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Cell Biology Experiment Facility: CBEF細胞培養装置(CBEF)
Facility
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細胞たちの快適マンション

宇宙に行くと生物はどうなる?

細胞培養装置

宇宙飛行士が無重量の宇宙に長い間滞在すると筋力が衰えたり、骨が弱くなったりする現象は有名ですね。また、宇宙では地球上よりも強い放射線が降り注いでいるのですが、宇宙飛行士が飛行中に目を閉じていても一瞬目の前に光が見えたという話も聞きます。これは実は宇宙放射線が目の神経に当たった瞬間なのではないかと考えられています。

地球上の生物は誕生のときから重力の中で進化してきました。海から陸に上がった動物は、体を支えるために骨を頑丈にし、植物は細胞壁を持ちました。芽は光の方向へ、根は重力の方向へ成長していきます。宇宙に行くと植物は上下の区別が分からなくなりますが、光や重力がなくてもある一定の方向に茎や根を成長させる潜在能力かあることも分かってきました。

宇宙では生物がどう変化するのでしょうか。重量のない宇宙で生物は暮らしていけるのでしょうか。それを調べるためには、生物を使った基礎的な実験が必要になります。どんな生物の体も細胞で構成されています。細胞を培養して形や遺伝子の変化を調べる細胞培養実験、植物の成長を調べる植物実験、放射線が細胞に及ぼす影響を調べる実験など、生物を使った研究を進めていくために、細胞培養装置は重要な役割を持つのです。

培養室ってどんな部屋?

細胞培養装置は大学や研究所などの研究室には必ず装備されています。例え宇宙でも本格的な生物実験をするためには欠かせない装置です。

細胞培養装置は温度・湿度・二酸化炭素濃度を一定に保つことができるインキュベータという装置です。人間の体温が36~37℃であるように、哺乳類の細胞は体温と同じ37℃で培養する必要があります。植物は20℃~25℃くらいで育てます。温度が高すぎても低すぎても、細胞や植物の状態は変わるため、本当に見たい現象の瞬間が見られなくなってしまいます。また、湿度も一定に保ってやらないと培養液が乾いたり、水滴ができるとカビが生えたりしてしまいます。宇宙ステーション用の細胞培養装置はふたつの培養室で構成されていますが、これらは内部でつながっており、空気成分が同一になるように設計されています。細胞培養装置では、生体内とおなじ条件で細胞を培養できるので、細胞たちにとってはこの上ない快適なマンションとなります。

今までの実験装置とはひとあじ違う魅力~対照実験~

宇宙ステーション用の細胞培養装置は、微小重力の培養室と重力をコントロールできる回転テーブルがついた培養室のふたつを持っていることが大きな特徴です。

重量のない宇宙でもテーブルを回転させることによって、テーブル上に付けた物に0Gから2Gまでの遠心力を人工的にかけることができます。このとき、細胞はその遠心力を重力が働いているように感じます。

これまでのスペースシャトル実験では、宇宙に持っていった生物や細胞に変化が見られても、宇宙に持っていったこと自体による現象なのか、微小重力による現象なのかが判別できないという欠点がありました。しかし、ふたつの培養室による「対照実験」を行うことで、重力の影響のみを比較条件にすることが可能になります。

回転テーブル

様々な実験を提供できる共通インターフェース

装置の中には電気と通信のコンセントが用意されているので、装置の中に電力を必要とする機器を持ち込んで実験することができます。例えば、中にビデオカメラ付きの植物実験ユニットを持ち込めば、植物の生育の様子を装置を通じて地上で見ることができます。

中型キャニスタサイズの生物実験ユニットの場合、微小重力実験用トレイ(サンプルトレイ)上に6個、荷重力実験用回転テーブル(ターンテーブル)上に4個、搭載することができます。現在JAXAで有する生物実験ユニットについては細胞培養装置搭載用生物実験ユニット(BEU)をご覧ください。

基本仕様

横スクロールしてお読みください。
項目 設計仕様
培養系 キャニスタ搭載個数
(標準中型キャニスタ)
µG培養部 1G培養部
6 4
インキュベータ内環境制御 温度設定 15~40℃(0.1℃刻み)
温度分布 キャニスタ発熱あり キャニスタ発熱なし
N/A ±約1℃
湿度設定 20~80%RH(1%刻み)
湿度分布 ±10%RH
CO2濃度設定 0~10%Vol(0.1%刻み)
人工重力系 重力発生方式 遠心力による
重力値設定 0.1~2G(但し、回転中心から112.5 mmの点)
注)回転数設定 20~140 rpm(1 rpm刻み)
ユーザインタフェース ユーティリティ設定数
  • ユーティリティ
    µG培養部:6
    1G培養部:4
  • 映像※1
    µG培養部:6
    1G培養部:2
  • RS485バス※2
    µG培養部:6
    1G培養部:4

※1 CBEF外への出力は1系統
※2 RS485バスは1系統

ユーティリティ内訳
  • 電源
    DC+5V:1点
    DC+12V:1点
    DC+15V:1点
    DC+15V:1点
  • センサ出力
    0-5V:2点
  • コマンド
    1bit:2点
  • シールド
    GND:1点
画像 JEMピデオ系共通仕様書に準ずる : 1点

パンフレット・資料ダウンロード

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA