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宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター
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コラム ―宇宙開発の現場から―

コラム―宇宙開発の現場から―
サチコの実験日記 Vol.7 線虫の話その2
皆さんこんにちは。私はJAXAで「きぼう」日本実験棟を使った生命科学実験の担当をしている矢野幸子です。前回は振動試験についてお話ししました。今回はまた生き物の話に戻って線虫に関する研究の話の第2段です。前にも線虫についてお話ししましたが、今回は少し着目点が異なる研究の話です。宇宙に行ったら寿命は変わるか?という研究の計画です。

■ 宇宙に行くと長生きする?

線虫は、体長約1mmのミミズのような動物です。研究者にとって扱いやすく、生物の基本的な仕組みを研究するのに多く使われているモデル動物です。線虫は初めてDNAの全配列が明らかになった動物で、この線虫を使った研究でノーベル生理学・医学賞を取った人もいます。
JAXAは2004年、フランスやアメリカ、カナダ、東京都健康長寿医療センター研究所の本田修二先生、東北大学の東谷篤志先生、岡山大学の香川弘昭先生など複数の機関と協力して、線虫を宇宙に打ち上げました。この実験で、線虫でも宇宙では寿命が長くなるかもしれないという結果が得られました。2004年の宇宙実験では線虫は培地の中を泳ぐような実験条件で過ごしていましたが、もしかすると線虫も宇宙飛行士と同じように、重力から解き放たれて移動が楽になり、その分長生きするのかもしれません。線虫は通常1カ月程度の寿命ですが、2004年の宇宙実験では約10日間の培養でしたので、途中で持って帰り、遺伝子の動きを調べました。その結果、老化マーカーであるポリグルタミン凝集体形成の遅れが見られました。
さて、JAXAは再び、東京都健康長寿研究所の本田陽子先生と共同で、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟の装置を利用して、今度は宇宙でもっと長い時間培養して寿命をはかるという実験を計画しています。実際に宇宙に行くと本当に寿命が延びるのでしょうか。
宇宙に行くと長生きになるかどうか、人間の宇宙飛行士で実験するのは難しいですね。そこで、この線虫という生物を使って実験しようというわけです。線虫は生きている間、常にくねくねと体を動かしています。若いころにはこの動きが活発で、老いてくるとゆっくりになることが分かっています。そして最後にその動きを止めたときが寿命を迎えたときです。計画では宇宙に3000匹以上の線虫を送り、培養しながら観察することを計画しています。線虫の遺伝子に変化があるのか、長寿に関係している遺伝子の新発見があるのかなどを詳しく調べます。老化には体の中で働いている様々なタンパクの質の構造変化や機能低下が関係していると言われていますが、その劣化を抑える分子の働きに着目して分析をする予定です。
寿命に関して調べるために「宇宙で寿命を迎えるまで動物を飼う」という実験は初めてです。そして長い時間無重力で実験ができる国際宇宙ステーションならではの実験といえます。得られた結果は、地上でもタンパク質が劣化することによって生じる病気の研究や、寿命の研究に生かすことができます。
小さな虫にも寿命があって、徐々に老化していく。いきものであれば年をとるのが当たり前ですが、線虫をモデルにして老化の仕組みを調べることができるなんてちょっと不思議ですね。そして線虫という小さな宇宙飛行士が私たち人間の代わりに実験材料になってくれることで、科学がさらに進歩するなんて、とてもうれしいことだと思いませんか。宇宙での線虫の研究は、地上でも私たちが元気に長生きできる、そんな未来を拓いてくれる研究といえるでしょう。

【 もっと詳しく知りたい人へ 】

現在計画中の実験の内容はこちら
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/theme/application/pm02/Honda_J.pdf
(2011/11/25)
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