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「きぼう」での実験

「きぼう」日本実験棟において実施した、タンパク質結晶の成長速度を詳細に測る"その場"観察実験が終了しました。

最終更新日:2012年12月18日

「きぼう」日本実験棟の溶液結晶化観察装置(SCOF)を使用して実施した、「微小重力における溶液からのタンパク質結晶の成長機構と完全性に関する"その場"観察による研究(NanoStep)」(代表研究者:塚本勝男 東北大学教授)の実験が終了しました。


NanoStep実験は、平成24年8月6日(月)に開始され、以来約4ヶ月にわたり3回のシリーズで実験が実施されてきましたが、12月14日(金)に行われた実験をもって終了いたしました。各回の実施期間は以下のとおりです。

[第1シリーズ] 8月6日(月)~9月7日(金)
[第2シリーズ] 10月1日(月)~11月2日(金)
[第3シリーズ] 11月12日(月)~12月14日(金)

これまでに行われたタンパク質の結晶をつくる宇宙実験では、結晶の品質が向上し結晶の完全性が向上する例が多数報告されています。これは、微小重力下では対流がないことから、タンパク質分子がゆっくりと結晶に取り込まれる(成長が遅い)効果によるところが大きいと考えられてきましたが、その後、東北大学・塚本教授らが行った実験では、対流をおさえた微小重力でも結晶の成長速度は変わりないか、むしろ、微小重力での結晶の成長が速いケースもあることが明らかになりました。このことは、結晶に欠陥が取り込まれ完全性が良くなる理由が、これまでの考え方と違うことを示唆していました。今回の実験を通して結晶の完全性を支配する要因を、結晶成長メカニズムとの関連で明らかにすることができれば、そのアイデアを地上の結晶成長に役立てることができるのです。

結晶の成長速度は結晶の成長メカニズムに大きく依存します。したがって、結晶成長速度の駆動力(過飽和度)依存性を測定することで微小重力での結晶成長メカニズムを明らかにすることができます。NanoStep実験では、広い結晶成長条件での成長速度をレーザー干渉計を使用して"その場"観察で精密に測定するとともに、表面の状態や結晶界面での濃度勾配なども計測しました。反射型レーザー干渉計を用いて、宇宙での結晶成長速度を測定したのは、世界で初めてです。

今回の実験を通して、これまでに以下のことが明らかになりました。

1. 地上よりもはるかに精密な結晶成長速度データを取得することができ、地上との結晶成長メカニズムの違いが明らかになりました。これまでの地上の実験では、データがばらつくため、このような詳しい成長メカニズムの解析は行うことが出来ませんでした。

2. これまで、高純度のタンパク質溶液を使えば不純物による悪い影響はないと考えられてきました。今回の実験の1つでは、高純度に精製した溶液を使いましたが、地上で同じ溶液を使って結晶を成長させるよりも良い結果が得られました。

詳細な解析は今後行っていきますが、上記のような成果を宇宙実験が終了するまでにスピーディに得られた背景としては、その場観察、その場データ解析を念頭におき、膨大な実験データを取得しながら、ほぼ同時に成長速度などの解析を行うシステムを構築したことが挙げられます。これにより、必要なデータの取得を、実験期間中にもれなく網羅することができました。

微小重力のもとでのタンパク質の結晶が成長するプロセスや、完全な結晶化を阻む要因が解明されれば、今後行われる同様の宇宙実験がスムーズに進むだけでなく、タンパク質に限らず、無機/有機結晶の成長における不純物の効果が正しく解析され、地上での結晶の高品質化に寄与する知見が得られます。

NanoStep実験の詳細はこちらをご覧ください。
NanoStep実験紹介ページ:/kiboexp/theme/second/nanostep/index.html


【代表研究者 塚本勝男 東北大学教授のコメント】

素晴らしい!地上で得ることができなかった精密なデータを短時間に沢山得られたことで、"その場"観察による結晶成長の研究を世界に誇ることができる。これからの国際協力による解析が楽しみです。



タンパク質結晶表面の干渉像。結晶の大きさは約500μm。(出典:東北大学/JAXA)

 
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