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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポート 2013年10月

最終更新日:2013年11月21日

JAXA宇宙飛行士の2013年10月の活動状況についてご紹介します。

ISS長期滞在を目前に控えた若田宇宙飛行士の活動


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ソユーズ宇宙船の最終試験に臨むソユーズTMA-11M宇宙船搭乗クルー(左から若田、チューリン、マストラキオ宇宙飛行士)(出典:JAXA/GCTC)


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ソコル宇宙服を着用し、打上げ時のコンフィギュレーションになったソユーズ宇宙船内を確認するクルー(左から若田、チューリン、マストラキオ宇宙飛行士)(出典:S.P.Korolev RSC Energia)

11月7日に国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在を開始した若田宇宙飛行士は、10月はロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)でミッションに向けた最終訓練を行いました。

若田宇宙飛行士は、ロシアのミハイル・チューリン宇宙飛行士と、NASAのリチャード・マストラキオ宇宙飛行士と一緒に、ソユーズ宇宙船のISSへのランデブやドッキング運用の最終訓練を行い、訓練の最後にはソユーズ宇宙船の飛行を模擬したシミュレーションと、ISS滞在中のロシアモジュールでの作業を想定したシミュレーションを行いました。訓練のほかに、滞在中の任務や活動について、ロシアの関係者と打ち合わせも行いました。

GCTCでの全ての訓練を終えた若田宇宙飛行士らは、10月15日と17日に最終試験に臨みました。1日目はISSのロシアモジュールの試験を受け、2日目はソユーズ宇宙船の試験を受けました。それぞれの試験は、実物大のシミュレータを使用して行われ、さまざま不具合や緊急事態が立て続けに発生する中で、クルー全員で協力しながら適切に対処を行い、異常事態を切り抜ける技術が試されました。

2日間の試験を終え、若田宇宙飛行士らは10月22日に正式なソユーズ宇宙船の搭乗クルーとして認定されました。同日、若田宇宙飛行士らは、打上げ前のGCTCでの伝統的なセレモニーや記者会見に参加しました。

10月26日にはGCTCからカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地へ移動し、整備が進むソユーズTMA-11M宇宙船の確認や、ソユーズ宇宙船搭乗時に着用するソコル宇宙服のフィットチェックなどを行い、打上げに向けた最終準備を整えました。

若田光一宇宙飛行士 ISS第38次/第39次長期滞在ミッション

油井宇宙飛行士はISS長期滞在に向けた訓練を継続

国際宇宙ステーション(ISS)の第44次/第45次長期滞在クルーである油井宇宙飛行士は、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)で、ソユーズ宇宙船とISSのロシアモジュールに関わる訓練を行いました。

ソユーズ宇宙船については、軌道モジュールと帰還モジュール内に備えられている装置や設備の位置や名称、機能、操作方法などを学びました。シミュレータを使用して、ソユーズ宇宙船で飛行する間の運用を想定したシミュレーションも実施しました。

ロシアモジュールについては、機器を扱う上で参照する手順書の読み方や、ISS滞在中に日々行う定常的な作業について訓練を行いました。ロシアモジュールのコンピュータシステムや、ロシアモジュール内の装置を制御するシステムについての訓練も行いました。その他、ISSのロシア区画内で安全に作業を行うための注意事項について講義を受けました。

古川宇宙飛行士、国内で航空機操縦訓練を実施

古川宇宙飛行士は、10月8日、9日、11日の3日間にわたって、埼玉県比企郡川島町にあるホンダエアポートにて、航空機操縦訓練を行いました。

この訓練は、宇宙飛行士に必要なマルチタスク能力や判断能力を向上する目的で行われました。飛行中は、航空機を操縦しながら現在地の確認や天候の確認、地上との交信などを同時に行い、刻々と状況が変化する中で適切な判断が求められます。

野口宇宙飛行士、宇宙探検家協会のメディアイベントに参加

野口宇宙飛行士は、10月25日、ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館で、小惑星の脅威をテーマに開催された宇宙探検家協会(Association of Space Explorers: ASE)のメディアイベントに参加しました。

このイベントには、アポロ9号で飛行したNASAのラッセル・シュワイカート宇宙飛行士や、スペースシャトルでの飛行経験豊富なNASAのトーマス・ジョーンズ宇宙飛行士など、野口宇宙飛行士のほかに、現在は退役しているNASAとルーマニアの4名の宇宙飛行士が参加しました。

イベントでは、小惑星が地球に衝突する脅威と被害を防ぐための対策について話し合われ、野口宇宙飛行士は、国際協力の大切さを語るとともに、将来、小惑星の位置や軌道を正確に知るために、小惑星探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」で培われた技術が貢献できることを訴えました。

筑波宇宙センター特別公開において古川宇宙飛行士が講演を実施

古川宇宙飛行士は、10月19日に開催された筑波宇宙センター特別公開で、「古川宇宙飛行士と話そう」と題した講演を3回にわたり実施しました。

講演の冒頭で、古川宇宙飛行士は国際宇宙ステーション(ISS)や「きぼう」日本実験棟について紹介し、「きぼう」でどんな実験を行っているのかを解説しました。

解説に続いて、宇宙と地上の違いや宇宙に行くことによって身体に起こる変化について会場に集まった来場者に紹介するために、「宇宙で難しい運動は?」「宇宙で足の裏はどうなる?」といったクイズを古川宇宙飛行士が出題し、自身がISS滞在中に撮影した映像・写真を交えながら、宇宙と地上の違いや身体の変化をわかりやすく説明しました。


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質問タイムの様子(出典:JAXA)

クイズコーナーが終わると、古川宇宙飛行士と直接話すことができる本講演目玉の質問タイムとなり、会場からはたくさんの質問が寄せられました。質問に答える中で、古川宇宙飛行士は、宇宙から見た地球の存在感に感銘を受けたことや、地上に帰ってきてから暫くの間、横になっているときに足の上に誰かが乗っていると錯覚するくらい足の重さを強く感じるようになった体験などを語りました。古川宇宙飛行士は、質問がある度に質問者のすぐそばまで駆け寄り、質問に答え終わると質問者ひとりひとりと握手を交わしました。

最後に古川宇宙飛行士は、来場者にメッセージを送り講演を締めくくりました。

筑波宇宙センター特別公開開催レポート

油井・大西・金井宇宙飛行士による活動報告「新米宇宙飛行士最前線!」



皆さんお元気ですか?今月の宙亀日記もロシアの話題です!ロシアでの訓練は、とても大変なのですが、新しい事が学べるので、私にとっては天国の様な場所です。そして、私の家族には申し訳ないのですが、ロシアでの訓練中は自分の事だけに集中出来る環境が整っているので、米国にいる時よりも考え事をしたり、散歩したりする時間が多くあるのです。その辺りは、いつも米国で私の子供達の面倒を見てくれている妻に、とても感謝しています!

私のツイッターをご覧になって下さっている方々は、最近私が芸術のセンスを磨こうと努力しているのをご存知かもしれません。実は、私はこれまで芸術とは全く無関係の仕事をしてきましたし、芸術関係の趣味もありませんでした。ただ、芸術の重要性については、以前から痛感していて、他の方々の心に与える影響の大きさを考えた時、私も将来宇宙に行った際に自分自身の感動を多くの方々に知って頂くためには、出来るだけセンスを磨いておく必要があると考えるようになったのです!

また、以前もツイッターで書かせて頂きましたが、私を含め人間にはより豊かで、より良い生活を求め続ける本能がある様な気がします。その欲求には際限が無いようにも感じますが、当然全人類が物欲を追い求める方向に行くと、地球の環境がその欲求を満たす前に、破壊されてしまうでしょう。もし、人々が芸術でその心を満たす事が出来れば、地球の環境に対する負担は大きく軽減されると思うのです。いつも、「私は宇宙は無限の可能性を持っていて、挑戦すれば挑戦するほどそれに応えてくれる!」という話をするのですが、人間の心も実は無限の可能性を秘めていて、その創造力も無限大だと思うのです!

この事を最初に実感したのは、私が最初にロシアにきた際の事でした。モスクワで将来のプロピアニストを目指す方々の無料のコンサートを、多くのお年寄りの方々が聞いていて、双方が心を満たしている様子を見てからです。

現実的な話をすると、ロシアの物価は決して安くなく、日本と同レベルであると思います。しかし、一般の方々の給料は決して高いものではなく、生活は厳しいという印象を受けていました。そして、この様に厳しい生活でロシアの方々が、何処に幸せを見出しているのか、少し心配になっていたのです。でも、そのような心配をしていた私の方が、実は物欲や金欲の世界に毒されていたわけで、ロシアの方々は様々な所に小さな幸せを見つけて、生活していると感じました。

私は、宇宙飛行士として、皆様方の税金と多大な資源を使用して宇宙で仕事をさせて頂くわけですから、出来るだけ多くの成果を挙げる義務があります。これまで、私が述べてきたとおり、ISSは多くの実験成果や平和に対する貢献を挙げています。(残念ながら、これらが十分な評価を受けている状況ではありませんが、それは私の説明不足が原因であると、深く反省しています。)

私が、地球の素晴らしさ、人類の無限の可能性について、皆様方に実感して頂くためには、皆様方の心を動かすことができる感性を身につけておくことが、必要不可欠だと思っています。

私が宇宙に飛び立つまで、約1年半と多くの時間があるわけではありませんが、幸いなことに、ロシアは本物の芸術に触れる機会に恵まれています。私の感性を磨き、そして言葉や写真、私の行動など、あらゆる方法を使用して、有人宇宙開発の素晴らしさをお伝えしたいと思っていますので、今後ともよろしくお願い致します。



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ロシアには白樺の木が多く、とても綺麗です。白樺を若い女性に例えた歌や詩もあると聞きました。確かに、白くて、すらっとした姿は、ロシアの若い女性に見えなくもない…(笑)。そんな話を聞いてからは、風でざわめく白樺の林を見ると、女の子達が楽しそうに雑談している様子に見えてしまいます。

この話を、あるロシア人の方に話したところ… 「そうかな~。白樺は単なる木だね」と一蹴されました(苦笑)。こんな所が、人それぞれの感じ方の違いで、難しくもあり楽しいのかもしれませんね。

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ロシアは、間もなく冬です!10月の時点で雪は積もっていませんが、これも時間の問題でしょう。次回は、美しい雪景色を送りたいな~。などと思っていると、優しいロシア人の方が、昨年の冬の写真を分けて下さいました。間もなく始まる、長く、厳しく、しかし美しいロシアの冬の予告編と言った感じでご覧下さい!

おまけ

いつものように、妻に宙亀日記の評価を頼みました。今回は、どんな評価かとドキドキして待っていると…

妻:「今まで、家の中にお花を飾っても、私が髪を切っても、気がつかないことが多かったですが、これからは気付いてくれそうで楽しみですね。」

私:(うわーっ!厳しい所を突いてくる~! これからは、妻も芸術の先生として厳しく私を指導してくれそうな予感(笑)…)

※写真の出典はJAXA





みなさん、こんにちは。先月は休載させて頂いたので、2ヶ月ぶりになりますね。

10月前半、米国の一部政府機関が16日間にわたり閉鎖されたのはご存知でしょうか?原因は暫定予算案をめぐる与野党の対立だったのですが、それに伴い、NASAも一部の業務を除き閉鎖される事態となったのです。宇宙飛行士の訓練も、優先度の高いものを除き停止されるという異常事態でした。

一部の業務を除きと書きましたが、国際宇宙ステーションの運用など、現在実施中のミッションに関する業務は例外的に継続が認められ、幸い悪影響は出ませんでした。私は現在NASAの宇宙飛行士室でクルーサポート・アストロノートという業務を担当していて、期間中も変わらずその業務を行っていたので、いつも以上に忙しい毎日を送っていました。

以上が、前置きが長くなりましたが、先月のコラムを休載した言い訳になります(笑)

さて、今月はつい先日まで私が参加していた、「Field Maintenance Training」について書きたいと思います。直訳すると「実地整備訓練」ということになるのですが、実際には「飛行機整備訓練」と呼んだ方がわかり易いかもしれません。

訓練は10月28日から11月15日までの3週間にわたって、私たち宇宙飛行士が普段T-38ジェット練習機の飛行機操縦訓練を行っているエリントン飛行場で行われました。

NASAは現在T-38を20機ほど保有していますが、その整備作業を専門の整備士と共に実施するというのが、訓練内容になります。この訓練は非常に新しい訓練で、私が参加したコースはテストランを含めても2コース目になり、まだまだNASAとしても開発途中というところです。

ではなぜこのような訓練を開発しようとしているのでしょうか。

現在、軌道上で宇宙飛行士が行っている主な作業の一つに、ISSのシステム装置や実験装置のセットアップ・メンテナンスがあります。システムの制御や科学実験の実施の多くは、地上からの遠隔制御によって可能になっているのですが、それでも実際の装置の取り付けや実験サンプルの交換などには、どうしても宇宙飛行士の手作業が必要になってくるからです。

こういった手作業に必要なスキルは、いわゆる「日曜大工」に必要とされるスキルと似ています。つまり、工具の正しい使い方を理解して、作業マニュアルに従って正確に作業することです。ただ軌道上での作業が特殊なのは、工具の種類が相当な数に上ること、スペアパーツの数が限られていて、何か問題があったときに取る手段が限られていること、などでしょうか。

これらのスキルは基本的には回数を重ねることによって、ある程度の水準まで上達するものなのですが、個々の宇宙飛行士によって過去の「日曜大工」経験にばらつきがあり、そのばらつきを少しでも緩和する、スキルレベルの底上げを図るという目的で、ISSの長期滞在を経験した宇宙飛行士の声を元に今回の訓練の開発がスタートしたというわけです。

何しろ車社会のアメリカでは、大概の車のトラブルは自分でガレージで直してしまうという人も多く、そういった経験を日頃から積んでいる人とそうでない人の差は、かなり大きいのです。

私はと言うと、簡単な棚の組み立てなどはやったことがありますが、使う道具といってもドライバーやトンカチ程度で、ゲームで例えればレベル1の冒険者というところでしょうか。ここは将来の長期滞在に向けて、少しでも経験値を上げておきたいところです。

3週間の訓練中、T-38の整備部門の各部署を数日おきにローテーションで回りました。読んでいる皆さんの、「おいおい、整備作業ど素人が高性能ジェット機のメンテナンスなんて、大丈夫か」という声が聞こえてきそうです。

実際、今回の訓練に臨むにあたり、先輩飛行士の星出さんからも、

「頑張ってねー。とりあえずどの機体を整備したのかは、(乗りたくないから)教えてね

と心温まる励ましを頂きました。

しかしそこはやはり安全第一の航空宇宙業界ですから、訓練中は常に有資格整備士と一緒で、私が実施した整備作業は必ずその整備士が後で実施状況を確認し、さらに「検査官」と言われる専門家がダブルチェックを行うという万全の体制になっていました。

訓練を開始してまず私の前に立ちはだかったのは、数多くの工具たちでした。

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訓練中に使用した工具の「ごく」一部

初心者の私には一見して、どう使うのかもわからない工具がたくさんあります。ネジを締めるレンチひとつとっても、ラチェットレンチ、コンビネーションレンチ、トルクレンチなどなど・・・

しかもややこしいのは、アメリカではヤード・ポンド法が依然主流の為、長さの単位にインチが使われていたり、しかもその刻み方が0.1とかではなく、1/32とか1/16とかになっていて、

「おーい、そこの1/4インチ径のラチェットレンチに3インチの延長ソケット、1/4インチ径⇒3/8インチ径アダプターを取り付けてくれ」

などど指示されるわけです。最初のうちは、頭の中でどんな工具のことを言っているのかをイメージするだけでも一苦労でした。

NASAのT-38のメカニックたちは、みな超がつくほどのベテラン揃いで、20年以上の経験者がぞろぞろいます。油圧システム担当の部署で一緒になった年配の整備士の方など、「NASAで働き始めて、もう32年になる。その前は空軍で20年近く働いてたよ」と言っていました。

どの世界でもそうですが、プロというのはすごいですね。

ネジの頭を見ただけで、それが7/16インチ径なのか、3/8インチ径なのかすぐにわかりますし、例えばある工具を使ってボルトを締めようとして、それが周りの配管に邪魔されて上手く締められないような時でも、すぐにいくつかの工具を組み合わせて微妙な隙間からアクセス出来るようにしてしまいます。とにかく、問題が起こった時にそれを解決する為の方法を色々知っていて、その時々のケースに最適な方法ですぐに解決してしまうスピードは、見事と言うほかありませんでした。

他にも、ネジを受ける溝が擦り切れてしまってネジが締められない場合の対処や、きつく締めすぎているボルトの取り外し方なども習いました。

こういったトラブルは実際の軌道上でも頻繁に起こるので、非常に参考になりました。

今回の訓練で一番苦労したのは、T-38のエアコンの取り外し&取り付けです。

事の発端は、コックピット内で微量の煙が発生したという事例でした。状況から判断して、どうやらエンジン周りから発生した煙がエアコンを介してコックピットに流れこんでいるらしいということが判り、疑わしいパーツを交換するなどしていった挙句、最終的にエアコン自体が怪しいということになり、エアコンの心臓部を交換することになったのです。

エアコンが収納されているのは、機体下部の中央付近。そこのパネルを取り外すと、中の入り組んだ配管やケーブルが見えます。目指す心臓部は、それらのパーツの一番奥。非常に狭いスペースに芸術的に詰め込まれている配管を、一本ずつ丁寧に慎重に取り外していきます。

そうして出来た空間の中で、大きな心臓部パーツを時に回転させたりしながら2人で協力して取り出しました。ここまでで、作業開始から既に2時間近くが経過していました。まるで知恵の輪をやっているようだなと、思わず隣にいた整備士さんに

「これをデザインした人は、後で整備する時のことを考えてたのかな」

と漏らすと、

「ジグソーパズルみたいだろ?このエアコンの作業をしていると、周りに人が寄ってこなくなるんだ。みんな関わりたくないからさ。でも俺はこの作業が好きだけどな」

という答えが返ってきました。

私も全く同感です。チャレンジングな作業の方がずっとやりがいがありますし、それをやり遂げた時の達成感も大きいですもんね。

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エアコン収納部

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取り外されたエアコンパーツ一式

心臓部パーツは幸いスペアがあったので、その取り付けをその後行ったのですが、これは取り外しよりもずっと大変でした。ひたすら緩めて外していく取り外しとは違って、取り付けはそれぞれのパーツをしっかりと元の場所に戻していかないと、途中でどこかの配管が繋げなくなったりするからです。

整備士さんと2人で汗水たらしながら作業して、全てのパーツを元通りの位置に戻してパネルを閉じたのは、もうその日の勤務時間が終わろうとしていた頃でした。

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エアコンの取り付けに悪戦苦闘

翌朝、エアコンを交換した機体を早速テストしてみたところ、煙の再発は起こりませんでした。担当した整備士さんとガッチリ握手。

3週間に及んだ訓練で沢山のことを学びましたが、何よりも得がたいものは、私たち宇宙飛行士の訓練を縁の下の力持ちとして支えてくれている方々と一緒になって過ごした時間かもしれません。

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機体へのパネルの取り付け

※写真の出典はJAXA/NASA





先日、バイコヌール宇宙基地から飛び立った若田宇宙飛行士の打ち上げを見学する機会を得ました。
初めて実物を目にするソユーズロケットは、ソチ・オリンピックを祝う特別なデザインが描かれ、大変美しく印象的でした。

また、雲一つない広いカザフスタンの青空を、高く昇って行くロケットの素晴らしさには、声もなく、ただ見入るばかりでした。

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打ち上げられたソユーズロケットの光跡

これまでヒューストンや星の街での訓練や仕事、メディアでの報道を通して、知っているつもりになっていたソユーズ打ち上げでしたが、聞くのと見るのとでは大違いであることを強烈に実感させられた体験となりました。

理事長をはじめとしたマネージメント、打ち上げに関わるサポートのためのエンジニア、広報担当者と報道関係のみなさま、原田駐ロ大使をはじめとするゲストのみなさまと、さまざまなレベル・分野の関係者が、バイコヌールという小さな街に集まって、宇宙船の打ち上げという大きなイベントに臨みます。

集まったのは何も日本人関係者だけではありません。アメリカのNASAからも、ロシア本国からも、JAXAと同様に、それぞれの宇宙機関のトップクラスの役員、現場のエンジニア、宇宙飛行士、ゲスト、報道陣などが集まり、現地の宇宙基地の職員と一緒になって、半ば合宿のような時間を過ごしました。

この現場の空気というのは、テキストや訓練では決して学ぶことのできない“本物”の体験であり、今後、宇宙飛行士として仕事をしていく上でかけがえのない経験であったように思います。

打ち上げ直前まで繰り返される会議、打ち上げに向けての様々な情報が飛び交う中、粛々と準備が進んでいきます。

短時間ではありますが、打ち上げ直前の若田飛行士にお会いする機会がありましたが、ミッションに向けて体調も精神状態も充実して、研ぎ澄まされており、かといってピリピリと緊張しているわけではなく、ほどよくリラックスされている様子でした。

そういえば、現場で働くマネージャーやエンジニアも、真剣は真剣なのですが、「張りつめた緊張感」という感じはなく、むしろ長年の実績に裏づけされた自信に基づいて、一つ一つやるべきことをこなしていくというような、仕事っぷりだったように思います(打上げ直前はさすがに忙しそうでしたが・・・)。

見事な打ち上げが終わって数時間後には、ソユーズ宇宙船が無事に宇宙ステーションにドッキング。ハッチが開かれて、元気いっぱいに宇宙ステーションに入ってきた若田飛行士の笑顔を見たあと、関係者で集まって乾杯したビールの味の美味しかったこと!

ちなみに宇宙業界での、ロシア風(たぶん軍隊の風習が由来?)の乾杯は、「トゥリ(3)、チティリ(4)、ウラ!ウラ!ウラ~!!」とみんなで声を上げて、ショットグラスのウォッカを飲み干します。

アメリカ人もロシア人も日本人も関係なく、うまく言葉が通じなくても、みんな笑顔で「素晴らしかった!」「大成功!」などと大盛り上がり。やっぱり宇宙開発は素晴らしい!と改めて実感したしだいです。

※写真の出典はJAXA/NASA/Bill Ingalls



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