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ISS搭乗宇宙飛行士候補者の基礎訓練


基礎訓練の分野
基礎訓練は、大別して以下の4つの分野で構成されます。

  1. 宇宙飛行士として必要な工学や宇宙機の概要等に関する知識(イントロダクション)
  2. 軌道上で実施する種々の宇宙実験に必要なサイエンス関連の知識
  3. 軌道上で実際に操作を行うISS/きぼうのシステムの概要
  4. 宇宙飛行士に必要なスキル(一般サバイバル技術、飛行機操縦、スキューバ、語学、体力等)の維持向上を目的とした基礎能力訓練

1.~3.は講義を中心とし、一部に実習が含まれます。4.の基礎能力訓練は実習・実技訓練が中心です。JAXAの基礎訓練では、宇宙飛行士候補者は約230科目もの訓練を受け、総基礎訓練時間は約1,600時間にもなります。

基礎訓練実施フロー例

 以下に、分野毎の概要を紹介します。

(1) イントロダクション・基礎工学・宇宙機概要

日本人宇宙飛行士として必要となる一般的な知識を習得することが目的です。今後の宇宙機システムの訓練や実際の運用を行う上で必要となる基礎的な工学に関する講義、スペースシャトルやソユーズ、H-IIロケットといった宇宙機に関する概要等が含まれます。講師は、主にJAXAの職員(日本人宇宙飛行士を含む)ですが、大学・研究機関等の教職員に実施してもらう講義もあります。
また、ソユーズ等のロシアの宇宙機に関する訓練は、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)で実施します。この計画に反映するため、1998年夏に野口宇宙飛行士がGCTCでロシア宇宙飛行士訓練の体験調査を行いました。
GCTCのソユーズシミュレータで訓練を受ける野口宇宙飛行士
(2) サイエンス

ISSで宇宙飛行士が行う宇宙実験や観測、あるいはそのための訓練に備え、生命科学、微小重力科学、地球観測、宇宙科学の各分野の概論を習得します。また、講義だけでなく、実験実習や観測実習も行います。講師は、JAXA内部の各研究センターや大学・研究機関の教職員です。


(3) ISS/「きぼう」のシステム

軌道上で操作するISSのシステムや運用の概要について習得します。ISSについては、アドバンスト訓練、インクリメント固有訓練といった基礎訓練以降の訓練フェーズにおいて、訓練用設備を用いた本格的なシステム運用訓練や実際の軌道上での操作・実験等に即した訓練を行うことになります。また、日本が提供する「きぼう」日本実験棟に関しては、極力深いレベルまで習熟することを目指しています。


(4) 基礎能力訓練

無重量環境試験設備(WETS)における無重量シミュレーション試験の様子
宇宙飛行士として必要となる上記以外の技能の維持向上のため訓練です。内容は実に様々で、まず、訓練期間中継続してISSでの公用語である英語と、ロシアでの訓練に備えてロシア語の訓練を行います。これらの語学訓練は全基礎訓練時間の4分の1(全体で約400時間)にも及びます。
また、宇宙飛行士は健康状態を維持することが重要なので、自分自身の健康管理や救急法について学び、週3回定期的に体力トレーニングを行います。
さらに、クルー・リソース・マネージメントという、航空機のパイロット等が実施しているコックピットでの状況判断・問題解決・意思決定に関する訓練、軌道上での映像撮影に備えるための写真技術訓練、メディア対応訓練、英語による無線でのコミュニケーション、計器操作・飛行感覚を養うための飛行機操縦訓練も行います。
宇宙飛行士ならではの特殊な訓練としては、宇宙からの緊急帰還の際の万一の場合に備え、未開地やへき地、洋上で生存するためのサバイバル訓練、船外活動(EVA)のための基本的な動作を水中での宇宙服を着用した無重量模擬環境下で習熟するEVA訓練、宇宙飛行士が遭遇する可能性のある低圧・減圧環境を体験するための低圧環境適応訓練等があります。


宇宙飛行士とともに学ぶ有人宇宙開発の基礎技術

こうした宇宙飛行士の訓練は、有人宇宙開発に必要な技術の中でも最もユニークな分野のひとつと言え、JAXAで今回初めて本格的な基礎訓練を実施することは日本における有人宇宙開発を推進する上で非常に意義があるものです。また、日本の宇宙飛行士を日本の中で養成することは、訓練技術の蓄積を図ると同時に、宇宙飛行士候補者と一緒に訓練を行っていくという意味で、宇宙飛行士がより身近な存在になっていくものと思われます。
しかしながら、日本では訓練の対象者がNASAなどと比較して少ないため、宇宙飛行士同士で切磋琢磨する機会や、多方面の知識や見識に触れる機会が少なくなってしまいます。そのため、できる限りNASA(ヒューストン)で訓練中の先輩日本人宇宙飛行士はもちろん、他国の宇宙飛行士と交流できる機会を設けています。
このように、基礎訓練は訓練を実施する側にとっても非常に有意義な経験の蓄積になります。

分 類項   目時間
イントロダクションオリエンテーション37
訓練計画概要5
宇宙活動の現状と枠組6
世界の宇宙開発7
日本の宇宙開発3
施設ツアー105
基礎工学航空宇宙工学概論10
電気・電子工学概論18
計算機概論17
宇宙機システム・運用概要スペースシャトル概要10
ロシア宇宙機概要39
アリアン概要1
H-II概要3
ISS/きぼうのシステムISS運用9
ISSシステム73
きぼうのシステム・運用訓練92
サイエンス宇宙科学研究12
ライフサイエンス71
微小重力科学39
地球観測・宇宙観測40
基礎能力訓練一般サバイバル技術訓練40
水泳技術5
SCUBA68
心理支援プログラム31
健康管理24
体力訓練104
無重量体感訓練(ジェット機による弾道飛行:パラボリックフライト)8
低圧環境適応訓練27
WETS-EVA訓練(水中での宇宙服着用船外活動訓練)39
飛行機操縦訓練240
写真技術24
英語200
ロシア語200
日本語メディア対応訓練17
英語メディア対応訓練8


最終更新日:1999年 5月 7日

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