精力を注いでいくつもりです。

確かに1年から1年半で大気圏に突入して燃え尽きてしまうことをネガティブにとらえるお客様もいらっしゃいます。より高い高度に打ち上げて、数年は運用したいというお考えなのです。しかし、超小型衛星の打ち上げを検討している組織の多くは、技術の実証試験や教育が目的ですから、半年から1年程度、軌道上を周回すれば目的を十分に果たせます。そのことを丁寧に説明しています。

一方、当社は宇宙における総合商社を自負していますから、様々なニーズに応えられるよう、JAXAや民間企業との連携など、間口を広げないといけないと考えています。 また、「きぼう」では船外実験プラットフォームで研究試料を宇宙空間に曝し、その耐久性などを調べる曝露実験が行われています。船外実験プラットフォームの利用の促進も求められていると聞いていますから、ぜひ、お役に立ちたいと考えています。

Q 宇宙ビジネスへの進出のきっかけともいえる、教育に関する事業ではどのようなことをお考えですか。

永崎 宇宙飛行士の育成手法を取り入れた教育事業に取り組もうとしています。急激で予測不能な変化が起こる現代社会では「未知なる課題に取り組む気概と能力」をもった人材が必要であることは日本のみならず世界各国の機関でも言われています。そうした能力は教科学力や論理的思考では測れない「非認知スキル」と総称されますが、その定義や手法に関しては様々な議論があり、効果的なアプローチがない状況です。

極限の宇宙に挑む、それも国や文化の異なるチームにおいての協調で価値を創出する宇宙飛行士が訓練によって高める力には、この非認知スキルが含まれます。そこで、宇宙飛行士の訓練方法を分析し、教育プログラムの開発を進めています。幼少期からの学生向けでは日本を代表する教育事業者であるZ会との連携で取り組んでいますが、社会人向けの人材育成を展開する企業からも問い合わせがあるなど、関心の高さを実感しています。人材や能力に関する考え方を企業が変えれば大学に作用し、日本の教育に作用していく可能性があります。大きな可能性を秘めた事業だと考えています。

当社は「宇宙における総合商社」ですので、現在のコアビジネスである衛星放出のような「ハード」のビジネスにとどまらず、「ソフト」や「コンセプト」からのアプローチ、宇宙分野における貴重な無形資産を活用した教育事業などにも挑んでいきます。

「宇宙で何かしたい」なら気軽に相談を

Q 2024年まではISSの運用は決まっていますが、それ以降は不透明な状況です。事業の継続性という点で不安はありませんか。

永崎 確かに事業の継続性について、不安はないわけではありませんが、超小型衛星の放出事業に尽力しつつ、他のプラットフォームの利用促進にも取り組みたいと考えています。そして、将来的には当社のようなISSの利用促進に取り組む企業をはじめ、国内外のいろいろなプレーヤーと連携して、民間企業が主体となってISSを運用できるようになれたらどんなにいいかと夢を膨らませています。

Q 最後に、今後、御社を窓口に「きぼう」を利用するようになるかもしれない方々へ向けてメッセージをお願いします。

永崎 Space BDを設立して以降、多くの方々とお話しする中で、宇宙開発は敷居が高いと思っている方が多いと感じます。その敷居を下げて、多くの人に利用してもらおうというのが、私たちの使命です。多くの人にお伝えしたいのは、まずはやってみましょうよ、ということ。 私たちは宇宙の素人から出発し、多くの人のサポートを受けて、宇宙商社を名乗るまでになりました。そうした経験を生かして伴走させていただきますから、難しく考えず、「よくわからないけれど宇宙で何かしたい」という気持ちがあれば、遠慮なく相談していただければと思います。


プロフィール

永崎 将利(ながさき まさとし)
Space BD株式会社 代表取締役社長

1980年福岡県北九州市生まれ。2003年早稲田大学教育学部卒業、三井物産株式会社入社。人事部、鉄鋼製品貿易事業、鉄鉱石資源開発事業等に従事し、ブラジル、オーストラリアに計4年間勤務。2013年に独立し、ナガサキ・アンド・カンパニー株式会社を設立。主に教育領域における事業開発を手掛ける。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、横浜国立大学成長戦略研究センター連携研究員。2017年9月、Space BD株式会社設立、代表取締役社長に就任。日経ビジネスの「世界を変える100社」に選出される(2019年1月)。事業開発のプロとして宇宙産業に挑んでいる。

 

 
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