このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。

<免責事項> リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
最新情報については、https://humans-in-space.jaxa.jp/ のページをご覧ください。

サイトマップ

宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センタートップページ
  • Menu01
  • Menu02
  • Menu03
  • Menu04
  • Menu05
  • Menu06
  • Menu07

JAXA宇宙飛行士活動レポート

JAXA宇宙飛行士活動レポート 2013年1月

最終更新日:2013年2月26日

JAXA宇宙飛行士の2013年1月の活動状況についてご紹介します。

野口宇宙飛行士、航空機操縦訓練を実施


写真:飛行前点検を行う野口宇宙飛行士

飛行前点検を行う野口宇宙飛行士(出典:JAXA)

野口宇宙飛行士は、1月15日から18日にかけて、神戸空港にて、本田航空株式会社が所有するホーカー・ビーチクラフト式 G58型(Baron)の飛行機を利用した航空機操縦訓練を行いました。

この訓練は、航空機を操縦しながら交信・判断などを行い、心理的圧力がかかる状況の中で、宇宙飛行士に求められる資質のひとつであるマルチタスク能力の維持・向上を図るためのものです。これまでは、NASAでの訓練において、T-38ジェット練習機を使用した同様の訓練が行われてきましたが、今年度から国内を拠点にした訓練も開始されました。

飛行前には、その準備として、フライトシミュレータを使用した操縦方法の習熟訓練を行ったほか、気象・運航に関する講義を受けました。また、機体の飛行前点検手順についても確認し、訓練に使用する飛行機の機体を自ら点検した上で飛行訓練を実施しました。

1月16日には、大西宇宙飛行士が神戸空港を訪れ、訓練の模様を視察しました。



航空機操縦訓練は、複雑な飛行機を操縦しながら地上の管制官と色々なやり取りをするため、宇宙飛行士の基礎的な資質を養う上で非常に有効な訓練です。

ヒューストンにいたときにも、同じ形の飛行機を訓練で使用していたことがあるので、機体そのものとは相性が良かったです。

今回の訓練で操縦した機体は、当時使用していた機体と比べると、コクピット周りのデザインが最新式になっていました。

スペースシャトルが退役し、次世代の宇宙船の開発が進められている有人宇宙開発と同様に、次世代の飛行機への切り替わりのようなものを感じました。

訓練を通して、宇宙飛行士としての技量を維持すると同時に、日本独自の宇宙船開発に向けて、こういった飛行機の技術の移り変わりについても参考にしていきたいと思います。

大西宇宙飛行士と金井宇宙飛行士が「きぼう」日本実験棟訓練を実施


写真:「きぼう」船内実験室のモックアップ内で訓練を受ける大西宇宙飛行士

「きぼう」船内実験室のモックアップ内で訓練を受ける大西宇宙飛行士(出典:JAXA)

大西宇宙飛行士と金井宇宙飛行士は、一時帰国し、筑波宇宙センターにて、「きぼう」日本実験棟に関わる訓練を実施しました。大西宇宙飛行士は、1月10日から訓練を開始し、1月17日からは金井宇宙飛行士も合流して、ふたりは1月24日まで訓練を行いました。

「きぼう」は複数のシステムから構成されており、その中には、「きぼう」のシステム全体および実験装置の状態を監視・制御する監視制御システム、「きぼう」の各機器に電力を分配する電力システム、データや音声・映像の伝送を担う通信制御システム、「きぼう」の機器を一定範囲の温度に保つ熱制御システム、船内の温度・湿度の管理や空気循環などの役割を持つ環境制御システム、実験に必要なガスを供給する実験支援システムなどが含まれます。

大西宇宙飛行士は、これらのシステムの運用方法を講義やモックアップ(実物大の訓練施設)を使用した訓練を通して習熟しました。この他にも、モックアップを使用したエアロックの操作訓練や、火災・減圧・空気汚染などの緊急事態およびシステムの異常を感知する警告・警報機能を、ラップトップ上で操作する方法についても確認しました。

金井宇宙飛行士と合流後は、「きぼう」のシステムについて更に一歩踏み込んだ専門知識を得るための訓練にふたりで臨み、各システムの訓練に加えて、定期的にメンテナンスが必要な機器の交換・修理方法などを確認しました。また、異常が発生した際に、「きぼう」の運用に大きな影響を与えかねない監視制御システムや電力システムに関して、異常が発生した場合のシステムの挙動を正確に把握し、かつ影響評価を行い、必要な対処の意志決定ができるレベルまで知識を高めるために、異常事態を想定した訓練に取り組みました。

ふたりは、「きぼう」の訓練の他に、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を補給する宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の概要やシステム、「こうのとり」に関連してクルーが軌道上で実施する作業などについても訓練を通して学びました。

また、「きぼう」の運用管制室で実際にISSとの交信を担当するJ-COMコンソールの業務を見学したり、「こうのとり」の運用管制チームがNASAと共同で実施したシミュレーションの見学をするなど、運用チームの現場の雰囲気を体験する機会にも恵まれました。

油井宇宙飛行士、ISS長期滞在に向けた訓練を実施


写真:ISSのモックアップ(実物大の訓練施設)内で、工具を使用してパネルを外す油井宇宙飛行士

ISSのモックアップ(実物大の訓練施設)内で、工具を使用してパネルを外す油井宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)

油井宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)の第44次/第45次長期滞在に向けた訓練を、2012年12月からNASAジョンソン宇宙センター(JSC)で開始しています。

1月は、ISSで活動する上で一般的に必要となる知識を得るための訓練を中心に行い、ISSにおける物品の在庫管理・保管に関する概念や、全ての物品の所在を管理する在庫管理システム(Inventory Management System: IMS)の使い方、ISSのシステム機器や実験装置が収められているラックの設置方法、モジュール間のハッチの開閉方法、機器のメンテナンスに備えてISSに多数搭載されている工具の使い方などについて確認しました。

加えて、米国が実施する船外活動の出入り口となる「クエスト」(エアロック)の機能を有した地上設備であるSSATA(Space Station Airlock Test Article)と呼ばれる真空チャンバを利用して、船外活動を担当するクルーの準備作業を支援する手順を確認しました。また、ISS船内でアンモニア漏れによる空気汚染が発生した際に装着するマスクのフィットチェックなども行いました。

1月下旬には、2月から始まるロシアでの訓練に備えて、ソユーズ宇宙船の概要や飛行時に参照する手順書の読み方などについて確認しました。

大西宇宙飛行士、母校の小学校を訪問


写真:講演を行う大西宇宙飛行士

講演を行う大西宇宙飛行士(出典:JAXA)

1月25日、大西宇宙飛行士は、自身が卒業した東京都の目黒区立宮前小学校を訪れて、在学する児童を前に、宇宙開発に関する講演を行いました。

講演では、宇宙開発の歴史や、国際宇宙ステーション(ISS)、「きぼう」日本実験棟、宇宙での生活、地上での訓練などの話に加えて、地球と月・太陽の距離やそれぞれの惑星の大きさなどについても紹介しました。講演の最後には、夢の実現に向けたアドバイスとして、児童にメッセージを送りました。


油井・大西・金井宇宙飛行士による活動報告「新米宇宙飛行士最前線!」


1月は様々な訓練が行われました。実は、私の誕生月が1月であることも、その要因の一つです。飛行士は誕生月に身体検査やフライトの技量チェックなど、年に一回の行事が沢山あります。(実は、試験や検査が多く、あまり楽しい月ではありません(笑))

その中で今回紹介するのは、緊急手順のシミュレーター訓練です。私達の飛行訓練を行うT-38には、チェックリストと呼ばれる手順書があり、その手順に従いながら飛行しています。そして、航空機に何らかの異常が発生した場合にも、その手順書に従って対処します。今回実施したのは、シミュレーターと呼ばれる、飛行を模擬する装置を使用して、様々な不具合を発生させ、緊急事態への対処を身につける訓練です。実はこの訓練は通常の飛行訓練より遥かに大変な訓練なのです!確かにコンピュータを使用した模擬飛行ですから、万が一墜落しても命の危険はありません。でも、飛行中に起こりうる最悪の状況が次から次へと起こる上、その対処を教官がモニターしており、自分の判断・操作が評価されるので結構な緊張感なのです!特に私は、以前テストパイロットでしたから、上手く出来て当然と見られますし、何かおかしな失敗をすると、日本人パイロット・宇宙飛行士全体の評判に響きかねません。(大袈裟な!と思われるかもしれませんが、真剣です。NASAの方々は、私の事を日本のパイロット出身者として見てくれています。多くの場合、初めて会う方は私の経歴を事前に読んでいて「あなたが、航空自衛隊で戦闘機のテストパイロットをしていた人ですね。」と言ったところから会話が始まるのです。)

写真:私が、大人になるまで知らなかった事…それは、国旗に対する礼儀作法です!これを知らずに海外にいくと、自分が恥をかくだけでなく、日本人の品位を疑われます!海外に行くお子さんがいたら、しっかり教育してあげましょう。他国の国旗を自国の国旗と同様に敬う。そんなところが、相互理解につながります。

こちらが操縦席です。「ゲームみたいで楽しそう!」と思われるかもしれませんね。自由に飛行するだけなら楽しいのですが、通常手順、管制官との交信などもしっかりと実施しながら、さらに緊急事態に対処するので、非常に忙しく大変なのです。

写真:私が、大人になるまで知らなかった事…それは、国旗に対する礼儀作法です!これを知らずに海外にいくと、自分が恥をかくだけでなく、日本人の品位を疑われます!海外に行くお子さんがいたら、しっかり教育してあげましょう。他国の国旗を自国の国旗と同様に敬う。そんなところが、相互理解につながります。

こちらが教官席です。ここから、天候を変化させたり、様々な緊急事態を発生させたりします。パイロットの動きや操作も全てモニター出来るようになっています。教官は、地上の航空管制官役も実施します。

この様な飛行訓練が、なぜ宇宙飛行士の訓練で重視されているかというと、宇宙での仕事の進め方、緊急事態への対処の方法が非常に似ている為です。宇宙で飛行士が実施する仕事も、手順書があってその手順書どおりに仕事を進めます。仕事を進める上で、クルーや地上の管制官たちと調整をしながら仕事を進めるのも一緒、更に緊急事態の際に、早く正確に対処しなければ自分や仲間の命に関わるというところも同様です。

でも、よく考えてみると、実は、チェックリストを用いた仕事のやり方や緊急事態への対処は、皆さんの日々の生活や仕事でも色々と応用できることなのです。例えば、買い物に行く際に、お店に行く順番や買うものをリストアップしておけば、効率よく買い物が出来て、買い忘れも発生しません。でも、普段の生活ではそこまで準備する方は正直少ないのかもしれないですし、絶対的に必要ではないと思います。なぜなら、買い物は買う順番を間違えたところで、大きな問題はありませんし、買い忘れがあっても、もう一度買い物に行けば良いだけです。この様なリストが重要になるのは、失敗が許されない重要なイベントや緊急事態への対処の場合です。航空機や宇宙での飛行は、スイッチを入れる順番やタイミングを間違えただけで、機材が故障したり、生命に危険が及ぶ事もありますから、手順書どおりに作業を進めることが非常に重要なのです。(物を買ってきて、説明書を読まずに先ず使ってみる様ではダメですよ(笑)。)

今回私が皆さんにお勧めするのは、緊急事態への対処を事前に準備をしておく事です。緊急事態は、その言葉の表すとおり、速やかに対処する事が求められます。しかしながら、適切に対処しようとしても、その判断に使用できる時間は非常に限られています。ですから、時間がある時に、起こりそうな緊急事態をしっかりとイメージし、その時の対処法をあらかじめ決めておく事が非常に大切なのです。例えば、交通事故にあってしまった時の対処なども、しっかりと手順を作って、それを車の中やお財布の中などに入れておけば、万が一事故を起こしてしまって、気が動転していても、早く正確に抜けなく対処できます。更に言うと、定期的に交通事故にあった場合を頭の中でイメージして、シミュレーションを行っておけば更に効果的です。私の例でいうと、私は約2年半後にISSでのミッションが計画されており、ISS滞在時には、家を6ヶ月間不在にします。その間に私の身に何かあった場合、家族に何かあった場合など色々な対処を考え始めています。そうしないと、多くの方に迷惑がかかったり、私のミッションに影響が出たりしてしまうのです。宇宙飛行士は人生の目標としてやりがいのある職業で、他の方々に夢を与えられる素晴らしい職業ではありますが、実際にやっていることは、かなり現実的な対応が多く、自分の死を含め、直視するのが不快な現実を見つめ、対応を準備するのが仕事です。

皆さんも、交通事故や自分の死などは、はっきり言ってあまり考えたくない事態とは思いますが、そのような事態こそ事前に想定しておくことが重要なのです。

話は、緊急事態のシミュレーター訓練に戻ります。

今回、私は実際のフライトとは異なり、前席(通常は機長が乗る席)で訓練を行いました。次々と発生する緊急事態に対処しながら、無事に航空機を着陸させ、滑走路上で停止させた時は、本当にホッとしました。この訓練により、私がT-38で飛行訓練を行う上での危険が更に軽減されました!「実際に起こって欲しくないことに対する準備をする」という努力をする事で、自分達の安全を獲得するのです!皆さんの場合も、「身の回りに潜む危険を見つけ出し、それに備えておく」という事は、非常に重要な事だと思います。以前にもツイッターで書きましたが、根拠なく「自分は安全だ」と考えている状態が実は一番危険で、それによって自分だけでなく、他の多くの人達を危険にさらす可能性のあることを自覚しましょう。そして、もし身近に潜む新たな危険を発見した時は、多くの人にその危険を知らせて、皆で事前に対応を考えておきましょう。人生は一度しかありません。命の危険を感じた時に、その状況を想定していなかった!となると、生き残る可能性は激減し、後悔する事になります。

今回は、少し怖い話題になってしまいましたね。でも、私の場合は、自分の死を考える所から、自分の人生の意味や生き方を見つめてきました。正直、私は自分に残された時間が有限で、本当に良かったと思っています。自分に永遠の時間があったら、正直ここまで頑張る気にはなれないですし、私達の子孫のために仕事をするという視点も生まれませんでしたから…

※写真の出典はJAXA/NASA





みなさま、こんにちは。大雪が降ったり、インフルエンザが流行っていたりしていますが、いかがお過ごしでしょうか?

1月は、大西宇宙飛行士と一緒に、筑波宇宙センターで日本実験棟「きぼう」の運用訓練を受けるために、2週間ほど日本に戻ったのですが、あまりに寒くてびっくりしました。いつも生活しているヒューストンでも時々寒い日はあるのですが、そうは言ってもメキシコ湾に面した温暖な地域です。2009年からこちらで生活を送るようになり、体の感覚もすっかりヒューストン仕様になってしまったようです。

さて、わたしの「きぼう」訓練も、昨年夏に続いて2回目となります。前回は、“ユーザー”資格と、その先の“オペレーター”資格を取得しましたが、今回はさらにその上の“スペシャリスト”資格を得るのが目的です。

以前のスペースシャトルの時代には、宇宙飛行士は、船長/パイロット/ミッションスペシャリスト/ペイロードスペシャリストという職種に区分されていました。船長やパイロットはスペースシャトルの操縦や安全な運航を担当し、ミッションスペシャリストはロボットアームの操作や船外活動などミッションを実施する専門家、ペイロードスペシャリストは宇宙での科学実験を行う担当とされていました。

一方、宇宙ステーションの時代になると、全クルーの安全をあずかりチームを指揮する船長を除くと、それ以外の宇宙飛行士は、全員“フライトエンジニア”と呼ばれています。宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士は、全員がロボットアームを操作したり、宇宙服を着て宇宙空間に出て作業をする技能を持っていますし、ステーションで行われているさまざまな宇宙実験についての勉強も重ね、地上にいる主任研究者の先生方と交信しながら科学実験も行います。

こうやって書くと、今の時代の宇宙飛行士は、シャトル時代のミッションスペシャリストとペイロードスペシャリストの両方の技能を兼ね備えたスーパー宇宙飛行士のように思えてしまいますね。でも、一人の宇宙飛行士が、複雑な宇宙ステーションのシステムをすべて理解し、かつすべての科学実験に関しても勉強するというのでは、どんなに訓練時間があっても足りませんので、チームメンバーの中で専門分野を決めて役割を割り振っています。

A飛行士は、環境制御システムと電力供給システムの専門家、B飛行士は、熱排気システムと通信システム、制御コンピュータシステムの担当。C飛行士には、日本実験棟とヨーロッパ実験棟を任せる。自分たちの長期滞在期間中に予定される実験も各人で分担し、この実験はA飛行士、あの実験はB飛行士とC飛行士の二人で実施・・・などと計画に従って訓練・準備を行い、実際の宇宙飛行に臨みます。1人だけではミッションをこなすことができず、常にチームとして活動しなくてはいけないのも、このようにチームメンバーの一人ひとりが、それぞれ別々に専門をもって責任を分担しているのが理由です。

実は、わたしが資格を取得した“ユーザー”、“オペレーター”、“スペシャリスト”という分類は、まさにこの宇宙ステーション時代の宇宙飛行士の専門性を定義するものなのです。

たとえば、宇宙ステーションのロシアが提供する区画は、「ロシア・セグメント」と言いますが、わたしが昨年ロシアで訓練を受けて取得したのは“ユーザー”資格。ロシア・セグメントに立ち入って生活することは可能ですが、内部に設置されている様々な機器を操作することはできません。

一方、米国ヒューストンで2年間の宇宙飛行士基礎訓練を経て、アメリカが提供する区画「USセグメント」では“オペレーター”の資格が認められています。このため、「USセグメント」に設置されている様々な機器(環境制御システム、熱排気システム、姿勢制御システム、あるいはステーションをコントロールするコンピュータシステムなどと、いくつかのシステムに分類されます)を、“故障や異常がない定常状態において”操作を行う知識と技能があります。

実際に長期滞在ミッションを行うに際しては、これだけでは不十分で、万一機器の故障があった場合には、それを修正したり修理したりする技能がさらに必要になってきます。このための訓練を積んでいるのが“スペシャリスト”です。

繰り返しになってしまいますが、たった一人の宇宙飛行士が、宇宙ステーションすべてのシステムに精通するのは大変な時間がかかりますので、スペシャリストの訓練は、一緒にミッションを行うチームメンバー内で分担をして、システムごとに各人が専門分野を決めて担当するのです。

昨年、長期滞在ミッションが決定した油井宇宙飛行士も、候補者訓練を経て「USセグメント」に関しては、全システムについて“オペレーター”水準の技術と知識を習得していますが、これに加えていくつかのシステムの“スペシャリスト”レベルの専門訓練を受講しなくてはいけません。

ミッションが決定して、実際の宇宙飛行まで2年半の訓練期間があります。ずいぶん悠長だなぁと感じる方も多いのではないでしょうか?でも、自分が担当を任されたシステムの専門家としての知識や技能を身につけ、さらに自分のミッション中に計画されている科学実験についての勉強を重ね、宇宙ステーションへの行き帰りに利用するロシアのソユーズ宇宙船の操縦法を学び・・・と万全の準備を整えるために、ミッションの決まった宇宙飛行士は分刻みのスケジュールで訓練や勉強に追われる毎日を送っているのです。

さて、日本人宇宙飛行士として、絶対にはずせない専門分野があります。すなわち「日本実験棟きぼうのスペシャリスト」です。日本人宇宙飛行士が宇宙ステーションに滞在していないときは、アメリカやヨーロッパ、カナダの宇宙飛行士が「きぼう・スペシャリスト」として仕事をしてくれますが、日本人宇宙飛行士は、同じ“スペシャリスト”資格者といっても、さらに詳しい知識がなくてはいけません。いわば、「きぼう・スーパー・スペシャリスト」です。

“スペシャリスト”は、自分の担当分野で不具合や故障があった場合に、船長に対してミッション全体に与える影響を説明したり、船長に代わって地上の管制センターとやりとりをする可能性もあります。日本実験棟きぼうは、船外曝露部や独自のロボットアーム、エアロックを備えており、宇宙ステーションの中でも一番複雑なシステムなのですが、それゆえに、「きぼう」のことを、しっかり理解している日本人クルーが宇宙ステーションに滞在しているというのがとても大切なことになるのです。

さて、ここでようやく冒頭の「日本に訓練に行ってきました!」というところにつながるのですが、宇宙飛行士の職種分類を説明しているうちに、今月もまた、与えられた紙面をオーバーしてしまいました。

以前の記事にも書かせていただきましたが、筑波宇宙センターにいる凄腕の訓練担当インストラクターは、いつもニコニコ優しいのですが、やらせるところはやらせる、締めるところは締めるという感じで、新人の自分たちは頭が上がりません。

ヒューストンで一緒に仕事をしているアメリカ人ベテラン飛行士に「今度、日本に訓練に行くんです」と話したら、「自分がミッションに行ったときにすごいお世話になったから、よろしく言っておいて」と何人もの人にも言われたので、訓練教官というのは、ベテラン飛行士にとっても頭の上がらない存在なのかもしれません。

宇宙開発に限ったことではありませんが、予算の緊縮により、訓練を提供する現場でも、さまざまな難しいものがあるようです。しかし、それを補って余りある、日本の訓練担当インストラクターの創意と工夫、熱意と努力の一端をご紹介できればと思っているのですが、それは次の機会ということとさせてください。

次回の予告・・・ではありませんが、訓練中の一コマを紹介します。ベテランインストラクターの叶さんと天内さん。手作り(!)の模型を使って、手順を説明してくれているところです。

インストラクターの天内さん

インストラクターの天内さん

インストラクターの叶さん

インストラクターの叶さん

※写真の出典はJAXA



≫「新米宇宙飛行士最前線!」のバックナンバーはこちら


≫JAXA宇宙飛行士活動レポートの一覧へ戻る

 
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency SNS運用方針 | サイトポリシー・利用規約