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「きぼう」での実験

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新しいタイプの抗菌薬開発につながる化合物発見に「きぼう」で作られたタンパク質結晶が貢献 ~歯周病治療薬などの研究開発につながることに期待~

最終更新日:2019年9月30日

岩手医科大学薬学部の阪本泰光准教授、關谷瑞樹助教、昭和大学薬学部の田中信忠准教授、合田浩明教授、長岡技術科学大学の小笠原渉教授、長岡工業高等専門学校の鈴木義之特命助教、JAXAの山田貢主任研究開発員らのグループは、「きぼう」で行われているタンパク質結晶生成実験で得られた結果をもとに、歯周病菌の増殖を抑制する化合物を見出しました。この化合物は、糖類を餌にして増殖する微生物である大腸菌には作用せず、糖類を餌にしない微生物である歯周病菌に強く作用することから、歯周病菌などの「糖非発酵グラム陰性細菌」に特異的な、これまでにない抗菌薬の開発につながることが期待されます。

研究チームは、糖非発酵グラム陰性細菌による感染症の拡大に対する切り札とすべく、糖非発酵グラム陰性細菌に特有の栄養源を断つ方法を模索してきました。2015年には、国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」日本実験棟での高品質タンパク質結晶生成実験を通じて、世界で初めて、歯周病原因菌の生育に重要な酵素「ジペプチジルアミノペプチダーゼ(DPP)11」の構造を明らかにしました※1。次に、DPP11の働きを妨げ、抗菌効果を有する化合物の探索を以下のステップで行いました。まず、宇宙実験による結晶から得られたDPP11の詳細な立体構造情報をもとに、400万もの化合物が登録されているデータベースから14,676個に絞り込みました。次に、コンピュータ上でDPP11と化合物との結合様式などを解析し、13個まで特定しました。さらに、この13個の化合物を用いて、実際にDPP11の酵素活性を阻害するかどうかを確認したところ、歯周病菌に対して選択的に作用する抗菌効果を有する化合物SH-5を見出しました。DPP11とSH-5の複合体を2016年に「きぼう」で結晶化させた結果(図1)、SH-5がDPP11にどのように結合しているかを実験的にも検証することができました(図2)。

本成果は、創薬標的タンパク質の構造決定から医薬品候補物質がどのように結合しているかを検証するまでの一連の研究に、国際宇宙ステーションの実験環境が貢献できた好例であり、研究チームは論文中で"宇宙で生成した結晶から得られる高分解能データは創薬研究に極めて有用である"と述べています。

今後、研究チームは、この化合物を用いた治療薬の開発に向けて動物実験の準備に入る予定です。歯周病治療薬はもとより、同じメカニズムで増殖する多剤耐性菌等の抗菌薬の開発につながることが期待されます。


図1 地上(左側)と宇宙(右側)で得られた結晶(出典:岩手医科大学/JAXA)


図2 研究の各プロセスにおいて、宇宙実験から得られた情報を活用した(出典:岩手医科大学/昭和大学)

左:「きぼう」育ちのDPP11の高品質結晶から得られた立体構造をもとに、DPP11に結合しうる化合物の化学的情報を絞り込んだ。
中央:市販化合物データベースを利用した、コンピュータ上での阻害剤探索及び結合様式解析の一例。
右:DPP11と、ヒット化合物SH-5との複合体の高品質結晶を宇宙で生成し、その結合様式を検証することができた。

論文情報

本成果については、科学雑誌Scientific Reportsに掲載されました。

雑誌名:Scientific Reports
論文名:Fragment-based discovery of the first nonpeptidyl inhibitor of an S46 family peptidase

関連リンク

※1[プレスリリース]国際宇宙ステーションでのタンパク質結晶生成実験結果から、タンパク質やペプチドを栄養源とする歯周病原因菌の生育に重要なペプチド分解酵素DPP11の立体構造および基質認識機構を解明~新たな歯周病治療薬の開発に期待~(2015年6月10日)
多剤耐性菌による感染症克服を目指した新しいタイプの抗菌薬の創出に向けて(岩手医科大学プレスリリース)(2019年9月19日)
 
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