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JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポート 2013年2月

最終更新日:2013年3月26日

JAXA宇宙飛行士の2013年2月の活動状況についてご紹介します。

若田宇宙飛行士、ISS長期滞在に向けた訓練を実施

国際宇宙ステーション(ISS)の第38次/第39次長期滞在クルーである若田宇宙飛行士は、2月前半はロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)で、2月後半は筑波宇宙センターで、ISS長期滞在に向けた訓練を行いました。

GCTCでは、ソユーズ宇宙船や、ISSのロシアセグメントの運用に関わる訓練を行いました。若田宇宙飛行士は、ソユーズTMA-11M宇宙船(37S)で一緒に飛行するロシアのミハイル・チューリン宇宙飛行士、NASAのリチャード・マストラキオ宇宙飛行士の3人で、ソユーズ宇宙船のシミュレータを使用して、ISSへの接近およびドッキングと、ISSからの帰還を模擬した訓練を実施しました。若田宇宙飛行士らは、それぞれの運用において、異常が発生した際の対処も含め、運用手順を確認しました。3人は、ISS滞在中の緊急事態発生を想定した訓練も行い、ロシアセグメントで減圧が発生した場合と、ISSに結合しているソユーズ宇宙船で減圧が発生した場合のふたつのケースを、実際に減圧可能なシミュレータで模擬し、手順書に従って対処を行う方法を確認しました。

また、若田宇宙飛行士は3名での訓練のほかに、ISSで実施されるロシアの船外活動の支援作業の訓練として、船外活動クルーの船外への出入り口となる「ピアース」(ロシアのドッキング室)内の圧力を調節する操作についても訓練を行いました。これらの訓練以外に、ソユーズ宇宙船に搭乗する際に着用するソコル宇宙服のフィットチェックをその製造メーカーであるズベズダ社で行いました。若田宇宙飛行士は、与圧服を加圧した状態で、ソユーズ宇宙船のシートに座った際に、サイズに問題がないかなどを確認しました。

写真:GCTCでの訓練開始にあたり、ロシアの関係者を前に挨拶を述べる場に臨む油井宇宙飛行士

「きぼう」で実施する実験について、35Sクルーのカレン・ナイバーグ宇宙飛行士と一緒に訓練を受ける若田宇宙飛行士(出典:JAXA)

筑波宇宙センターでは、ソユーズTMA-09M宇宙船(35S)に搭乗するクルーのバックアップクルーとして、35Sのプライムクルーと合同で、「きぼう」日本実験棟と宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)に関わる訓練を行いました。

「きぼう」に関する訓練としては、35SクルーがISSに滞在する間に計画されている「きぼう」のシステムに関わる作業や、「きぼう」での実験に関わる作業について確認しました。

「きぼう」のシステムについては、滞在期間中の固有な作業に的を絞った訓練のほかに、「きぼう」のスペシャリストとして必要な運用技術・知識を再確認しました。

「きぼう」での実験に関しては、クルーが軌道上で実施する実験開始準備や実験終了後の作業についての訓練だけではなく、各実験の内容について理解を深めるために、各実験の代表研究者から、実験の概要や目的について説明を受けました。

「こうのとり」については、システムや運用の概要を学ぶ基本的な訓練に加えて、「こうのとり」がISSに係留する間に、クルーが実施する作業に関する訓練を行いました。

油井宇宙飛行士、ロシアでの訓練を開始

写真:GCTCでの訓練開始にあたり、ロシアの関係者を前に挨拶を述べる場に臨む油井宇宙飛行士

GCTCでの訓練開始にあたり、ロシアの関係者を前に挨拶を述べる場に臨む油井宇宙飛行士(出典:JAXA/GCTC)

国際宇宙ステーション(ISS)の第44次/第45次長期滞在クルーである油井宇宙飛行士は、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)で、ソユーズ宇宙船に関わる訓練を実施しました。

訓練では、ソユーズ宇宙船の様々な飛行場面での作業手順が記された飛行手順書や、ソユーズ宇宙船内の各機器の配置・名称・機能・操作方法などを確認しました。また、ソユーズ宇宙船全体のシステムや、ソユーズ宇宙船をコントロールする制御パネルの機能と操作方法についての講義を受けました。シミュレータを使用した訓練では、講義で学んだ内容を、実際に手を動かしながら確認しました。

今回の訓練は、油井宇宙飛行士にとって、GCTCで行う初めての訓練であり、第42次/第43次長期滞在のバックアップクルー(交代要員)の位置づけで実施したものです。今後も、バックアップクルーとして、そして自身の長期滞在に向けて、ロシアを訪れてソユーズ宇宙船やISSのロシアセグメントに関わる訓練を重ねます。

大西宇宙飛行士、ロシア語没入訓練を実施

大西宇宙飛行士は、2月初旬からロシアのモスクワに滞在し、およそ1月間半にわたる没入型のロシア語訓練を行いました。

この訓練は、将来の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在時に、ロシア人クルーと円滑にコミュニケーションが取れるよう、ロシア語を習熟するだけではなく、ロシア文化を深く知るために実施します。

大西宇宙飛行士は、ロシア語の集中的なトレーニングを受けながら、ロシア文化を目の当たりにする環境の中で生活を送り、ロシアの風習やロシア人の思考に触れ、そして、日本の文化との違いを知ることで、よりロシアに対する理解を深めました。

ISS長期滞在を終えた星出宇宙飛行士が初帰国

写真:記者会見を行う星出宇宙飛行士

記者会見を行う星出宇宙飛行士(出典:JAXA)

写真:2月21日に開催した報告会の様子

2月21日に開催した報告会の様子(出典:JAXA)

国際宇宙ステーション(ISS)の第32次/第33次長期滞在クルーとしての任務を終えて帰還した星出宇宙飛行士が、長期滞在後、初めて帰国しました。

帰国直後の2月13日、星出宇宙飛行士は、JAXA東京事務所で記者会見を行いました。星出宇宙飛行士は、集まった報道関係者らに長期滞在中の活動内容を紹介し、報道関係者からの質問に答えました。

その後は、全国各地をまわり、一般の方々を対象としたミッションの報告会を行いました。2月21日には、有楽町朝日ホール(東京都千代田区)にて、「星出彰彦宇宙飛行士国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッション報告会 ~宇宙の家「きぼう」で過ごした124日間~」をJAXA主催で開催しました。

また、星出宇宙飛行士は、ミッションに関わった運用管制官や訓練インストラクターなどに技術報告を行い、ミッションを振り返りました。

星出宇宙飛行士がISS長期滞在後初めて日本に帰国、記者会見を行う
「星出彰彦宇宙飛行士国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッション報告会 ~宇宙の家「きぼう」で過ごした124日間~」開催レポート

向井宇宙飛行士、Mission Xへ出演

写真:オランダとの中継イベントの様子

オランダとの中継イベントの様子(出典:JAXA)

2月8日、東京ウィメンズプラザ(東京都渋谷区)にて、「オランダ中継特別ミッション 向井飛行士と一緒に、世界と、宇宙とつながろう!」と題したMission Xのイベントを開催しました。

Mission Xは、健康社会の促進を目指して世界各国の宇宙局が取り組む、健康にかかわる食事と運動の啓発活動です。食事や運動習慣の大切さを学ぶために、宇宙飛行士の健康管理を題材として、8歳から12歳の児童を対象にした世界共通のプログラムが用意されています。

このイベントは、JAXAと同じくMission Xを実施しているオランダ宇宙局(NSO)の協力があって実現しました。今回のイベントの目玉であるオランダとの中継では、会場に集まった児童が、欧州宇宙機関(ESA)のアンドレ・カイパース宇宙飛行士や、オランダでMission Xの取り組みに参加する児童と交流を交わしました。オランダとの中継のほかに、向井宇宙飛行士によるトークショーと、宇宙飛行士の運動プログラムを体験するイベントを行いました。向井宇宙飛行士はトークショーで、宇宙に行ったときに人の身体に起こる変化などを、児童にわかり易く説明しました。

写真:児童からの質問に答える向井宇宙飛行士

児童からの質問に答える向井宇宙飛行士(出典:JAXA)

イベントの最後の質問コーナーでは、「地上と宇宙での星の見え方の違いは?」といった宇宙に関係する質問から、「苦手なことにどう取り組むか?」といった向井宇宙飛行士自身の物事の考え方に関する質問まで、さまざまな質問が寄せられました。


油井・大西・金井宇宙飛行士による活動報告「新米宇宙飛行士最前線!」

今月は、いよいよ星の街での訓練が開始されました。

この時を目標にロシア語、文化、歴史の勉強を重ねてきました。さて、その成果は?

語学に関しては、まだまだ不十分でした!ロシア語を学び始めた当初は、正直、取り組みへの真剣さが不十分だったと思います。真剣にロシア語を学び始めたのは、初めてロシアに渡った1年前からです。それでも、ほぼ毎日数時間ずつ勉強したこともあり、日常会話などに関しては、あまり苦労を感じることなく、過ごすことが出来ました。何より、ロシアを良く知った上で暮らしてみると、冬の寒さもあまり気にならず、とても快適に生活できました!

写真:ロシアの冬は、とても寒いです。でも、私はロシアの寒い冬が好きです。この寒さを経験してこそ、ロシアの文化や歴史が理解できる気がするのです。

ロシアの冬は、とても寒いです。でも、私はロシアの寒い冬が好きです。この寒さを経験してこそ、ロシアの文化や歴史が理解できる気がするのです。

当たり前の事ですが、ロシアに好意を持っている人を、ロシア人はとても大切にしてくれます。例えば、空港で英語で話しかけられた時に、英語でなくロシア語で答えると、ロシア人の表情がガラッと変わって、とても親切にしてくれます。これは日本でも同じで、英語しか話せないと思って英語で話しかけてみたら、日本語で答えてくれたら嬉しいですよね。それと同じなのだと思います。海外に行く時は、その国の言葉、文化、歴史を勉強するという礼儀作法を守っていれば、海外での生活が格段に快適になるというのが、今回の滞在で私が実感した成果の一つです。

一方で、ロシアに行って申し訳なく思うのは、ロシア人が日本人にとても好意を持って接してくれているのに、多くの日本人がそれを知らずにいるという事です。ロシアに関する良い情報は、なかなか日本国内に入っていかないようですね。何故でしょうか?最近この事実を知った時、私は非常に恥ずかしい気がしました。

日本に関する良い情報が、なかなか入っていかずに日本を嫌っている国があったとしたら、どう思いますか?その国の事を好きになれますか?ちょっと難しいですよね。

多くの日本人が、現在のロシアを知らない状況であるにも関わらず、多くのロシア人はとても日本人に友好的です。それらの好意を裏切る事がない様にするのが、礼儀じゃないかな?と思ってしまいました。私は、日本の方々には国際的にも礼儀正しい人であって欲しいのです。

話が逸れてしまいましたので、ソユーズ訓練の話に戻ります。

ロシアでのソユーズ訓練は、とても楽しいものでした!講義が一日8時間で、予習復習にほぼ同じだけの時間が必要でも、本当に楽しいのです。自分が楽しいと思って一生懸命勉強していると、教官や試験官達も、真剣に私をサポートしてくれます。私の講演で良く話をしているように、人間関係は、鏡と似ていて、自分が相手に好意を持って積極的な姿勢で接すれば、相手もそれに応えてくれる事が多いです。

さて、私は何故ソユーズの訓練を楽しむことが出来るのでしょうか?それは、私には夢があるからです。「将来、日本の有人宇宙船で宇宙に行く!」これが私の夢なのです。近い将来、日本が有人宇宙船の開発を行う事を決定した際には、その宇宙船の開発や試験に携わる人達が必要になります。私は、その開発に携わる為の能力を身につけたいと思っているので、勉強が楽しいのです。残念ながら、日本の有人宇宙開発を取り巻く環境は、厳しさを増しています。それでも、状況が好転した際に、日本国内に宇宙船の開発に必要な人材が不足しているという状況が発生しないようにするのが、私の役目だと思っています。日本のテストパイロットとして恥ずかしくない仕事が出来る様に今後も頑張って行きますので、応援をよろしくお願いします。

写真:ソユーズのシミュレータ訓練です。講義も楽しいですが、やはり何かを操作する方が楽しく感じるのは、元パイロットだからでしょうか?

ソユーズのシミュレータ訓練です。講義も楽しいですが、やはり何かを操作する方が楽しく感じるのは、元パイロットだからでしょうか?

※写真の出典はJAXA/GCTC


皆さん、ご無沙汰してます。年明けから大型の訓練が続いた関係で、先月のコラムをお休みさせて頂きました。1月に3週間、日本で「きぼう」と「こうのとり」の訓練があり、その後ヒューストンに1週間戻った後、ロシア・モスクワでの6週間に及ぶロシア語没入訓練を終え、再びヒューストンに帰ってきたところです。

今このコラムを書いているのが3月20日なので、年明けからほとんど家を空けていたことになります(汗)

というわけで、今月と来月はロシア語没入訓練について書きたいと思っています。多少の脱線も有りです。

この訓練は「没入」というだけあって、6週間ひたすらロシア語、ロシアの文化、ロシアに住む人たちについて勉強する訓練になります。

基本的な1日のスケジュールは、朝9時からお昼の1時まで4時間のマンツーマン授業、午後は週のうち3日はロシアの文化体験プログラム、それがない日は自習という感じです。

毎日沢山の宿題が出るので、家に帰っても夜遅くまで勉強という、受験生に戻ったかのような6週間でした。

人間の学習成長曲線というのは面白いもので、最初はすごい勢いで新しい知識を吸収していっても、次第にそのスピードが鈍化していくというのは、大概のケースに当てはまるのではないでしょうか。

今回の訓練もご他分に漏れず、最初の1週間は新しいロシア語の単語をどんどん覚えていくことが出来たのですが、日にちが経つにつれて、それはもう大変に苦しみました。

頭を少しでも傾けると耳から覚えた単語がこぼれていくような、もしくは新しい単語を覚えると、古い単語が一つ消えていくような・・・年のせいでしょうか。なんて言ったら油井さんに「そんなこと言ったら俺はどうなるんだ!」と怒られそうですが。

あたかも私たち人間の脳はハードディスクのように記憶容量が決まっていて、それが一杯になるとどんどん古い情報の上に上書きされていくような感覚に襲われました。

果たして本当に私たちの記憶容量には限りがあるのでしょうか?

いえいえ、決してそんなことはないと信じたいです。

地道な努力を続けていけば、例えそれが水たまりに1滴ずつ水滴を垂らしていくような作業だとしても、やがていつか池になり湖になり、大海になると信じて頑張ろう。

はい、早速話が脱線しました。

そんなこんなで徹底してロシア語を勉強する貴重な6週間となったのですが、それだけ集中して勉強していると、単語を覚える効率は落ちてきても、その中で何度も出てくる単語・表現というのが次第に見えてきます。そういう単語というのは、非常に使い勝手が良くて、重要な単語ばかりなので、後半はそういった単語を集中して覚えるように意識を変えたところ、また少し成長曲線に勢いが出てきたような感もありました。

どんな訓練にも言えることですが、自分なりに色々工夫をしてみるのは大事なことかも知れませんね。

6週間の間、3人の先生方が交替で教えてくださるのですが、どの先生も非常に熱心で、というかこちらが一生懸命勉強すればするほど、先生もどんどん熱心になっていくようでした。

ロシア語で教師という単語は учитель と書くのですが、この頭に一文字付け加えた мучитель という単語は、苦しめるもの・拷問する人という意味で、「учитель мучитель(教師というのは生徒を苦しめるもの)」というフレーズは、ロシアでよく言われるジョークだと先生が言っていました。何だか金八先生が黒板に書き出しそうなフレーズですね。

また話が脱線しました。

今月はモスクワという巨大都市について書こうと決めて、題名を「メトロポリス モスクワ」としたのですが、この調子ではいつまでたっても本題に入りそうにありません。書きたい話が沢山ありすぎて、このままではちょっとした短期集中連載になってしまいそうです。

私は司馬遼太郎さんの本を読むのが好きなのですが、司馬さんが作品の中でことあるごとに「余談ではあるが・・・」と本筋とは関係のない話を持ち出す気持ちがわかるような気がします。

先に「家に帰っても勉強」と書きました。勘のよい方はピンとこられたかもしれませんが、実はこの6週間の間、私はホテルではなく一般のロシア人家庭のお宅にお邪魔して、ホームステイをしてきました。ホームステイなんて高校1年生の時のカナダ以来です。

最初はとても不安でしたが、いざ行ってみるとホストファミリーの皆さんはとても親切で、快適な生活を送ることができました。そして何と言っても、ロシアの家庭料理がおいしい!全般的に日本人好みの味付けだと思います。

ホストファミリーはおじいさんとおばあさんも一緒に住んでいる家なのですが、中でもおばあさんがとても話し好きな方で、旧ソ連時代の話など色々と聞かせてくれました。

何より、ロシア人の生活を垣間見ることができたのがとても興味深かったです。今の国際宇宙ステーションでは、6人のクルーの半数にあたる3人がロシア人の宇宙飛行士なので、彼らの文化や生活習慣を理解するうえで、今回の経験が大きく役立ちそうです。

一例を挙げると、ヒューストンでロシア語を教わっている先生からも聞いていたのですが、ロシアでは昼食が一日の中で一番メインの食事になります。もちろん、仕事をしている人などはそういうわけにもいきませんし、昼食をとる時間帯が日本よりもずっと遅めだったりしますが。

例えば、午前中の授業を終えて午後3時くらいに帰宅すると、そこからボリュームたっぷりの食事が出てきて、夜は惣菜パンのような軽食しか出てきません。

日本の昼食と夕食の位置づけが入れ替わってるイメージです。

私の体内リズムは生まれてこのかた、完全に夕食メイン型に慣れてしまっているので、ロシア式だと夜中に勉強しているとお腹が空いて空いて・・・

仕方がないので、食事を夕方出してもらうように頼んだりしていました。

たかが食習慣、されど食習慣です。

異なる文化で育った人たちとの共同生活では、自分のスタンダードはあくまで自分にしか通用しないと認識しておく必要がありそうですね。相手には相手のスタンダードがあって、それはもしかすると自分のものとかけ離れている可能性があります。それはどちらが正しいというものではなく、双方が相手のスタンダードを尊重しあう必要があると思います。

写真:特別公開チラシ

チラシはこちら(PDF)

だいぶ長くなってしまったので、今月はこれくらいにしておきたいと思います。来月も引き続き、ロシア語没入訓練について書きますね。

最後にお知らせですが、きたる4月20日の筑波宇宙センターの特別公開に私も参加させていただくことになりました!多くの方々とお話できるのを楽しみにしています!


みなさま、こんにちは。米国ヒューストンでの宇宙飛行士修行は続いています。認定前の候補者訓練ほど毎日ぎっしりの授業・・・ということはなくなりましたが、語学の勉強をしたり、NBLという巨大プールで宇宙服を着て船外活動の訓練をしたり、毎週のようにT-38というジェット練習機に乗ったりという日々です。

米国で訓練を受けていて感じるのは、予算のかけ方の凄さです。語学に関しては、宇宙センター内に語学ラボを作って何人もの講師を常駐させる。巨大プールには実物大の宇宙ステーションの模型を沈めて、水中用に改造した実物宇宙服を着て訓練を行う。さらには軍隊で練習用に使われているジェット機を何機も運用して、宇宙飛行士の訓練をしています。

さて、前回のコラムでは、日本での訓練のことを報告しようとして脱線してしまいましたが、今回は、日本の訓練のことを書いてみたいと思います。

国際宇宙ステーション計画の一翼を担う責任として、日本も宇宙ステーションの訓練の一部(主に日本実験棟「きぼう」と補給宇宙船「こうのとり」について)を世界各国の宇宙飛行士に実施しなければならないということになっています。

NASAのようにたくさんの予算を使って、立派な施設やさまざまな機材を自由に使えるわけではありません。また、日本人宇宙飛行士を鍛えるだけで良いわけではなく、世界各国の宇宙飛行士を、風土も習慣も言語も特殊な日本に連れてきて訓練するのですから、なるべく訓練に集中してもらえるような環境作りにも、気を使わねばなりません。

わたし自身は、つくばに出向いて行って訓練を受ける側ですが、訓練を提供する側からしたら、いろいろな苦労や大変さ、あるいは工夫があるのではないかと思います。

訓練側の苦労や工夫を、宇宙飛行士の立場の自分がすべて知ることはできませんが、今回の訓練での印象的な体験を、一例として紹介させていただきます。

宇宙飛行士の訓練では、宇宙ステーションで使われているものとまったく同じ機械や装置を使って練習を行うことができれば、それに勝ることはありません。しかし、宇宙で実際に使われる装置や機械は、それ自体が特注品であったり、宇宙ステーションで使用するため、さまざまな安全審査基準をクリアしなければいけなかったりするため、訓練用にもう一台作ろうとすると、とても高価なものになってしまいます。

そこで日本の訓練で使用した究極のモックアップ(模型)がこちら(写真1)。なんとインストラクターお手製の、1/2紙モデルです!折り紙文化の日本っぽいと、ちょっと感銘を受けました。当然、模擬度においては、相当低いものですが、この装置の訓練は、写真内に写っている二つの灰色のボックスの交換というもの。三次元的な角度がついていて、単にまっすぐ挿入してもうまくいかないというのが、訓練のキモどころです。

写真1;白い紙で作られた装置の中に、わずかに見えている灰色のボックスが交換する部品です。装置の上にのっている新しいボックスと交換しないといけないのですが、微妙な角度がついていて、練習しないとうまく挿入することができません。

写真1;白い紙で作られた装置の中に、わずかに見えている灰色のボックスが交換する部品です。装置の上にのっている新しいボックスと交換しないといけないのですが、微妙な角度がついていて、練習しないとうまく挿入することができません。

NASAだったら、実物大のリアリティーのあるモックアップを作って訓練するのでしょうが、重い金属製のボックスを、微妙に角度をつけて挿入するのは重力環境では難しいですし、下手をしたらケガをしたり、せっかくのモックアップを壊してしまうこともあるかもしれません。

その点、紙製でしかもサイズが小さいこのモックアップなら、手軽に何度も角度を変えて練習できますし、ケガをしたり、物を壊す心配もありません。実物との違いについては、宇宙ステーションに打ち上げた実物の写真を見せてもらったり、筑波宇宙センターに大切に保管されている予備品を見学させてもらったりして、イメージを補いました。

もちろん、これはあくまで例であって、筑波宇宙センターにあるモックアップがすべて紙製、手作りの訓練機材というわけでは、もちろんありません。「きぼう」の精巧な実物大モックアップは、世界でも筑波宇宙センターにしかありませんし、「きぼう」に備え付けのロボットアームやエアロックなど、お金がかかっても模擬度の高い機材が訓練にためには最適であるというものに関しては、非常に精密なシュミレータを使った訓練を行っていますので、どうぞ心配しないでください。

しかし、この紙製のモックアップの一例は、アメリカと違って規模の小さい日本なりのうまい訓練のやり方を、よく表しているように思います。

言葉の違いも、日本にとっては不利な点です。

訓練で使われる言語は英語です(被訓練者が日本人だけなら日本語で実施することもありますが、そういった機会は稀です)。インストラクターとして認定を受けた先生方は、もちろん英語は堪能なのですが、そうはいっても母国語ではありませんので、微妙なニュアンスの違いや、単語の使い方に国ごとの差異があったりします。またロシアやヨーロッパの宇宙飛行士は英語を母国語としませんので、どうやったら訓練内容をきちんと理解してもらえるかということに関しては、わたしが想像する以上の難しさがあると思います。

筑波宇宙センターでの訓練では、言葉による説明だけではなく、写真やビデオを使って説明したり、(模擬度は低くても)手作りのモックアップを準備して実際に宇宙ステーションの中で作業をするイメージづけをしたり(写真2)、あるいはコンピュータのバーチャルリアリティを使ってあたかも「きぼう」や「こうのとり」の内部にいるかのような映像を使ったりと、言葉のハンディを、“より直感的に理解しやすい資料の提示”という方法で、逆に日本だけの強みとしてしまっているのにも感心してしまいます。

写真2;「こうのとり」内部に非常用の消火器を設置するためのスペースを模擬しています。取り出すときに引っかかりやすく、消火器を少し斜めにして出し入れする必要があるのですが、英語で事細かに説明するより、実際と同じサイズのもので体験してみれば一瞬で納得できます。

写真2;「こうのとり」内部に非常用の消火器を設置するためのスペースを模擬しています。取り出すときに引っかかりやすく、消火器を少し斜めにして出し入れする必要があるのですが、英語で事細かに説明するより、実際と同じサイズのもので体験してみれば一瞬で納得できます。

余談になりますが、訓練で用いられるビデオ教材は、宇宙ステーションに実際の作業をする際の参考資料として使用されることがあります。日本が準備するビデオ資料の質の高さは、ミッション参加中のクルーから非常に高い評価を受けています。これもまた、日本ならではの強みの一つとして、国際ステーション計画参画の各国の中でも、独自性を放っています。

ところで、訓練を受けて何かを学ぶというのは、何も宇宙飛行士に限ったものだけではありません。医者の免許をとっても、先輩についてさまざまな手術のやり方を学ばないと一人前の外科医にはなりません。JAXAに入社したエンジニアも、先輩に手取り足取り仕事のやり方を教えてもらいながら、少しずつ実際のプロジェクトで活躍できる専門知識や技術を学びます。

自動車教習所で自動車の免許をとるために勉強するのもそうですし、学校で勉強をするのだって、“教わる”・“学ぶ”という点では同じことでしょう。

“学ぶ側”の立場は誰でもすぐに理解できるでしょうが、“教える側”の苦労やノウハウというのは、少し注目されにくいところがあるかもしれません。

国際宇宙ステーションに宇宙飛行士が滞在するようになって10年以上が経過し、人間が宇宙に生活するということは、今では当たり前のこととなりました。しかし、水も空気もない宇宙空間での人間の活動というのは、昔と変わらず、常に危険との隣り合わせの世界であることに変わりはありません。

一つのミスが、ミッションの失敗や、ときには人命や宇宙船を大きな危機にさらす可能性につながりますから、訓練内容をいかに正確に理解させ、知識や技術を習得させるかというのは非常に大きな命題です。

その中で培われた“教える”ノウハウというは、何も宇宙開発の分野でなく、他の分野にも応用のきく、一つのスピンオフ(技術の他分野への転用)であると考えます。

どうやったら短期間に労力を少なく技術を習得できるのか、学んだ技術をうまく活用できるのか、実際の場でミスをしないようにするか・・・などなど。「ちょっとしたコツ」と言ってしまえば取るに足らないものに思えてしまうかもしれませんが、たとえば医療の世界で、あるいは技術開発の現場で、はたまた学校教育の現場や、ビジネスの世界で、いかようにも応用のきく、とても有用なテクニックがあるように思われます。

こういった目に見えない情報や知識は、何も教育や訓練に関するものだけではないはずです。他の分野での知見やノウハウを宇宙の分野に生かし、宇宙業界の経験や知識を他の業界に活用してもらう。そういう交流の場が今後どんどん広がっていけば良いと思います。また、そうなるようにわれわれが頑張っていかないといけません。

日本での「きぼう」の訓練を体験すると、そういった小さなひとつひとつの工夫こそが、世界をリードする日本の独自性につながってくるのだと、しみじみと感じさせられます。

※写真の出典はJAXA


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しばらく間が空いてしまいましたが、今月は、宇宙飛行士を支える現場の声をお届けする「今月の人(ひと)言」を掲載します。今回ご紹介するのは、以前にもこのコーナーに登場した若松武史主査の一言です。

写真:若松武史主査

油井、大西、金井宇宙飛行士の選抜試験と基礎訓練のサポートを担当しました若松と申します。

「新米宇宙飛行士最前線!」をご覧いただくと、3人の活動に加えてそれぞれの“人となり”や“思い”を感じていただけるかと思うのですが、みなさんにさらに親しんでいただくという意味で、ここで敢えて3人の関係性をご紹介させていただくと「宇宙3兄弟」という言葉が当てはまるかなと思います。訓練や日常生活などいろいろな場面で兄弟のように協力して乗り越えているといった点もそうなのですが、“しっかり者の長男”、“そつなくこなす二男”、“物怖じしない三男”といったように、差し詰め典型的な男子3兄弟といった感じなのです(二男と三男の例えがイマイチなのでちょっと本人たちから怒られちゃいそうですが(笑))。

ただ、3人に共通して言えることは、“努力の人”だということ。傍から見ていると、どんな訓練や試練でもこなしていく3人を見て、「やっぱりもともと能力が高い人たちだから、流石だな」と思うこともしばしばありましたが、車の中でもロシア語のテープを流して聞いたり、試験前には休日でも勉強したり、新しい訓練の前には先輩宇宙飛行士たちから話を聞いたりと、その陰には努力があったんだなと改めて考えさせられました。あるお笑い芸人さんが「ずっと恵まれてみえる人はみな必ず努力していることだ。例外なくね。」とおっしゃったという話を先日インターネットで拝見しましたが、本当にそのとおりなのかもしれません。

3人が宇宙飛行士に認定された後、私は宇宙飛行士の部署を離れ、別の事業所で業務を行っているのですが、その後も「油井さんがさらに痩せてまた逞しくなってた」とか、「大西さんと一緒にロシア出張に行ったら、レストランでの注文やスーパーでの買い物をロシア語で難なくこなしてた」とか、「金井さんがシンポジウムで先輩飛行士に交じって堂々と発言してた」といったような噂を聞くにつけ、目標に向かってさらに着実に前進しているんだなと感じています。

2015年には油井さんがISSに長期滞在することが発表され、私自身も3人がISSで活躍する日が待ち遠しいですが、「新米宇宙飛行士最前線!」の読者のみなさまにも、ぜひ今後とも見守っていただければと思います。


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