サイトマップ

宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター
  • Menu01
  • Menu02
  • Menu03
  • Menu04
  • Menu05
  • Menu06
  • Menu07

コラム ―宇宙開発の現場から―

コラム―宇宙開発の現場から―
【国際宇宙ステーションと世界の旅】 Vol.4 第四日目 微笑の国と名古屋を結ぶパラボリック飛行

?????? ???? サワディー クラップ みなさんこんにちは。

 小学校の頃、社会科で、インドシナ半島にはメコン川とメナム川という2つの大河が流れていると習った。そう言うと、年代が知れてしまうだろうか。宇宙の仕事で、そのうちの一つメナム川が流れるタイ、バンコクを何度か訪れる機会を得た。そして、メナムというのが(母なる)川という意味だと、タイ人から教わった。僕らの世代は、この川の名前を川の川と習っていたわけだ。まあ、サハラ砂漠も元の意味をたどると砂漠砂漠になってしまうそうだから、このような勘違いは言語を異とする文化の間では頻繁に起こることなのかもしれない。そういえば、外国人に日本のロケット発射場は種子島アイランドにあるんだよと平気で説明している。タネガアイランドと言うのも変だ。タイ中央部を流れるこの川は正しくはメナム チャオプラヤ、チャオプラヤ川という名前だ。
 タイの首都バンコクはこのチャオプラヤ川がタイランド湾にそそぐちょうど河口の出口にあたる。去年の大洪水が記憶に新しいが、もともとこの地域は大河のデルタ地帯、洪水等の自然災害に見舞われやすいため、広域で観測ができる人工衛星からの地表観測に対する要望が強い。それで人工衛星を使った観測に長年取り組んできている。バンコク郊外のラッカバン地区(Google地図だとラートクラバンと表示されるが、日本人の耳にはラッカバーンと聞こえる)は工業団地だが、ここにタイ政府の衛星画像受信センターがある。自国だけでなく、日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国の地球観測衛星からの画像を受信・処理している。日本の最初の地球観測衛星もも一号が1987年に稼働した時にも、この受信局にアンテナを設置して画像の受信を行った。それから25年、つい最近の話になるが、タイの地球観測衛星THEOSが、開業目前の東京スカイツリーをとらえた様子が日本で公開され、インターネット上で宇宙からのスカイツリーの眺めを目にされた方も多いだろう。日本とタイは宇宙を通しての長い協力関係を結んできている。「タイ 地理情報・宇宙技術開発機関(GISTDA)」が中心となって開発を進めてきた成果である。

写真1 衛星画像受信アンテナ2010
写真1 衛星画像受信アンテナ2010
 
写真2 同1988
写真2 同1988
 地球観測衛星は、比較的低い高度を飛び、地球をなめるように撮影したデータを送ってくる。自分の地域の上空を通過する20分ほどの間にデータを受信する必要があるので、受信局を持つ必要がある。二つの写真は、タイの受信センターにあるアンテナのひとつ。実は同じアンテナを別の時期に撮影したものである。1は2010年、左は22年前1988年の撮影だ。敷地がきれいに整備されたのがお分かりいただけるだろうか、センターのある地区は回りに何もない郊外だったが、今は工業団地として発展している。

エメラルド寺院(壁の色が現在と少し違う)
エメラルド寺院(壁の色が現在と少し違う)
 
民族村での像乗り体験
民族村での像乗り体験
 初めてタイを訪問したとき、(初めての海外出張でもあったのだが)、カウンターパートから帰りの飛行機はどこ航空なのと聞かれたので、タイ航空だよと答えたら、ちょっと心配そうな顔をして、飛行機、よく遅れるんだよねーとつぶやかれた。翌朝の飛行機の出発は朝10時ぐらいだったので、早めに空港についてチェックインカウンターに並んでいたら、Delay,2:30と言う手書きのボードがでてきた。なるほどこういうことかと思いつつ、お昼ごはんどうしようかなぁなどとのんきに構えていた。
 そうしたら前のほうに並んでいる人が「それって明日の朝ってこと」とカウンターの職員に詰問しているのが聞こえた。何のことはない、ほとんど一日遅れというわけだ。のんびりとした国柄だなあと思ったが、日本もあくせくしていなかった。携帯もネットもメールもない時代である。日本に連絡する手段も、公衆電話ぐらいしかったし、移動日は休日、あわてても仕方ない。幸い航空会社が立派なホテルを休憩場所として手配してくれたので、タクシー乗り場に向かったところ、そこには「1日観光するなら安くしますよ」、と言うタクシーが待ち構えていた。観光客商売はいつの世でも手回しのいいことである。おかげであいてしまった午後いっぱい、エメラルド寺院や、民族舞踊、体験の像乗りを楽しむことができた。この当時もバンコクの街角では日本語で「ひとつ100円やすいですねー」とお土産を売る人たちがたくさんいて、日本とのつながりを感じたものだ。
 ところで、タイにはもう一つ宇宙に力を入れている組織、タイ国家科学技術開発機関(NSTDA)がある。微小重力科学の普及、特に若い人材の育成に熱心だ、日本が宇宙ステーションの利用普及の一環として実施している、航空機のパラボリックフライト(ジェット機の弾道飛行により、20秒ほどの無重力を作り出す。一回の飛行中に10回ほどの弾道飛行を行ことで、短時間の無重力実験を繰り返し行う)で、学生実験コンテストの部門にタイの学生からのテーマを送りだして、多くの経験者を育ててきたのだ。

タイのチーム 実験装置の最終確認
タイのチーム 実験装置の最終確認
 
20秒間の間に無重力体験
20秒間の間に無重力体験
 学生のグループは、20秒間の無重力を使ってできる科学実験の提案を行い、アジア地域の中で選抜されたチームが日本にやってくる。このパラボリックフライトと言う特殊な飛行を提供するのは、名古屋にあるダイアモンドエアサービスと言う専門の会社だ、飛行機は名古屋空港から飛び立ち、2時間ほどの飛行でパラボリックフライトを10数回行う。プロの技術者や研究者は宇宙ステーションで本格的な科学実験を行う前に、この飛行を使って事前確認試験を行うことが多い。これらの試験に混じって、日本やアジアの学生も自分の実験装置を組み立ててチャレンジする。空中で体験する無重力は得がたい経験だ。タイの参加者からはその後の進学先に日本の大学や大学院を選ぶ学生もいて無重力実験が日タイ両国の間で学生の交流を産むこととなっている。近い将来、これらの経験者が中心になって宇宙ステーションの実験にチャレンジしてくれることを期待している。

 タイ文字は独特で美しい。東南アジア地域には、国語表記をローマンアルファベットに変えてしまった国もあるが、タイは独自の文字のシステムを維持している。見た目は難しそうだが、母音と子音の組み合わせであることから、日本人には意外と学びやすい文字だ。また、タイには独自のタイ将棋(マークルック)というゲームがある。もともとインドシナ半島にはそれぞれ地域毎に発達した将棋があったらしいが、現在でも生き残っているのはマークルックだけだ。他の国々のゲームはヨーロッパの進出に伴ってやって来た、西洋将棋(チェス)に駆逐されてしまったらしい。マークルックのこまはチェスに似ているが、その動き方は日本の将棋に近い。ちょうど日本の将棋から飛車角をとった形に似ている。日本の将棋は平安時代ごろに東南アジア経由で海の道を伝ってもたらされたマークルックと祖先を共通に持つゲームが元になっているとも言われている。

バンコクの高速道路渋滞。車がカラフル?
バンコクの高速道路渋滞。車がカラフル?
 
マークルック。今も街角で勝負を見かける
マークルック。今も街角で勝負を見かける
 タイを旅すると、首都バンコクの交通渋滞にはいつも驚かされるし、観光客がごった返す繁華街の熱気は、25年間変わらない。宇宙での協力も、四半世紀以上の長い時間をとおしてゆっくりはぐくんできたものだ。時間の流れを変えることができる、タイの魅力はそんなところにあるのかもしれない。

?????? ???? では、また。

ページトップ
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency サイトポリシー・利用規約