サイトマップ

宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター
  • Menu01
  • Menu02
  • Menu03
  • Menu04
  • Menu05
  • Menu06
  • Menu07

コラム ―宇宙開発の現場から―

コラム―宇宙開発の現場から―
サチコの実験日記 Vol.12 「アジアの種子2013」計画~Space Seeds for Asian Future 2013~
 皆さんこんにちは。私はJAXAで「きぼう」日本実験棟を使った生命科学実験の担当をしている矢野幸子です。今回は、私たちが取り組んでいるアジアでの活動について紹介します。

 JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部きぼうアジア利用推進室では、アジア地域での国際宇宙ステーション利用促進を目的として、「アジアの種子Space Seeds for Asian Future」ミッションを実施しています。1回目は、2010年打ち上げのこうのとり2号機(HTV2)によってアジア諸国原産の複数種(さまざまな植物)の種子を打ち上げ、種子を国際宇宙ステーションに数か月間おいた後に地上に回収し、発芽率などを調べる実験を行いました。このミッションに参加したアジア諸国の宇宙機関は、国際宇宙ステーションを利用した宇宙実験を実施するために必要となる諸手続きの一つである生物試料の国際輸送における輸出入手続きや検疫の経験を積むことができました。また、持ち帰った種子は、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムの児童・生徒を対象とした理科教育に使われ、1回目のミッションは成功のうちに終了しました1)

 2回目は2013年打ち上げ予定のこうのとり4号機(HTV4)でアズキ種子を国際宇宙ステーションに運び、暗所で7日間程度生育させる実験を行います。試料の回収はできませんが、宇宙でアズキの芽生えを撮影した画像を地上に配信します。この実験は、一般の参加者を募集して実施することを検討中です。実験の参加者は、宇宙から配信された画像と同様の条件で地上において生育させたアズキ芽生えの成長や形態を比較することによって、環境要因による植物の成長や形態の変化を観察することができます。また、そのしくみについて考察することを通して、植物の環境応答について学ぶことができます。

 地上実験にはアジアと太平洋地域の国(マレーシア・インドネシア・タイ・オーストラリア・ベトナム)の宇宙機関が参加の意思を表明しています。各国の参加者はそれぞれの宇宙機関が募集します。また、アジア諸国の宇宙機関は1回目のミッションにはなかった軌道上の実験運用の準備に参加します。また実験の設計に関する提案やアイデアを出してもらって一緒に考えています。この作業を通して国際宇宙ステーションを利用した新しい宇宙実験の提案や宇宙実験準備の経験の蓄積につながることを期待しています。

 宇宙においてアズキを生育させる実験を提案してくださったのは大阪市立大学の曽我康一先生です。曽我先生はアズキなどの植物を用いて、植物が重力に打ち勝って成長するために体を丈夫にする反応(抗重力反応)を研究しています2)。アズキなどの植物を遠心分離機を用いた過重力環境下で生育させると、地上部が太く短くなり、また、細胞壁がかたくなります。シロイヌナズナ胚軸とイネ幼葉鞘を用いた宇宙実験により、宇宙では過重力とは逆に、両器官とも細く長くなり、細胞壁がやわらかくなることがわかっています。さて、アズキの上胚軸も胚軸や幼葉鞘と同じような変化をするのでしょうか。また、宇宙では、地上部の長さや太さの変化だけでなく、成長方向も変化します。すなわち、イネ幼葉鞘は種子に巻きつくように屈曲し、一方、シロイヌナズナ胚軸は様々な方向に成長します。植物によって、その方向は異なりますが、これを自発的屈曲あるいは自発的形態形成と呼びます3)。アズキの上胚軸は、どの向きに成長するのでしょうか。抗重力反応の解析と違って、自発的形態形成の場合はクリノスタットという生物試料を回転させる装置を用いた解析が有効です。クリノスタット上でアズキを生育させると宇宙での結果が予想できるかもしれません。

 現在のところ、日本における本ミッションの一般参加募集計画は未定ですが、生徒・学生の実験への参加、また、成果発表会への参加などが考えられます。また、日本の参加者がアジア諸国の参加者との交流するチャンスもあるかもしれません。国際宇宙ステーションを利用した本ミッションが、アジア諸国の参加者や宇宙機関の交流の場となり宇宙科学や植物科学はもちろん、科学全体の発展について議論できる場を提供できるとよいと思います。具体的な方法についてはこれから決めていきますが、このミッション自体が大きな可能性を持っていると思います。国際宇宙ステーションを通じて国境を越えた交流を行う。まさに宇宙規模の活動となることを期待しています。きぼうアジア利用室の活動についてはJAXAホームページをご覧ください。

The Kibo Utilization Office for Asia (KUOA)
http://iss.jaxa.jp/en/kuoa/index.html

参考文献等
1) Space Seeds for Asian Future Report
http://iss.jaxa.jp/en/kuoa/ssaf/

2) Soga K, Gravity resistance in plants. Biological Sciences in Space (2010) 24: 129-134

3) Hoson T and Soga K, New aspects of gravity responses in plant cells. International Review of Cytology (2003) 229: 209-244

(2012/10/24)
ページトップ
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency サイトポリシー・利用規約