このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
 
JAXAトップページへ
 JAXAトップページへ宇宙ステーション・きぼう広報・情報センターサイトマップ
 
船外活動(EVA)の運用概要

船外活動(EVA)は単に宇宙服を装着して船外に出て仕事をして戻ってくるといった気軽なものではなく、何時間もかけて周到な準備をしなければなりません。作業を終わって船内で通常の状態に戻るためにも定められた手順を経なければなりません。
とくにプリブリーズと呼ばれる作業はとても重要です。

プリブリーズ(Pre-breathe)
宇宙服内部の気圧を、スペースシャトルや国際宇宙ステーション(ISS)内と同じ1気圧にして船外に出ると、現在の軟質の宇宙服では気圧差で宇宙服が膨れ上がってしまい、腕や手の指が曲がらなくなり作業ができなくなります。そのため、現在の宇宙服は約0.27気圧の圧力で使用するよう設計されています。そのため宇宙服の中は空気ではなく、酸素で満たすことで1気圧下の空気と同程度の酸素分圧を達成するようにしています。
しかし、宇宙服内の圧力を約0.27気圧に下げる過程で減圧症を生じる可能性があります。

私達が呼吸する大気の中には窒素が含まれています。周囲の圧力を急激に低下させると、体内組織にとけ込んでいた窒素が微小な気泡となって、それが毛細血管を詰まらせると減圧症を引き起こします。

プリブリーズは、この減圧症を防ぐために実施される手順であり、船外活動開始前までに体内にとけ込んでいる窒素成分を体外へ追い出すものです。
プリブリーズの手順は、船外活動をスペースシャトルから行う場合と、ISSから行う場合とでは若干異なりますが、純酸素を呼吸しながら体内組織に溶け込んでいる窒素を追い出す点では同じです。

スペースシャトルから船外活動する際のプリブリーズ
  • マスクを装着して100%の酸素を約60分呼吸した後、スペースシャトルの船内気圧を1気圧(約101kPa)から約0.7気圧(約70.3kPa)に下げ、12時間以上その状態に保ちます。
  • 0.7気圧への減圧後は、マスクを外して普通に呼吸します。なお、この方法だとEVAクルーが船外へ出るまでは、他のクルーも0.7気圧の環境で過ごすことになります。
  • 宇宙服内の窒素を追い出し、100%の酸素を40~75分間呼吸した後、宇宙服を約0.3気圧(約30kPa)に減圧します。
  • エアロックを減圧し宇宙空間と同じ状態にします。
  • ハッチを開けて、エアロックから船外に出てEVA作業を開始します。

EVAの開始から終了までの概要
EVAの開始から終了までの概要

 

ISSから船外活動する際のプリブリーズ
EVA回数が多いISSではプリブリーズの時間を減らすことが急務の課題でした。研究の結果、運動をしながらプリブリーズを行うと、体内に溶け込んでいる窒素の排出が早まることが判りました。
このため、酸素マスクを装着して純酸素を呼吸するプリブリーズ中にエクササイズ(自転車こぎ)を行う新しい「エクササイズ・プリブリーズ」を採用することにより、2時間20分でプリブリーズを終了させることができるようになりました。すなわち、EVA準備開始から4時間半で船外へ出ることが可能となり、スペースシャトルのEVA時の15時間以上と比べて大幅に準備作業を短縮させています。
この方法は、2001年7月の7Aフライトでテストされた後、2002年4月の8Aフライトから実用化されています。
エクササイズ・プリブリーズの手順は以下のようなものです。

  • 酸素マスクを着用し、1気圧(約101kPa)の状態で自転車こぎを10分間行う。
    (上半身は筋力トレーニングを行う)
  • エアロック内を約0.7気圧(約70.3kPa)に減圧し20分間維持
    (エクササイズ・プリブリーズ開始からここまでで80分)
  • 宇宙服(EMU)の装着
    EMUの装着が完了するとエアロック内は1気圧に戻される。
  • EMUを装着した状態で60分間のプリブリーズ(約0.3気圧(約30kPa)で100%酸素を呼吸)を行う。
  • エアロック内を30分かけて減圧し、ハッチを開けて船外へ出る。

最終更新日:2003年 3月24日

JAXAトップページへサイトポリシー