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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポートに連載している油井・大西・金井宇宙飛行士が綴るコラム記事“新米宇宙飛行士最前線!”のバックナンバーです。
最終更新日:2013年6月24日

今月は、若田飛行士がバックアップクルーとして任命されていたソユーズの打ち上げを見学する事が出来ました。今回の私の主任務は、バイコヌールでの必要な会議に参加し、その結果を日本に連絡する事でした。ただ、私にとってバイコヌールに行くのは今回が初めてでしたし、次に私がバイコヌールへ行く際には、自分自身がバックアップクルーになっている予定ですから、先輩飛行士の行動を見学しながら、将来の自分をイメージアップする事にも努めました。

写真:ソユーズは、発射台まで列車で運ばれて来るんですよ。初めて見たので、感動でした!

ソユーズは、発射台まで列車で運ばれて来るんですよ。初めて見たので、感動でした!

写真:バイコヌールには、ロシアの宇宙開発の歴史がぎっしり詰まっていて、見学すべきところが沢山あります!ロシアでは飛行の際に、植樹を行う伝統があるのですが、こちらがガガーリンさんの木です。大きくて、歴史を感じます!

バイコヌールには、ロシアの宇宙開発の歴史がぎっしり詰まっていて、見学すべきところが沢山あります!ロシアでは飛行の際に、植樹を行う伝統があるのですが、こちらがガガーリンさんの木です。大きくて、歴史を感じます!

ところで、皆さんは、これまでにバックアップクルーという言葉を聞いた事がありましたか?これは、名前のとおり予備のクルーで、プライムクルーと呼ばれる本来飛ぶ予定の飛行士が、何らかの理由で飛行出来なくなってしまった場合に、代わりに飛行する飛行士です。ですから、打上げまでのトレーニングや試験もプライムクルーと同様に行いますし、病気などにならないように、バイコヌールでも私達とは別のホテルに滞在し、一般人からは隔離されています。予備とはいえ、実際に飛行する可能性があるのですから当然といえば当然ですが、バックアップクルーは、万が一の場合に備えて気持ちの準備を含め、万全の準備が整っていないといけません。一方で、記者会見などでは、もちろんプライムクルーに注目が集まりますから、まさに目立たない所で働いている重要な役目の人達なのです。

私は、前職が自衛官で、しかもパイロットでしたから、この「バックアップ(予備)」という考え方が、心の奥底までに染み付いてしまっています。どんな行動をする時も、予備がないと不安になってしまうようになりました(笑)。

例えば、出張に行く際にも、実際に使用する予定のお金の他に、予備のお金を用意し、その予備のお金も幾つかの国際通貨で持って行きます。飛行機の操縦系統には、メインの他に予備の系統がありますし、作戦を立てる時は、予備兵力を準備するのが通常です。更に、身近な所では、待ち合わせの為の移動にも、予備の時間を計算に入れるので、いつも約束の時間より早く到着してしまいます(笑)。家族と一緒に家を出発する際は、みんなの準備が遅くて自分が考えた時間に出発できない事が多いので、出発時間を伝える際に、30分の予備時間を設定して、家族に伝えたりしています。(例えば、朝七時に出発したいと思っているなら、家族の皆には「六時半に出発するよ。」と伝えておくのです。)そうすると、妻から「準備に手間取って出発が遅れてごめんね。」と言われた時も、心の中では「計算通りだな…」と考えながら「良いんだよ。準備も色々大変だからね。」なんて優しい言葉をかける事が出来ます(笑)。

実は宇宙開発の世界でも予備の考え方の重要性は同様で、重要な機能や装置には必ず予備が存在し、起こって欲しくない事態が起こったとしても、安全が保たれるように事前に準備がされています。ただ、予備を用意するといっても、お金や労力がかかりますから、何でも沢山の予備があれば良いと言うものでもありません。予備にお金をかけすぎて、メインが疎かになってもいけませんしね。この辺のバランスはどの様に取るかと言いますと、その事態が起こる可能性とその事態の深刻さの双方を考えて、準備をするのが普通です。発生する可能性が低くても、命に関わるような事態には十分な備えが必要ですし、頻度が高くても、安全や任務の遂行に大きな影響がなければ、わざわざ予備を用意することもありません。(例えば、時々発生する事がある「自動車の燃料切れ」と言う事態を考えた時に、普通に街中を走るだけであれば、わざわざ予備の燃料タンクなどは必要ありません。しかし、砂漠や山岳地帯等を走る場合には、予備の燃料の有無が生死を分けることにもなり得ますよね。)

実は、予備をいつ、どのくらい用意すれば良いのかという事を具体的に考えるには、予想される事態を詳細に分析する必要があり、結構大変なのです。きっと、皆さんも地震の際の予備の食糧、生活用品の準備を進めるように自治体などから助言を受けていると思いますが、その基準を作る際には前提の条件があって、それを分析するのも大変な仕事なのです。

色々と話が逸れてしまいましたが、私がこれまで経験してきた自衛隊及び宇宙開発の分野では、この「予備」という考え方が当たり前でした。この考え方は、日々の生活や会社で仕事をする場合などにも役に立つと思います。残念ながら、近年ヒューストンでも多くの宇宙開発関係者が職を失いました。しかし、現在それらの方々は、油田開発等の新しい分野でこのような考え方を生かしながら活躍していると伺っています。

皆さんも、日々の生活や仕事の中で、この「予備」という考え方を適用する練習をしてみたら如何ですか? 仕事の失敗が減って信頼性が増すかもしれませんし、心の余裕も生まれるかもしれませんよ。

※写真の出典はJAXA


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