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「きぼう」での実験

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宇宙は地上の延長線上に。超小型衛星利用でビジネスの課題解決を

最終更新日:2019年3月18日

三井物産株式会社 モビリティ第二本部 航空・交通事業部 航空事業室
大山 洋平室長
本田 拓馬プロジェクトマネージャー


左から大山さん、本田さん(出典:JAXA)


宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「きぼう利用戦略」(2017年8月第2版制定)に基づき、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の利用事業の一部自立化を目指している。2018年2月にはその第一弾として超小型衛星放出事業の事業者を公募した。その事業者として選定された企業の一つが、大手総合商社の三井物産株式会社だ。活気づく宇宙開発ビジネスにどのように乗り出すのか、総合商社が同事業を手掛ける意義などについて、同社モビリティ第二本部航空・交通事業本部航空事業室長の大山洋平さん、同室プロジェクトマネージャーの本田拓馬さんに聞いた。

きっかけは新事業の社内コンテスト

Q 御社は2018年5月に国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」からの超小型衛星の放出事業者に選定されたわけですが、宇宙関連のビジネスにはどのように取り組まれていたのでしょうか。

大山 当社は1970年代から宇宙関連のビジネスに関わりがあり、代表的な例を挙げますと、JAXAの前身である宇宙開発事業団(NASDA)向けに、アメリカのスペースシャトルによる物資輸送のための機器を扱う代理店業務を手掛けていました。ただ、他の総合商社もそうでしたが、2000年頃から物流型から事業投資型へのビジネス形態の転換、選択と集中の流れとなり、その中で当社の輸入内販型での宇宙ビジネスは休止しました。

Q 新たな形で宇宙ビジネスに取り組まれるようになったのには、どのような背景があったのですか。

大山 近年、宇宙ビジネスを取り巻く環境は大きく様変わりしました。それで当社としても改めて宇宙ビジネスに乗り出すことになったのですが、そのきっかけとなったのが、経営企画部が運営する新規事業創出プログラム「かるがもワークス」でした。

Q それはどういったプログラムなのですか。

大山 部門の枠を超え、短期的な利益ではなく次世代を担うような事業への実験的な投資案件を社内で募るものです。アイデアが採用されると業務時間の20パーセントを事業の立ち上げのために割くことができます。本田の宇宙関連の提案も採用され、昨秋からは全面的にそのビジネスに注力してもらっています。

グローバルに軌道上サービスの提供を目指す

Q 本田さんは当時、どんな事業を担当されていたのですか。また、なぜ宇宙関連の事業を提案されたのでしょうか。

本田 私が入社したのは2015年ですが、実は学生時代は宇宙科学研究所(ISAS)で小惑星探査ロボットの研究に取り組んでいました。将来の進路を考えた時に、日本の優れた技術で世界をつなぐ仕事がしたいと考え、当社に入社しました。当時は自動車関連の部署で海外のカーディーラーの経営支援を担当していました。自動車関連の事業は最新のトレンド、技術を追う分野であり、やりがいや手応えを感じていましたが、さらに仕事の幅を広げたいと考えて「かるがもワークス」に宇宙ビジネスを提案しました。

Q どのような提案をされたのでしょうか。「きぼう」を利用する事業を念頭に置いたものだったのですか。

本田 私が「かるがもワークス」に事業を提案したのは2016年11月のことで、「きぼう」からの放出事業者として選定されることを想定したものではありませんでした。提案したのは軌道上でのさまざまなサービスを提供している企業との協業です。

軌道上サービスの提供について語る大山さん(出典:JAXA)

大山 本田の企画は日本国内の顧客だけを対象としたものではなく、グローバルに軌道上のサービスの提供を目指すものでした。宇宙ビジネスの分野では、2010年頃からアメリカを中心にベンチャー企業が数多く登場し、多くの投資を集めて高い技術を持つものも現れています。今やISSへの物資輸送の一端は、スペースX社などのベンチャー企業が担っていて、民間活用の流れは今後も加速していくだろうと予測しています。このような流れを勘案した時、本田の企画は大きく成長するポテンシャルがある面白い案件だと判断されました。

多様なサイズの衛星打ち上げ需要に応えたい

Q 宇宙ビジネスといってもさまざまな分野がありますが、出資先はどのように決められたのですか。

大山 新たに当社が宇宙ビジネスを展開するに当たり、人工衛星に対する需要の高まりに注目しました。これまでに放送衛星や通信衛星など、民間企業が運営する人工衛星は数多く打ち上げられてきましたが、小型でも高機能な衛星を開発できるようになって、多くの企業が導入を検討し始めています。当社では2015年には東京大学発のスタートアップで超小型人工衛星を開発するアクセルスペース社に出資しました。

人工衛星を運用するには宇宙に運ばなければなりません。そこで、2018年3月にアメリカのスペースフライト・インダストリーズ社という企業に出資しました。

Q その企業はどのような会社なのですか。

大山 大型の人工衛星の打ち上げには大きなロケットが使用されます。このときにロケットにできる空きスペースを利用して小型衛星も同時に打ち上げられます。事業者が自前のロケットを用意するよりも低コストで小型衛星を打ち上げられるため好評なのですが、スペースフライト・インダストリーズ社はこうした相乗りの機会を仲介している企業です。

Q 「きぼう」とはまた別の形の衛星ビジネスなのですね。

超小型衛星放出の様子
(出典:JAXA)

大山 はい。同社が主に請け負っているのは、小型衛星といっても、最大500キログラムほどの比較的大きなものであるのに対し、「きぼう」から放出できるのは、1U(10cm×10cm×10cm)から3U(10cm×10cm×30cm)等の超小型衛星か、50キログラム程度の小型衛星です。出資によりスペースフライト・インダストリーズ社との提携を進めるとともに、「きぼう」からの放出事業者に選定されれば、超小型から中型ぐらいまでの衛星打ち上げの幅広い需要に一気通貫でお応えできると判断し、放出事業者に応募しました。

ドローンでカバーしきれない広域に衛星の出番

Q これまでは政府機関であるJAXAが窓口となって、「きぼう」から超小型衛星を放出してきましたが、民間企業が担う意義はどのようなところにあるとお考えですか。

対談の様子(出典:JAXA)

大山 民間企業のビジネスですから、実用的な展開が求められます。どうすれば付加価値のあるものをお客さま、ひいては社会に提供できるのか。 われわれはさまざまな産品の物流に関わってきました。現時点では世界的に見ても超小型衛星の物流量は多くはありませんが、これまでの業務で培ったノウハウを生かして、お客さまの利便性、効率性を追求していくことが重要ですし、それがJAXAからも期待されているところだと考えています。放出事業者に選ばれたからには失敗は許されないとの覚悟で、超小型衛星利用を第一に入念に進めています。

Q 今後、どのような業界での超小型衛星の利用が進むとお考えですか。

大山 現段階ではまだ確実なことをお答えすることはできません。その前提の上で例を挙げるとするなら、物流関連の企業には超小型衛星の需要があるのではないでしょうか。海運の場合、外洋を航行する船舶を管理する方法が求められますが、陸上と違って洋上にはセンサー類を設置するのは容易ではありません。一方で地球表面の3分の2を海が占めています。軌道上からのリモートセンシングで船舶の航行を管理するのに超小型衛星が使えるのではないかと期待しています。

本田 陸上でも広域な管理が求められると超小型衛星の出番になるでしょう。海外に目を向けると、線路が数百キロメートルも続く広大な鉄道網は決して珍しくありません。これだけの規模になりますと、ドローンを飛ばして上空からモニタリングするのは無理がありますから、広域にカバーできる人工衛星の出番になるのではないかと考えています。ただ、これまでのリサーチで課題も見えてきました。

Q どのような課題が見えてきたのでしょうか。

課題の解決について語る本田さん(出典:JAXA)

本田 潜在的なニーズを掘り起こすために、いろいろな会社の方と当社の関連部署の者とでブレーンストーミングを何度か実施しました。そこで出てくる課題の解決に超小型衛星を活用できないか検討したりしますが、超小型衛星の仕様が決まっていることもあり、技術的な課題もありますね。でも、こうした検討を積み重ねることで何が足りないのか見えてきます。それぞれのマーケットの声、課題をいかに丁寧に拾って最適解に結び付けていくのか、潜在的な需要はそこにあると考えています。

宇宙でのものづくり、ことづくり、サービスに知見を生かしたい

Q 総合商社である御社ならではの強みはどこにあるとお考えですか。

大山 当社は航空や交通、食料、資源、素材、薬品など、多岐にわたるものを扱っており、いろいろなテイストを混ぜながらチームをつくっています。そうして積み重ねてきた知見は宇宙ビジネスにも幅広く役立てることができると自負しています。社内では宇宙ビジネスに関心が高く、想像以上にわがことのように気にかけてくれる雰囲気があり、心強く思っています。 多様な分野のお客さまと取引させていただいていますから、超小型衛星を開発したくてもノウハウがないと考えている企業に対しては、ネットワークを生かしてビジネスパートナーを紹介することもできるかもしれません。

Q 最後に、今後、御社を窓口に「きぼう」を利用するかもしれない方々へ向けてメッセージをお願いします。

本田 学生時代に関わっていた宇宙の世界は、小惑星探査ロボットという特殊な分野だったからかもしれませんが、開発に関わっている人が決して多くはなく、限られた参加者の中で研究開発が進められていました。今、宇宙での事業展開に関わるようになりましたが、本当に多くの人が宇宙の利用について考える時代になり、宇宙開発の裾野が広がっていることを感じます。 より多くの人が関わるようになると、自分では考え付かないような利用法がどんどん出てくるでしょう。そう考えると自分も頑張らないといけないな、と身の引き締まる思いがしますし、同時に今後の展開が楽しみでもあります。さらに多くの人たちが宇宙開発、宇宙ビジネスに関わりやすくなるように取り組み、皆さんとともに課題の解決策を見つけていきたいです。

大山 宇宙開発、宇宙ビジネスに多くの人が携わるようになっているということは、宇宙は特別なものではなく、地上の延長として見据えられる、手の届く時代になってきていることの証拠ではないでしょうか。現在の宇宙の活用法は一例でしかなく、宇宙でのものづくり、ことづくり、サービスは今後ますます発展していくと考えています。「こんなことに宇宙を利用していいのだろうか」と思うような素朴なニーズ、つぶやきのようなものでもぜひ、お声掛けいただければと考えています。


プロフィール

大山 洋平(おおやま ようへい)
三井物産 モビリティ第二本部 航空・交通事業部
航空事業室長

1973年、東京都生まれ。1996年、慶應義塾大学法学部卒業後、三井物産入社。食品原料第二部、フランス三井物産業務部、宇宙航空部、欧州三井物産業務部。2014年1月よりアフリカ戦略推進室長。2015年11月より機械・輸送システム本部・第二本部およびモビリティ第二本部の航空・交通事業部で航空事業室長を務める。


プロフィール

本田 拓馬(ほんだ たくま)
三井物産 モビリティ第二本部 航空・交通事業部
航空事業室 プロジェクトマネージャー

1990年、広島県生まれ。2015年、東京大学大学院工学系研究科(修士課程)修了後、三井物産入社。自動車第三部にてロシアでのカーディーラー事業等を担当。2016年に新規事業創出プログラム「かるがもワークス」にて宇宙事業を提案・推進した後、2017年9月より現職。

 

 
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