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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポート 2013年11月

最終更新日:2013年12月20日

JAXA宇宙飛行士の2013年11月の活動状況についてご紹介します。

若田宇宙飛行士がISS長期滞在を開始

ソユーズ宇宙船に搭乗する若田宇宙飛行士ら(出典:JAXA/NASA/Bill Ingalls)

11月7日、若田宇宙飛行士が搭乗したソユーズTMA-11M宇宙船(37S)がカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、同日、若田宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在を開始しました。

若田宇宙飛行士が搭乗したソユーズ宇宙船の打上げに際し、JAXA宇宙飛行士はさまざまな形で若田宇宙飛行士の打上げを支えました。

古川、星出、金井宇宙飛行士は、打上げの数日前からバイコヌール宇宙基地で打上げの支援業務に従事しました。古川宇宙飛行士は、ソユーズ宇宙船打上げ直前の審査会や技術調整会にJAXA宇宙飛行士を代表して参加し、関係機関との調整役を務めました。星出、金井両宇宙飛行士は、関係者や家族のサポート、広報対応などにあたりました。野口宇宙飛行士は打上げ当日、日本国内にて関係者に対して打上げ状況の技術解説などを行いました。

若田宇宙飛行士はISS長期滞在開始後、精力的にミッションをこなしています。

超小型衛星の搬出準備を行う若田宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)

11月19日と20日には、「きぼう」日本実験棟から超小型衛星が放出されました。若田宇宙飛行士は、「きぼう」船内実験室からエアロックを通して船外に超小型衛星を搬出する作業や、地上の運用管制チーム(JAXA Flight Control Team: JFCT)と連携して超小型衛星を宇宙空間に放出する作業などを行いました。

「きぼう」船内での実験に関連する作業としては、若田宇宙飛行士は、「重力による茎の形態変化における表層微小管と微小管結合タンパク質の役割」(Aniso Tubule)実験の開始準備や、成長したシロイヌナズナを地上から観察できるようにするための支援作業などを行いました。この実験は、植物が重力に耐える体を作るしくみの全容を探る目的で行われています。JAXAの医学分野の実験では、「長期宇宙飛行時における48時間心臓自律神経活動に関する研究」(Biological Rhythms48)のために、携帯型のホルター心電計を身につけて48時間心電図記録を行いました。若田宇宙飛行士は、NASAや欧州宇宙機関(ESA)の医学実験も行っています。

若田宇宙飛行士のISSでの最新の活動状況は以下のページをご覧ください。

若田宇宙飛行士最新情報

油井宇宙飛行士、ISS長期滞在に向けた訓練を実施

国際宇宙ステーション(ISS)の第44次/第45次長期滞在クルーである油井宇宙飛行士は、10月に引き続き、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)で、ソユーズ宇宙船とISSのロシアモジュールに関わる訓練を行いました。

写真:より大きな写真へ

ソユーズ宇宙船のシミュレータで訓練を行う油井宇宙飛行士(奥)とオレッグ・コノネンコ宇宙飛行士(手前)(出典:JAXA/GCTC)

ソユーズ宇宙船については、飛行中にさまざまな不具合が発生した場合を想定した対処訓練や、手動操縦によるISSへのドッキング訓練、ソコル宇宙服を着た状態で手順書を参照しながらソユーズ宇宙船内の機器を操作する訓練などを、ソユーズ宇宙船の実物大のシミュレータを使用して行いました。

ロシアモジュールについては、コンピュータシステムやロシアモジュール内の装置を制御するシステム、ISSの姿勢や軌道を制御するシステムについて訓練を行いました。

大西宇宙飛行士のISS長期滞在が決定、記者会見を実施

写真

会見を行う大西宇宙飛行士(出典:JAXA)

11月29日、大西宇宙飛行士が、国際宇宙ステーション(ISS)の第48次/第49次長期滞在クルーに任命されたことが発表されました。

大西宇宙飛行士は、2016年6月頃から約6ヶ月間、第48次/第49次長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSに滞在する予定です。

ISS長期滞在決定が発表された同日、大西宇宙飛行士が滞在する米国ヒューストンとJAXA東京事務所をTV会議システムで繋いで記者会見が行われました。

記者会見の中で大西宇宙飛行士は、ミッションに向けた抱負や関係者への感謝を述べました。会見の後半では質疑応答が行われ、会見に集まった報道関係者からの質問に答えました。

大西卓哉宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在の決定について
ISS長期滞在が決定した大西宇宙飛行士が記者会見を実施

油井・大西・金井宇宙飛行士による活動報告「新米宇宙飛行士最前線!」


皆さん、こんにちは!

そして、大西さん、長期滞在決定おめでとうございます!

私も、2009年に一緒に選ばれた仲間がアサインされた事は、本当に嬉しいです!今後も助け合いながら一緒に頑張っていきたいと思います!

さて、今年日本では「倍返し」という言葉が流行ったと伺いました。きっとこれは、啓示かもしれませんね。そうです!昨年私の他己紹介をしてくださった大西さんに「倍返し」です!

私と大西さんの出会いで覚えているのは、やはり最終選抜の際の出来事です。大西さんも、私の第一印象は「普通の眠そうなおじさん」だったようですが、私の大西さんに対する第一印象も似たようなもので、「普通のイケメンパイロット」でした!ただその後、頭脳明晰と聞き、世の中には本当に恵まれた才能を持っている方がいるのだな。と思った印象があります。

皆さんは、大西さんが選抜された理由について何をご存知ですか?きっと一番最初に頭に浮かぶのは、「エンターテイナー」でしょうか(笑)。選抜試験の番組や本をご覧になった方々は、閉鎖環境試験で出されたある課題で大西さんが行った「1人オペラ」についてご存知かもしれませんね。全てを説明するのは、難しいですが、あの課題で大西さんの印象が変わったのは事実です。私もあのオペラを見て涙しましたから。(でも、私が泣いたのも、閉鎖環境という特殊な環境で、娯楽に飢えていただけかもしれませんね(苦笑)。)

ただ、大西さんの魅力は当然エンターテイナーとしての能力だけではありません。大西さんが優れているのは、実は他の方をサポートするフォロアーシップの能力です。選抜試験の最中も、何度か大西さんと同じグループになって、作業やディベートをしましたが、大西さんは、誰かがリーダーシップを発揮している時に、本当にさりげなくサポートしてくれるのです。誰かがリーダーシップを発揮している時に、大西さんから「そうですね。それはうまくいきそうですね。」などと言われると、リーダーとしても安心してプランを実行できますし、「それは、駄目です!それを変えることは、目的の変更につながり、全体がうまくいかなくなりますよ!」などと言われると、助言が的を射ているだけにとても助かるのです!(生まれた時期によっては、優れた軍師になった事でしょうね。)

更に、人間関係を作り上げるのが上手で、いろいろなタイプの方と会話で打ち解けていく能力はとても素晴らしいものがあります。NASAでトレーニングを受けていても、いろいろな方々の信頼を得ているのがよくわかります。今回、長期滞在決定時の記者会見でも、人々に親しまれる飛行士になりたいとコメントを述べておられましたが、大西さんの能力を持ってすれば、さほど困難ではないでしょう!イケメンということで、女性の宇宙に対する関心を深める分野で活躍が期待出来そうですね(笑)。一方私は、中年の星となるべく別の分野で頑張ります!

さて、ここまではお決まりの、どこにでもあるようなお話ですので、皆さんが期待している裏話に移りましょう。

選抜試験の際、私はある時から大西さんに非常に親近感を覚える様になりました。その理由は?大西さんも私も絵が非常に苦手という所です。私達の閉鎖環境での生活の様子を絵で表すという、私が最も苦手とする課題の際に、ふと大西さんの様子をみると、大西さんもかなり苦戦しているようでした。結果をみれば明らかで、大西さんと私の絵は、まるで幼稚園児が描いた絵の様になっていました。更に、折り鶴の課題では、最初に指定された時間では間に合わずに、やはり大西さんと私だけが最後の最後まで時間を見つけて折り鶴をしていた事を思い出します。(参考:絵と折り紙課題は、金井さんの得意分野でした。金井さんの作業は、早く美しくと言った感じて、私と大西さんとは対照的でした(笑)。)

絵を上手に書く能力などが重視されていたら、大西さんと私が選ばれる事はなかったでしょうね。でも、大西さんと私が大きく異なるのは、大西さんは芸術のセンスをお持ちだという事です。オペラをみたり、様々な分野の映画をみたり、音楽を聞いたりしていることもあり、一緒に食事にいくとチョットした評論家ぶりを発揮してくれます。また、その際には特有のこだわりがあって、とてもユニークなんですよ!例えば、お気に入りの映画のお気に入りのシーンの解説をさせると、1時間は余裕で話ができるのではないでしょうか?そして、そのシーンというのが、かなりのマニアでないと、気づきもしないし、思い出せないようなシーンなのです(笑)!その解説が始まると、私などは得意の「聞き流し&相槌」に入ってしまうのです…(「油井さん!あの時、油井さんも凄いよね!とか言ってたじゃないですか!覚えてないんですか?!」なんてあとで責められることもしばしば…)

大西さんの事を書き始めると、様々なことが頭に浮かんで、正直話題には事欠きません。私にとって大西さんは、本当に信頼できる友人であり、切磋琢磨できるライバルでもあります。とても仲が良いので私の妻も少々嫉妬することもあるようです。先日も、昼休みに一緒に中華料理を食べに行ったところを、他の奥様達に目撃され、その情報が夕方までに私の妻の耳に入りました。

私「ただいま~」
妻「おかえり~。私、今度中華料理を食べに行きたいんだけど…そうそう!○○ね!」
私「いいよ~。(おいおい、今日の昼に行っちゃったよ。また明日行くのか~)」
妻「(ニヤニヤ)大西さんと楽しそうに話してたんだって~。仲良いよね~。」
私「(わっ。もう知っているの!)」

女性ネットワークの凄さを改めて思い知りました(笑)!

大西さん!お店を潰さない程度にまた一緒に食事に行きましょうね!ロシアでの訓練のツボをしっかり伝授させて頂きます!

改めて、本当におめでとうございます!そして、一緒に頑張りましょう!

写真

飛行士候補者に選抜された直後の写真です!いや~、流石イケメン飛行士!大西さんは笑顔もさわやかですね!ちなみに、全く違う顔ですが、米国人には少し判別が難しいのか、よく大西さんと間違えられます。何と光栄な事でしょう(笑)!(実はTakuya, Kimiya と名前が似ていて、二人ともパイロットだったという経歴の類似性から、間違えてしまうようです。)

※写真の出典はJAXA



人の一生の間で、「人生を変える1本の電話」と呼べるものはそうそう多くはないでしょう。私にとって、それはこれまでの37年間のなかで3度ありました。

1度目は大学4年の時、前職の会社の人事担当者から受けた、パイロット訓練生としての採用内定の連絡。2度目は2009年の2月、JAXA宇宙飛行士候補者選抜試験担当者からの、宇宙飛行士候補者としての採用決定の電話でした。

そして3度目の電話は、つい先日アメリカ時間11月28日の朝、現在の上司である宇宙飛行士運用技術部長からの電話でした。

「2016年に予定されている第48/49次長期滞在クルーとして、大西さんの国際宇宙ステーション(ISS)搭乗が国際間で正式に承認されました」

という連絡です。

JAXAに入社してから4年半、ずっとISS長期滞在を目標に訓練してきたわけですから、今回の電話はある意味、人生の同じベクトルの線上にあると言えます。そういう意味では、ベクトルの方向自体を大きく変えた前の2本の電話と比べると、少し性質は異なるかもしれませんが、これまで漠然としていた未来が具体的な形を成したという点で、やはり私にとって大きな意味があります。

具体的な目標が定まってやるべきことがはっきりした分、これまでよりもシンプルな生活が待っていることでしょう。

この場をお借りして、これまで公私にわたり私の訓練・生活を支えてきて下さった方々にお礼申し上げます。今回の搭乗決定は自分ひとりの努力でなし得るものでは到底ありません。訓練で指導して下さったインストラクターの方々、国際間の調整に奔走して下さった多くの方々、日頃からJAXAを応援して下さっている皆様、本当にありがとうございます。将来のミッションでISSの利用成果拡大のために少しでも良い仕事が出来るよう、今後の訓練も引き続きがんばります!

さて、今月は他にももう一つ書いておきたいことがあります。それは現在ISSで起こっているある問題についてです。既に報道されているので、ご存知の方も多いかもしれません。

12月11日、ISSの2つある外部冷却システムのうちの1つが停止しました。停止した原因は、システム内のアンモニアの温度が低くなりすぎた為です。

この問題について語る前に、ISSにおける冷却システムの重要性について多少説明しておく必要があるでしょう。ISSは巨大なシステムの集合ですが、その中でも重要なシステムが3つあります。すなわち、生命維持システム、電力システム、冷却システムです。

生命維持システムは、私たち宇宙飛行士がISSに居住し活動できるように、空気を循環させたり、温度を調節したり、酸素を作り出したり、空気中の二酸化炭素を取り除いたりしています。文字通り、人間が生きていく為に必要なシステムです。

そしてそれらの装置や、実験に使用される装置、その他ありとあらゆる機器が作動する為には、当然電力が必要になり、それを供給するのが電力システムになります。ISSではこの為に、巨大な太陽電池パネルが使用されています。皆さんもご家庭で電気を使われているでしょうから、電力システムの重要性はイメージしやすいかと思います。

ISSにおいて、この電力システムと切っても切り離せない関係なのが、実は残る冷却システムなのです。なぜなら、電気を発生させたり電気を使用したりといった過程で、必ず熱が生じます。そしてその熱を適切に排熱してやらないと、その機器はオーバーヒートしてしまうからです。

電力システムと冷却システムは表裏一体で、お互いが正常に作動する為には、お互いの存在が欠かせません。冷却装置がないと電気機器は故障してしまいますし、そもそも電気がないと冷却装置も動かせません。

ISSを支えるこの2つの根幹システムには、当然のことながら多重のバックアップが備えられています。その為、ISSには2つの独立した外部冷却システムがあるのです。ここで「外部」と書いてあるのは、ISSの外部に設置されている機器を冷やしているシステムだからです。当然、内部冷却システムというものがあり、こちらはISSの内部の機器を冷やしています。

内部冷却システムで集められた熱は、熱交換器によって外部冷却システムに受け渡され、宇宙空間に張り出したラジエーターパネル(放熱板)から宇宙空間へと「捨てられる」わけです。

外部冷却システムにはアンモニアが使用されています。水などと比べて、効率的に熱を運べる半面、人体には有害な物質になります。そのアンモニアの温度が低くなりすぎた為に、システム自体が自動的に停止したというのが12月11日に起きた事象になります。この1冷却システムの停止自体によって宇宙飛行士に危険が及ぶことはありませんが、ISSのシステムに対しては大きな影響があります。その為、地上の管制官の訓練では定番中の定番とも言える不具合で、その対処方法については日頃から訓練が積まれており、今回の不具合発生時も決められた手順に従って地上の管制チームによってすぐに停止した冷却システムの再起動が行われたのでした。

実際、再起動は成功しました。

しかし、アンモニアの温度は依然として低いままだったのです。このままでは、外部冷却システムと内部冷却システムの間で熱を交換することが出来ません。内部冷却システムには人体への安全性を考慮してアンモニアの代わりに水が使用されており、極低温のアンモニアによってその冷却水が凍結してしまう恐れがあるからです。

NASAの技術者たちによって原因が調べられ、その結果、アンモニアを循環させるポンプ装置に不具合があることがわかりました。より具体的に言うと、その装置の中の1つのバルブが、指示された通りの動きをしていないというものでした。このバルブは、わかりやすく言うとラジエーターパネルに流れ込むアンモニアの量をコントロールしています。それによって放熱される熱量をコントロール、つまりシステム全体のアンモニアの温度をコントロールしているのですが、そのバルブがある一定以上閉じられなくなっているのでした。それによって必要以上のアンモニアがラジエーターに流れ込み、必要以上の放熱を行っているという状況になります。

原因が判明してから、それを解消する為の方法について膨大な議論が行われました。しかし残念ながら、バルブ自体の動作を修正する方法はなく、代わりに他のバルブの開度を調節することによってアンモニアの温度をコントロールしようという案が出され、試行錯誤を繰り返したのですが、いかんせん本来そのような役目を負っていないバルブなので、状況を打開するには至っていません。

NASAは問題の発生当初から、システムを復旧出来ない場合はポンプ装置自体を船外活動で交換することを想定し、不具合の対策と並行して準備を進めてきました。また同時に、残されたもう一方の冷却システムが停止した場合の最悪の事態に備え、その対処法についても議論が重ねられました。

そうして12月17日火曜日、ISSプログラムはポンプ装置を交換する為に船外活動を実施することを決定しました。現時点では3回、作業の進捗状況によっては2回の船外活動が必要と見られており、最初の船外活動は今のところ21日土曜日に実施されることになっています。

船外活動は2名のアメリカ人飛行士によって行われますが、若田飛行士はロボットアームのスペシャリストとして、船内からこの船外活動を支援することになっています。また地上の管制チームの中には、星出飛行士もISSとの交信役として参加することが予定されており、この事態の解決に向けて2名の日本人宇宙飛行士の活躍が期待されます。

船外活動の模様は、NASAのウェブサイト上で中継されると思いますので、ご興味のある方はこちらからご覧下さい。(このコラムの公開が20日なので、見逃された方はごめんなさい)

ISSは人間の科学技術の結晶とも言える巨大なシステムですが、人間が作り出したものである以上、不具合とは無縁ではいられません。今回の不具合が発生したことは残念ではありますが、この経験から私たちは多くのことを学べるはずです。それらがこれから先の新しいシステムの設計に反映され、将来の宇宙開発に生かされるものと信じています。

写真

船外活動に備え、船外活動服の点検を行っているRick Mastracchio飛行士

※写真の出典はJAXA/NASA



先日、9月にカナダで訓練を受けてロボットアーム・オペレーターの資格を取得しました。その後11月より、ヒューストンのジョンソン宇宙センターで、引き続きロボットアームの訓練を受けています。

カナダで学んできたのは、宇宙ステーションに備え付けの「カナダアーム2」というロボットアームの基本。どういう仕組みで動いているのか、故障が起こったらどう対処するのか、操作方法はどのようなものか、まったく知識のないゼロの状態から教わってきました。

一方、ヒューストンに戻ってからの訓練は、習ってきた基礎知識をもとに、①ロボットアームの先端に宇宙服を着た宇宙飛行士を乗せて船外活動のサポート、②「こうのとり」をはじめとする宇宙船を、ロボットアームを使って捕まえる(われわれは「キャプチャー」と呼んでいます)訓練を重ねます。

ヒューストンでの訓練を始めてびっくりしたのは、訓練のやり方が、カナダとは全く違うことでした。

カナダの訓練は、座学から始まり、基本知識を勉強。その後、教官と一緒にシミュレーターで実際にアームを操作。慣れてきたところで、自分ひとりで操作を行うための練習を繰り返し、最後に試験。まるで自動車教習所のようなスタイルです。

今どきの若者を「マニュアル世代」などと悪く言うこともありますが、わたしは典型的なマニュアル人間なので、こと細かく「こうする」「ああする」と教えてもらうと、夢中になって勉強が進みます。

習ったことを、状況に応じてきちんと実施すれば、テストでも良い評価をもらうことができるので、頑張れば頑張っただけの成果が得られるように感じられるのです。

一方、ヒューストンに戻ってからの訓練は、雰囲気が全然違いました。

宇宙ステーションで使われているような手順書を渡され、「じゃ、見ててあげるから、ひとりでやってみて。基本はカナダでやってるんだからできるでしょ」と、教官の一言。

ロボットアームを動かすための手順の基本は習ってきましたが、急に、実際の宇宙ステーションのオペレーションに近い形でシナリオを流すのは初めてです。

全長17メートルの巨大なロボットアームを宇宙ステーションにぶつけでもしたら大惨事ですから、おっかなびっくり、何度も安全を確認しながらアームを動かしていきます。

すると教官から「時間は1時間以内ね。そんなゆっくりだと最後まで終わらないよ。もっと急いで、急いで」とプレッシャーがかかります。

安全を考えてなるべく宇宙ステーションに近づかないように操作をしていると、船外活動中の宇宙飛行士(教官が演技をするだけですが)が、「もうちょっとアームを近づけてくれないと手が届かないよ」などと、わざと難しいところに誘導されます。

わたしだけに限らないと思うのですが、人間誰だって失敗するのは嫌ですから、なるべくそれを避けるように行動しがちです。

しかし、ヒューストンでの訓練では、あえて細かく説明をしなかったり、プレッシャーをかけたり、ときにはわざと悪い状況に誘導したりして、故意に生徒に失敗をさせ、その失敗から物事を学ぶというプロセスを大事にしているように思えます。

毎回の訓練セッションのあと(たいてい何かしらのミスをして)に、何が悪かったか、どんなことに気をつければ良いかをみっちりとデブリーフィングされるので、「自分は本当にダメだなぁ」と落ち込むこともしばしばです。

注意を受けた失敗を繰り返さないように、自分なりのスタイルを確立していかないといけないのですが、「普通はこうやる」という基本の形がないので、そこが難しくもあり、また面白いところでもあります。「カナダ式」に比べて、個人の資質や創造性に左右されるような気がして、ちょっと難しく感じています。

ところで、このように現実には起こりえないような悪い状況を設定して訓練を行うというのは、宇宙飛行士に限らず、たぶん管制官の訓練でも同様だと思います。

シミュレーションの中では、次から次に機器の故障や不具合が発生し、その中で宇宙ステーションや宇宙船の安全を守り、ミッションを成功させないといけません。優秀な管制官チームの場合は、数々の不具合を見事にリカバーして任務を達成することもありますが、うまく対処ができずに終わってコントロールセンター全体が重く暗い雰囲気に包まれるのをクルー役(インストラクターと一緒になって、管制官に訓練を行う側)として何度か見たことがあります。

その根底には、訓練において失敗することは悪いことではなく、その中で、次に失敗しないためにはどうすれば良いのかという学びの機会を得ることが重要であるという、強い考え方があるように思われます。

自分はこれまでに、こういった教育を受けたことがなかったので、失敗のたびにストレスを感じる反面、なかなか面白い教育方法だと興味も惹かれます。

アメリカ特有のスタイルなのか、あるいは宇宙開発の業界のスタイルなのか・・・?

個人的な経験になってしまいますが、上記の「カナダ式」でも「ヒューストン式」でもない教育を、以前に受けたことがあります。

もうずいぶん前になってしまいましたが、外科医として勉強を始めた頃は「人のやり方を見て真似る」というところから始まりました。手術に入っても最初は手出しは許されず、指導医や先輩医師のやり方を見るだけ。手術に入るたびにテキストで手順を勉強し、イメージトレーニングを重ね、1~2年すると、簡単な作業だけ、手伝いをさせてもらえるようになります。何度も目で見て、勉強して、イメージトレーニングを続けてきているので、初めてのことであっても、何とかこなすことができます。うまくできるようになると、「じゃあ、次はこれをやってみろ」と、また別の部分を任されるようになります。こうやって、少しずつ「できること」が増えていき、最後には複雑な大手術も、最初から最後までひとりで行うことができるようになるのです。

これは職人の徒弟制度にも似た、日本的な(?)アプローチであるような気がします。「型より入って、型より出る」といいますが、先生や先輩の真似をしながら学び、だんだん自分のスタイルを確立するというは自分の性に合っていたような気もします。

結局のところ、教育方法・訓練スタイルに「これが正しい」という正解はありません。生徒が必要な技能を身につければ良いだけのことです。

新人宇宙飛行士としての自分の仕事は、訓練を受けて技能・知識を身につけることなのですが、こうやっていろいろな方法論に出会うのが面白くも思えます。


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