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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポートに連載している油井・大西・金井宇宙飛行士が綴るコラム記事“新米宇宙飛行士最前線!”のバックナンバーです。
最終更新日:2013年4月19日

モスクワでのロシア語没入訓練からヒューストンに戻ってきて、早くも1ヶ月が経ちました。

気付けば今月のコラムの原稿締め切りが迫ってきています。

・・・正直に言うと、忙しくて原稿を書く時間が取れず、少し締め切りを延ばしてもらったのですが(^^;)

締め切りに追われる漫画家の方々の気持ちが、少しだけわかったような気がします。

でもこのコラムは、私たちのことを皆さんに知って頂く貴重な場ですし、自分の好きなように書かせて頂いているので、皆さんに楽しんで読んでもらえるうちは頑張って続けていきたいと思っています。

本拠地ヒューストンを2ヵ月半近くも離れていると、当然色々な仕事が溜まっていくわけで、この1ヶ月はそれを取り戻すのに一生懸命でした。一例を挙げると、私たちはT-38ジェット練習機での操縦訓練を1クォーター(3ヶ月)で12時間実施することになっているのですが、私はその3ヶ月のうち2ヶ月半近くヒューストンを離れていたわけで・・・

同期のパイロットに頼んで一緒に飛んでもらったり、何とか12時間の訓練を終えることが出来ました。

他にも、中断していたCAPCOM(キャプコム)訓練を再開したりと、かなり充実した1ヶ月でした。CAPCOM訓練については、またいずれコラムで書きますね!

今月のトピックは先月に続き、モスクワでのロシア語没入訓練についてです。

私が訪れた2~3月という時期は、厳寒の冬から徐々に春へと移行していく季節なのですが、私のように日本の関東以南で育った者にとっては、マイナス20~10℃と言われてもいまいちピンとこず、一体どれくらいの寒さなのか見当もつきませんでした。冬のロシア=厳寒というイメージだけ先立って、とりあえず着るものはなるべく暖かいものを、と出発前から念入りに準備しました。上着は重ね着のしやすいものにして、手袋は2重、帽子は耳まですっぽり収まるものにしました。靴にいたってはマイナス50℃での使用に耐えられるブーツを用意していったのですが、冬山の登山に行くわけでもあるまいし、さすがにこれはやり過ぎだったようで(笑)、街歩きにはもっぱらスニーカーを使っていました。

実際行ってみてどうだったかと言うと、私の滞在中は奇跡的にほとんど雪が降らず、気温がマイナス10℃を割ったのも数日間しかなく、予想以上に「快適に」過ごすことが出来ました。私は外国の街歩きが大好きなので今回もかなり歩いたのですが、歩いている間はむしろ暑いくらいです。ただ、少し立ち止まっていると身を切るような寒さが襲ってきますが。。。

驚くべきはモスクワの雪への対応力のすごさで、ある夜深々と雪が降ったのですが、翌朝早くから道路には雪かき車が行き来して、私が授業に行く頃には道路上にはほとんど雪が残っていませんでした。

もう1つ、モスクワで驚いたのがメトロです。巨大都市だけあって、モスクワはメトロが市内中に張り巡らされていて、市内の主要部にはメトロと徒歩でほとんど行くことが出来ます。年々整備が繰り返されているのですが、駅や使われている車両は一般的に古く、そして一日中人で溢れかえっています。すごいのは、ラッシュアワーともなるとホームには引っ切り無しに電車が滑り込んできて、前の電車の最後尾が見えなくなる頃には、次の電車のヘッドライトがホームに差し込んでくる程です。

「これ、一体どうやって運行管理してるんだろう?」と正直心配になってきますが、それでも毎日数え切れない人を運んでいるわけですから、しっかりと実績に裏打ちされた安全性があるのでしょう。このあたりは、古いソユーズロケットをマイナーチェンジを重ねながら今でも使い続けているロシアの宇宙開発を連想させるものがありました。良いものは古くなってもずっと使う、というのはロシアの国民性なのでしょうか。

モスクワで会ったロシア人たちの全体的な印象としては、とても親切な人が多いです。アメリカ人のような初対面での愛想の良さといったものが重視されていないのか、一見無愛想な感はありますが、こちらが困っていると本当に親身になって良くしてくれます。ロシア語を教えてくれた先生方もそうですが、街中の警備員にいたるまで、今回の滞在中本当に色々な方にお世話になりました。

ロシア語の授業では、文法の総復習から会話練習、読解と幅広くこなしました。他にもロシア映画を見たりもしたのですが、その中のある映画について今回はご紹介しましょう。

『Ирония судьбы, или С лёгким паром!』(邦題:運命の皮肉)という映画で、製作されたのが旧ソ連時代の1975年ですから古典的な作品になります。ロシアでは国民的人気を誇る作品で、老若男女知らない人はいないのではと思われるくらい、誰に聞いても「ああ~、あの映画か」というリアクションが返ってきます。何でも大晦日~元旦にかけて家族で見るのが定番になっているらしいです。日本で言えば紅白歌合戦のような位置づけでしょうか。

内容はドタバタラブコメといった感じなのですが、驚くべきはその設定で、モスクワとレニングラード(現・サンクトペテルブルク)という700km近く離れた2つの街の同じ名前の通りの同じ番地に、なぜか同じようなマンションが建っていて、部屋の間取りもほとんど同じ、置かれている家具もほとんど同じ、しかも使われている鍵まで同じという2つの部屋が存在して・・・

というビックリ仰天な設定なのですが、そのことが2組の男女の運命を狂わせていくという内容になっています。私たち日本人の感覚からすると、作り話でしか有り得ないようなその設定さえ受け入れてしまえば、あとは俳優たちの上手な演技や歌など、とても楽しい映画です。

ところが!ロシアの人々に言わせるとなんとこの設定、決して絵空事ではないらしいのです。当時社会主義体制下にあったソ連では、同じ間取りのアパートが各地で建てられ、お店に行っても同じものが並んでいるという状態だったようです。ホストファミリーのお母さんに聞いても、「小学生の頃、友達の家に行くと自分の家と同じ家具が置いてあって、ここは自分の家かと思った」とか。

写真:モスクワの宇宙飛行士記念博物館。宇宙ファン必見の博物館です。宇宙犬、ベルカとストレルカにも会えますよ!

モスクワの宇宙飛行士記念博物館。宇宙ファン必見の博物館です。宇宙犬、ベルカとストレルカにも会えますよ!

どうです?私たちのお隣の国、ロシア。近いようで遠い国、ロシア。何となく興味がわいてきませんか?国と国の関係は人間関係と一緒で、まずはお互いを良く知ることから始まるのではないでしょうか。ロシアの人々は日本の文化に非常に興味を持っています。村上春樹さんの小説や日本のアニメは、現地でもとても人気があります。このコラムを読んで下さった方々が、少しでもロシアという国に興味を持って頂けたら幸いです。

※写真の出典はJAXA



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