サイトマップ

宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター
宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センタートップページ
  • Menu01
  • Menu02
  • Menu03
  • Menu04
  • Menu05
  • Menu06
  • Menu07

JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポートに連載している油井・大西・金井宇宙飛行士が綴るコラム記事“新米宇宙飛行士最前線!”のバックナンバーです。
最終更新日:2014年1月24日

2014年になりました。ヒューストンでは私の2016年の第48次/49次長期滞在に向けた訓練が始まりました。また、今後2年半に及ぶ訓練スケジュールの概要が決まって、それによると今年は5回、ロシアでの訓練が計画されていて、計6ヶ月をあちらで過ごすことになりそうです。1年のなんと半分ですね(^^;)

ソユーズ宇宙船の訓練はとてもチャレンジングだと聞いていますが、どんな生活が待っているのか、今から楽しみです。

先月のコラムでは国際宇宙ステーションの外部冷却システムで発生した故障と、それに伴う船外活動の実施について書きました。まずはその船外活動についてですが、結果的に2度の船外活動が実施され、2名のアメリカ人宇宙飛行士の活躍によって無事冷却システムのポンプが交換され、現在はシステムは正常な状態に復帰しています。もちろん、若田飛行士が得意のロボットアームを操作してその船外活動を支えたことも、この作業が大きな問題もなく、予定していた3回よりも少ない船外活動で終わったことの要因の1つと言えるでしょう。

今後、故障したポンプを地上に持ち帰ることが出来れば、今回の不具合の発生原因について詳しく調べることができ、それがまた将来の宇宙システムの開発に生かされることでしょう。

さてさて、今月のトピックは同じく船外活動からです。

先日、現在公開中のある映画をこちらで観ました。船外活動中にアクシデントに見舞われる宇宙飛行士たちを描いた宇宙モノです。その映画の中で、宇宙飛行士が船外活動服に装備された小型の推進装置を使って、宇宙空間を自由自在に飛びまわるシーンがあるのですが、そのシーンを観ていて、「ああ、一般の方にとって、船外活動というのはこういうイメージなのかな」と。

そこで今回は、現在宇宙ステーションで船外活動を行う際に用いられる、宇宙飛行士の命綱についてご紹介したいと思います。

そもそもなぜ命綱が必要なのか、という点ですが、ISSはほぼ無重力に近い状態で飛んでいるので、もし命綱無しで船外活動を行っていて、何かの拍子にISSから宇宙飛行士の体が離れてしまったら、そのままどんどんISSから離れていってしまうんですね。

これは非常に恐ろしいです。

こうなってしまうと下手をすると、というかほぼ確実に、その宇宙飛行士は2度とISSへは戻れず、そのまま地球の周りを回る1個の「天体」となり、やがて大気の抵抗(非常に薄いですが、大気は存在します)によって高度が下がっていき、いつしか大気圏に突入して燃え尽きることでしょう・・・((((;゜Д゜))))

船外活動をする宇宙飛行士に、命綱が必須な理由がお分かり頂けたかと思います。

実は先ほどの映画に出てくる、小型の推進装置。現在ISSで使用されているアメリカ製の宇宙服には実装されています。SAFER(セイファー)と呼ばれる装置です。ただ、推進剤となるガスの量が限られているので、「自由自在に飛びまわる」というのとは程遠い感じです。

私も1度、このSAFERの使用方法に関する訓練をヴァーチャルリアリティーのシミュレーターで受けたことがあるのですが、なかなか難しいです。遠くに離れていくISSの方向へ向かってSAFERを使用するのですが、自分の戻りたいポイントをしっかりと狙わなければなりませんし、ガスの搭載量の関係上、チャンスはせいぜい2度というところでしょうか。

ですから、このSAFERはあくまで最後の頼みの綱であって、とても命を預けられる代物ではありません。

命綱と呼べるものは、これとは別に用意されています。

この命綱、業界用語では「Safety Tether(セーフティー・テザー)」と呼ばれます。直訳すると安全綱でしょうか。

このセーフティー・テザー、構造はいたってシンプルです。

※写真の出典はJAXA/NASA

写真

写真手前に写っているフックが、宇宙服に取り付ける部分です。そしてもう片方のフックを、ISSの手すりなどの固定されている部分に取り付けます。写真の中で「29」とラベルされている灰色の部分の中がリール構造になっていて、そこに強靭なワイヤーが収納されています。宇宙飛行士が移動していくにつれて、そのワイヤーがするすると伸びていく仕組みになっています。なので万が一、宇宙飛行士が手を離してしまって宇宙空間に放り出されても、このリールが自然と巻かれていき、最初にフックを取り付けた場所に戻ることができるのです。

いたってシンプルじゃありませんか?

宇宙飛行士が船外活動を開始するとき、エアロックを出て最初に行う作業が、このセーフティ・テザーの一方のフックをすぐ近くにある穴に引っ掛けることなのです。

セーフティ・テザー自体はあくまでバックアップとも言うべき手段で、基本的に宇宙飛行士は必ず片手はISSのどこかを掴んでおり、もし両手を空けたい時には別のテザーを使います。これはセーフティ・テザーのようにリールがついておらず、約1.5mくらいの長さのテザーです。

この、作業をする時などに近くのてすりなどにテザーを引っ掛けておくことを、業界用語で「ローカル・テザー」といいます。私たち宇宙飛行士は、長さ60m幅30mの巨大プールで普段船外活動の訓練を実施していますが、この訓練中、教官から口を酸っぱくして言われるのが、作業場所に着いたらまずはとにかくこのローカル・テザーを忘れないように、なのです。

そしてローカル・テザーを忘れてうっかり両手を離してしまっても助けてくれるのがセーフティ・テザー、さらに万が一セーフティ・テザーが壊れて宇宙空間に放り出されてしまった場合には、先のSAFERの出番となるわけです。

一口に船外活動と言っても、なかなか一般の方々には実際どういう作業をしているのか想像が難しいかもしれませんが、今回のコラムでその一端をご紹介できていれば幸いです。

NASAテレビで実際の船外活動の中継を観ていれば、このテザーという言葉、かなり頻繁に出てきますので、興味があれば是非1度中継をご覧になって下さいね。

最後に余談、というか宣伝を。

現在ISSに滞在中の若田飛行士が、You tubeで「週間若田」という短いビデオクリップを頻繁にアップしているのはご覧頂いてますでしょうか?

寝袋で寝る時はズボン穿いてないなど、若田さんの思わぬカミングアウトが飛び出したり、非常に興味深く、楽しい内容になっています。こちらも是非ご覧下さい。

写真

年明け早々、毎年恒例のSafety Stand Down Dayがエリントン空港で行われました。これはクリスマス・新年休暇を合わせて3週間近くT-38の飛行訓練が止まってしまうので、訓練を再開するにあたり皆でもう一度「安全」についてじっくり考えましょう、というものです。

写真はその中の宇宙飛行士チームと教官チームによる、T-38のシステムに関するチーム対抗クイズゲームから。かなりマニアックな問題も出題されます。この時ばかりは新人もベテランも、子供に帰ったようにゲームの進行に一喜一憂です。


≫バックナンバー一覧へ戻る

 
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency サイトポリシー・利用規約