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コラム ―宇宙開発の現場から―

コラム―宇宙開発の現場から―
【紀さんの宇宙あれこれ】 Vol.11 「空中発射ロケット」(ペガサスとストラトロ-ンチ)
今回は、日本では開発されていないので、あまり知られていないかもしれませんが空中発射ロケットについて紹介します。
この飛行機とロケットの特徴を生かした人工衛星打上げ方式である「空中発射ロケット方式」で実用化されている「ペガサス」と計画が発表されたばかりの「ストラトローンチ」についてのお話です。

人工衛星を打上げるのに、現在使われているロケットは先ず地球の重力を振り切る手段としての役割があります。そして大気圏内にある空気層を超えなくてはなりません。
このため、ロケットを効率よく働かせるために1段ロケットでなく、使用済み部分を切り離し身軽になりながら飛ぶ、多段ロケットで打上げる方式がとられているわけです。第1段目のロケットは特に空気密度の高い部分で働きます。すなわち対流圏の高度約10数kmまでは大気中に酸素が十分あり、この間はジェット機でも飛行できるところです。ここに着目し、この第1段ロケットに相当する役割をジェット機(母機)で担ってもらい空気が薄くなってから、自分で酸化剤を持っているロケットならではの働きにバトンタッチするのが空中発射ロケット方式です。この母機は空気利用再使用型1段とも言えます。

その長所は地上からの打上に比べて、
  • 母機が離着陸出来る飛行場に、
    安全上の基準を満たす整備設備があればよく、射場の簡素化が出来る。
  • 通常打上げで問題になる射場上空の氷結層や雷雲などは、
    母機さえ飛べれば影響を受けない。
  • 母機の発着する射場の緯度や周辺の状況に関係なく、
    公海上空で発射が出来るので、目的の軌道投入が容易になる。
  • 赤道近くで打ち上げが可能になり、地球自転速度が加味され、
    より大きい衛星質量を打ち上げられる。
  • ロケット落下物など安全確保がし易くなる。
短所としては、
  • 母機の搭載能力に限界があるので、大型の人工衛星の打上げには向かない。
  • 打上げ回数が少ないと母機の維持費負担比率が上がりコスト高になる。

では、先ずペガサスロケットから説明したいと思います。
ペガサスは、前々回Vol.9で紹介した国際宇宙ステーションへ物資を運ぶアンタレスロケットとシグナス宇宙船を開発中のオービタルサイエンス社(Orbital Sciences Corporation:OSCまたはOrbital)が1990年初めて実用化した空中打上システムとして有名です。

母機ロッキードL1011ジェットとペガサスロケット。
打上に向かう母機に取り付けられたペガサスロケット。その上に飛んでいるのは打上げ支援機。

米国では歴史的に、軍がC5A輸送機を使用しミニットマン大陸間弾道ミサイル(ICBM)の投下実験や、NASAがB-52爆撃機を改造した母機でX-15高高度超音速実験機の数多くの飛行試験を実施した技術蓄積がありました。OSCがペガサスを開発出来た背景にはこのような豊富な技術実績と人材があったということですね。 
もちろんペガサスロケット自体も専用に開発されたのでなく、通常の地上打上げにも使用されているロケットと基本的に共通で量産されており、低コストにつながっています。
衛星を搭載し、打上げ整備が終わって母機への取り付けを待つペガサスロケット(ペガサス ユーザーズガイド)。

ペガサスロケットの分解図。

母機はロッキードL1011ジェットを改造したスターゲイザーです。
この胴体の腹の部分に、3段式固体燃料のペガサスXLロケット(23t)を結合し、飛行場を飛び立ち、高度約12kmで分離し、その5秒後ペガサスロケットに点火し、10分後に450kgの衛星を地球低軌道(LEO)に打ち上げます。

母機から分離、点火後、自立飛行始めたペガサスロケット。
点火後、上昇飛行に移るペガサスロケット。

具体的な打ち上げの例を紹介しますと、2008年10月に打上げられたNASAの太陽圏観測衛星IBEX(110kg)はカリフォルニアのバンデンバーグ空軍基地でペガサスXLロケットに組み込まれ、母機に吊るされました。その後クワジェリン島(ホノルルの南西3,900kmの北緯8度43分、東経167度44分、ファルコン1ロケットの打上げ射点があります)へ空輸されました。この基地から飛び立ち打ち上げられたので、赤道に近いためケネディスペースセンターで打ち上げるより16kg(約15%)も衛星質量が多く打ち上げられることになりました。
これまでに、ペガサスは初号機から2008年10月までに、40回発射され、80個以上の衛星を打ち上げ、1996年以降失敗はありません。この2,3年打上げが途切れていましたが、2012年は3月22日(予定)と12月に打ち上げが計画されています。

次はこのペガサスの超大型版「ストラトローンチ」に移りたいと思います。
マイクロソフト社の共同創業者のポール・アレン氏は、昨年12月13日に新会社ストラトローンチ・システムズ(Stratolaunch Systems:社名ロゴの下にはポールアレンプロジェクトと書いてあります)社を設立し、超大型ジェット機と大型ロケットを組み合わせた空中発射システムを開発し、衛星や物資などを地球低軌道に送り込む計画を発表しました。
それによると、117mもある翼にボーイング747のエンジンを6基搭載した巨大ジェット機で、双胴の機体の中心に長さ約36m、直径3.7mのロケットを搭載し、空中で発射するものです。離陸時の質量は540tで衛星打上げ最大質量はペガサスの10倍以上の6,100kgあります。はじめは無人ですが将来は人間を、地球の低軌道に送り込みたいとのことです。

格納庫から出てくる母機と中央に取付けられているファルコン9ロケット想像図。
飛行想像図。ファルコンロケットの後部にノズルが見える。

実在巨大飛行機との大きさ比較図。一番内側がボーイング747-8(68.5m)、2番目がエアバスA380-800(79.8m)、3番目がAn-225ムリーヤ(88.4 m)、4番目がハワード・ヒューズの巨大飛行艇H-4スプルース・グース(97.5m)、一番外側がストラトローンチ・システムズの母機(117m)。

この計画は大きく4つの要素から構成されています。
ひとつ目はロケットでスペースX社の2段式ファルコン9ロケットがベースになり、二つ目はロケットを運ぶ母機でスケールド・コンポジット社(Scaled Composites)が担当します。この会社はポール・アレン氏が資金を提供し、バート・ル-タン氏らとスペースシップワンを開発し、2004年民間有人宇宙船として初めて高度100kmを超えるサブオービタル飛行に成功、アンサリXプライズを獲得した実績があります。母機の離陸時総重量は540tを超え、3,700m級の滑走路が必要で、ロケットの点火地点まで最大2,400kmの航続距離があります。
三つ目は約220tのロケットと母機の結合・分離機構でダイネティクス(Dynetics)社が担当し、四つ目はこれら3つのシステムの全体取りまとめでストラトローンチ・システムズ社が行います。

ドラゴン宇宙船の打上げに成功したファルコン9の2号機発射直後。1段エンジンの9箇のノズル中3個が見える。
母機から分離され上昇始めたファルコン9ロケット想像図。
エンジン、脚、油圧機構など再利用するために、ユナイテッドエアラインから購入した2機のうちの最初のジャンボ機。(2012年2月15日)

現在、カリフォルニア州モハベ砂漠で格納庫を建設中で、早ければ2015年に新開発の巨大ジェット母機による初試験飛行を行い、2016年に初の打ち上げ試験を行う予定だということです。具体的な情報はこれから徐々に発表されるでしょうから注目していて下さい。

もちろん開発はこれからですし、解決すべき技術的問題もありますが、先ずはこのような発想を持ち、実現しようと動き出すアメリカのベンチャー企業のバイタリティはすごいですね。ポール・アレン氏、バート・ルータン氏、前にもご紹介したイーロン・マスク氏らが意気投合して進めているので、計画が成功する高い可能性を感じます。もちろん、国の歴史、社会背景、経済力の違いはあるでしょうが、パイオニア精神、チャレンジ精神は日本人にもあるはずですから、日本らしい新しい動きを強く期待したいし、出さなくてはならないですね。

空中発射方式には、現在上記2つの例のような地球をひと回り以上周回して人工衛星になる方式と5分程度の短時間だけ宇宙軌道に滞在する、いわゆるサブオービタル飛行があります。
米国ではサブオービタル飛行は、民間企業が開発中で鋭意営業に向け飛行試験が続いています。次回はこのスペースシップツーについてお話したいと思います。(続く)
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